最高出力500bhpを発揮! 最強・最速のアストンマーティン ヴィラージュ 6.3とは?

アストンマーティン ヴィラージュ 6.3、デビューから30周年。グループC由来のエンジンを搭載したスーパークーペを紐解く

デビュー30周年を迎えた、アストンマーティン ヴィラージュ 6.3の走行シーン
デビュー30周年を迎えた、アストンマーティン ヴィラージュ 6.3の走行シーン。
アストンマーティンのヘリテージ部門、アストンマーティン・ワークス(Aston Martin Works)は、「ヴィラージュ 6.3/ヴィラージュ ヴォランテ 6.3」の劇的なデビューから30年を迎えたことを記念し、美しくレストアされたヴィラージュ 6.3を公開した。

Aston Martin Virage 6.3

現在のアストンマーティン・ワークスが換装を担当

デビュー30周年を迎えた、アストンマーティン ヴィラージュ 6.3のエクステリア。
かつての本拠地ニューポートパグネルでヒストリックカー向けサービスを展開する「アストンマーティン・ワークス」。彼らが1992年に手がけたのが、ヴィラージュの6.3リッターV8コンバージョン仕様だった。

英国・バッキンガムシャーのニューポートパグネルにあるアストンマーティン・ワークスは、レストアを含むヒストリックカー向けサービスに加え新車ディーラーも併設。アストンマーティン109年間の歴史において製造されてきたあらゆる時代の車種の購入、サービス、レストアを受付けている。

今回ピックアップするヴィラージュは1989年にデビューし、アストンマーティンにとっては実に20年ぶりとなる完全なニューモデルとして世界的に高い評価を得た。1992年、当時のアストンマーティンのカスタマー部門(現在のアストンマーティン・ワークス)は、ヴィラージュに6.3リッターV型8気筒エンジンを搭載する、コンバージョン(載せ換え)仕様の販売を開始した。しかし、このコンバージョン仕様が投入されたのは、1992年の初めの数ヵ月間のみだったという。

専用の足まわりやエクステリアを採用

デビュー30周年を迎えた、アストンマーティン ヴィラージュ 6.3のエクステリア。
500bhpというビッグパワーに合わせて、足まわりやブレーキを強化。大径ホイールの採用に伴い専用のアルミ製フェンダーやリヤスポイラーも採用されている。

最高出力500bhpを発揮する6.3リッターV型8気筒自然吸気ユニットへの換装により、ヴィラージュは当時最もパワフルなスポーツカーのひとつとなった。パワーとパフォーマンスの大幅な向上に合わせてサスペンションやブレーキも強化。さらに、ホイールとタイヤ・サイズの拡大に対応すべく、拡幅化されたハンドメイドのアルミニウム製専用フェンダーを採用。加えてサイドシルの延長、より開口部の大きいフロントエアダムの採用、延長されたリヤバンス及びリヤスポイラーなども追加されている。

アストンマーティン・ワークスの社長を務めるポール・スパイアースは、自身もヴィラージュ 6.3 コンバージョンプロジェクトに参加。当時「ミンキー(Minky)」の愛称で親しまれていた開発&デモ車両をドライブしたことを記憶しているという。

「ヴィラージュ 6.3 コンバージョンは、現在はアストンマーティン・ワークスとなったカスタマー部門の能力を示す素晴らしい一例となりました。このクルマは、ここニューポートパグネルで再設計され、スタイルにも変更が加えられました。アストンマーティンのクリエイティビティと先見性を示した存在です。2022年に30周年を迎えられたことに感激していますが、個人的には30年という時の経過に少しショックを受けています(笑)」

グループCマシン「AMR1」由来の6.3リッターV8NA

デビュー30周年を迎えた、アストンマーティン ヴィラージュ 6.3に搭載された、6.3リッターV型8気筒ユニット。
標準仕様のヴィラージュが最高出力330bhpの5.3リッターV8を搭載していたのに対し、最高出力500bhpを発揮するグループC由来の6.3リッターV型8気筒自然吸気エンジンに変更された。

ヴィラージュ 6.3は、当時のモータースポーツ活動にルーツがある。1980年代後半、アストンマーティンは25年ぶりにスポーツカーレースに復帰。1989年にはグループC規定で開発された「AMR1」で世界スポーツプロトタイプ選手権に参戦している。

このレースプログラムでは、アストンマーティンが開発したアルミ製V8エンジンの排気量がベースの5.3リッターから6.0リッター、さらに6.3リッターへと拡大。当初、5.3リッターV8を搭載してデビューしたヴィラージュにも、6.3リッターV8のオプションが用意されることになったのである。

発売当時、ベースモデルのヴィラージュ クーペの5.3リッターV8エンジンは最高出力330bhp・最大トルク350lb/ftと、当時の基準からしても控えめなスペックが与えられていた。しかし、グループC由来の6.3リッターV8仕様は、最高出力500bhp・最大トルク480lb/ftにまでパワーアップを果たすことになった。2トンを切る車両重量1969kgから、0-62mph加速が5.1秒、0-100mph加速は11.5秒、最高速度は280km/hを実現している。

6.3リッターV8エンジンは、コスワース製レーシングピストン、新形状のクランクシャフト、改良型シリンダーヘッド、新型インレットカムシャフトなどを採用。これに改良型ウェーバー/アルファ・シーケンシャル燃料噴射装置、専用マッピングされたエンジンマネージメントシステム、専用の排気触媒が組み合わされている。

数十台のみが販売されたヴィラージュ 6.3

デビュー30周年を迎えた、アストンマーティン ヴィラージュ 6.3のインテリア。
美しくレストアされたヴィラージュ 6.3のインテリア。コンバージョンが販売されたのは数ヵ月のみで、正確な製造台数はアストンマーティン・ワークスでも把握していないという。。

ヴィラージュ 6.3が導入された1992年当時、標準仕様のヴィラージュはオプションを除いて14万ポンド程度で販売。コンバージョンのコストは、この価格に6万ポンドが上乗せされている。ヴィラージュ 6.3とヴィラージュ ヴォランテ 6.3の正確な製造台数は未確認だが、60台程度のコンバージョン仕様が製造されたと見られている。正確な製造台数が測れない理由は、6.3リッターV8エンジンを搭載したヴィラージュのコーチビルド仕様が多数存在するためだという。

1992年にアストンマーティンが販売した46台はすべてヴィラージュ。そのうちのかなりの台数が、現在のアストンマーティン・ワークスを訪れて、1台あたり12週間ほどかけて6.3へのコンバージョン作業を行ったと見られている。アストンマーティンの著名ヒストリアン、スティーブ・ワディングハムは、6.3 コンバージョンについて、次のように説明する。

「ヴィラージュとヴィラージュ ヴォランテの6.3 コンバージョンは、アストンマーティンにとって試練の時代に登場しています。1980年代後半に好景気を経験したアストンマーティンは、90年代前半の経済不況で非常に厳しい販売実績を強いられることになりました」

「この独創的なコンバージョン仕様は、現在アストンマーティン・ワークスとなったブランドのカスタマーサービス部門によって行われ、多くの人々の関心を集めています。そして、多くの富裕層に、本物のモータースポーツの伝統を持つ象徴的なロードカーを入手する機会を提供しました」

F1の予選と決勝を前に、バーレーン・インターナショナル・サーキットを走行したアストンマーティン ヴァルキリー AMR プロ。

究極のハイパーカー! アストンマーティン ヴァルキリー AMR プロがデモランを披露 【動画】

アストンマーティンは、先週末に開催された2022年シーズンF1世界選手権開幕戦バーレーンGPにおいて、「ヴァルキリー AMR プロ」のデモンストレーションランを敢行。集まったF1ファンを前に、官能的な6.5リッターV型12気筒自然吸気エンジンのエキゾーストノートを披露した。

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