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Bizzarrini 5300 GT Corsa Revival
2020年に新オーナーの元でブランド復活
元フェラーリのチーフエンジニア、ジオット・ビッザリーニが立ち上げたビッザリーニは、1964年に彼の名前を冠した最初のモデル「ビッザリーニ 5300 GT」を発表。1968年までに約130台が製造された。そして2020年、現代のコレクターや愛好家のために、最高のデザイン、クラフトマンシップ、高い技術力を結集し、ビッザリーニ・ブランドが英国を拠点に復活を果たした。
英国のビッザリーニ専用ファクトリーで開発・製造されたビッザリーニ 5300 GT コルサ リバイバルは、1960年代に輝きを放った5300 GTを最も忠実に蘇らせたモデルとなる。オリジナルの設計図を使用し、オリジナルのサプライヤーからパーツを調達。さらに、かつて5300 GTプロジェクトに携わっていたエンジニアの意見を取り入れながら、現代の安全規制を考慮していくつかの重要な改良が加えられた。
リバイバルのために再現された美しいレッド
オリジナルへの強いこだわりはボディペインにも及んでいる。「ロッソコルサ(Rosso Corsa)」と呼ばれるカラーには長く複雑な歴史があり、オリジナルと称される色調が数多く存在。ビッザリーニの開発チームは当時と変わらないエクステリアを再現するため、オリジナルのパネルからペイントカラーサンプルを抽出。この色調をリバイバル用にカラーマッチングを繰り返し、「ロッソコルサ ビッザリーニ222」という美しいレッドを完成させた。
一方でオリジナル車両の燃料タンクはドライバーの背後に配置されていたが、先進の3Dスキャンを活用し、シャシーの隙間を埋める複雑な形状の新型燃料タンクを開発。燃料容量は95リットルで、長距離ドライブやヒストリックレースシリーズにも十分対応できる航続距離が確保された。
1965年のル・マン24時間クラス優勝車をイメージ
1963年、ビッザリーニは「イソ リヴォルタ グリフォ A3C」の高性能バージョンとして「5300 GT コルサ」を開発。ジョルジェット・ジウジアーロがエクステリアデザインを担当し、カロッツェリア・スポーツカーズのピエロ・ドローゴがそのデザインに改良を加えている。シボレー製5.3リッターV型8気筒エンジンを搭載した5300 GTは、軽量かつ高い走行性能を誇り、同時に信頼性の高いモデルとして好評価を得た。
多くのレースで活躍した5300 GTの中で、伝説的な存在ががシャシーナンバー「0222」だろう。1965年の夏、フランスのレーシングドライバー、レジス・フレシネとジャン・ド・モルトマールは、ル・マン24時間レースにおいて、5.0リッターを超えるクラスで優勝、さらに総合9位も手にした。「0222」は平均169km/hで24時間を走り切っただけでなく、レースフィニッシュ後すぐにジオット・ビッザリーニ自身がステアリングを握り、北イタリアのファクトリーへと自走で戻っている。
今回完成したビッザリーニ 5300 GT コルサ リバイバルのプロトタイプは、この伝説のシャシーナンバー「0222」からインスピレーションを受け、往年の高性能レーシングカーのエッセンスを凝縮したカラーリングが採用された。
限定24台をハンドメイドで製造
ジオット・ビッザリーニは、サーキット仕様の5300 GT コルサを開発する際、専用の独立懸架式リヤサスペンションを採用し、フロントに搭載されたエンジンを可能な限りシャシー後方に移動させた。この画期的な重量配分の変更は、フロントヘビーなライバルに対して、大きなアドバンテージとなった。
今回、完成した5300 GT コルサ リバイバルをテストしたところ、各コーナーで前輪に全重量の25%がかかっていることが確認されており、1965年に設計された5300 GTは、2022年においても完璧なバランスを発揮することが明らかになっている。
5300 GT コルサ リバイバルは限定24台が、1台ずつハンドメイドで製造される。コクピットにはFIAヒストリックレース安全規定をクリアした6点式ロールケージとシートを採用。このロールケージにより、プロトタイプのテスト走行では、オリジナルモデルよりも剛性が増していることが確認された。
「ウェーバー45DCOE」キャブレターを備えた5.3リッターV型8気筒自然吸気ガソリンエンジンは最高出力400hpを発揮。車重はわずか1250kgという超軽量に仕上がり、優れたパワーウエイトレシオを実現している。
2022年5月に完成1号車がデリバリー
オリジナルの5300 GTには、当時最強の軽量素材であったグラスファイバーが多用されている。一方、今回の5300 GT コルサ リバイバルは当時一般的ではなかったカーボンファイバーが採用されることになった。その経緯を、新生ビッザリーニのCOO(最高執行責任者)を務めるリチャード・クインランは次のように説明する。
「もし、当時カーボンファイバーが使用可能だったなら、ジオット・ビッザリーニは間違いなく自分のレーシングカーにカーボンファイバーを採用していたと思います。それもあって、5300 GT コルサ リバイバルは、ヒストリックレースでの使用を考えているお客様のために、フルカーボンファイバーのボディシェルを標準仕様として採用することになりました」
プロトタイプの完成後、前述のように24台のカスタマー仕様が製造され、それぞれが1965年のル・マン優勝車両を現代的に解釈した仕様で提供される。また、カスタマーの好みに合わせたモディファイも可能となっている。
「このクルマはもちろんレース用に設計されていますが、この最高のリバイバル仕様を公道で走らせたいというお客様の要望にも、もちろんお応えすることができます」と、クインランは付け加えた。
現在、5300 GT コルサ リバイバルは最終的な公道テストが進められており、最初のカスタマーへのデリバリーは2022年5月に開始される予定だ。