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Tecnomar for Lamborghini 63
陸と海のイタリア名門ブランドがコラボ
アウトモビリ・ランボルギーニが豪華なメガヨットのビルダーとして知られるイタリアン・シー・グループとともに、新型高級クルーザー「Tecnomar for Lamborghini 63(テクノマール フォー ランボルギーニ 63)」をワールドプレミアしたのは2020年6月30日のこと。イタリアンスーパーカーのアイコンと高級ヨット業界のコラボレーションは、各方面で大きな話題を集めた。
それから約1年、完成した実艇がいよいよ顧客のもとへとデリバリーされたという。ランボルギーニの戦略ディレクター、ステファノ・ルティリアーニは次のようにコメントしている。
「我々のスーパーカーがアスファルトを疾走するように、ランボルギーニのDNAのエッセンスが、今日は洋上を漕ぎ出そうとしていることを誇りに感じています。このヨットは我々2つのチームの価値を共有するものであり、完璧な相乗効果により、この素晴らしいプロジェクトを完遂することができました」
ランボルギーニ車のように軽量かつ俊足
「Tecnomar for Lamborghini 63」はランボルギーニのハイブリッドスーパースポーツ「シアン FKP 37」に着想を得て生まれたモーターヨット。ランボルギーニのチェントロ・スティーレの協力のもとで開発された。ちなみに「Tecnomar」は、イタリアン・シー・グループに属する高級ヨットブランドである。
エンジンにはMAN製V12-2000HPを2基搭載し、最大速度は60ノットに到達。Tecnomarモデルとしては最速の性能を誇る。ランボルギーニ車同様、軽量なカーボンファイバー素材を積極的に使用しており、全長63フィート(約19m)で重量は24トン以下に抑えることが可能になった。
ミウラやカウンタックの面影も
ボディには、流体力学を専門にするエンジニアが生み出した先鋭的なシルエットを採用。マルチェロ・ガンディーニの手になるミウラやカウンタックのラインを、現代的に再解釈して取り入れたという。
ハードトップはランボルギーニのロードスターモデルに共通するデザインを採用。優れたエアロダイナミクス性能はもちろん、太陽の光や風からキャビンをしっかりと守る設計となっている。
エンジン始動ボタンもスーパーカー流
船首灯はランボルギーニのEVコンセプト「テルツォ ミッレニオ」、及び「シアン FKP 37」のヘッドライトにオマージュを捧げる意匠に。キャビンには軽量で機能的なハイテク素材を多用しながら、ヘキサゴンや“Y”モチーフなど、ランボルギーニを象徴するグラフィックを随所に散りばめた。
さらに、インストゥルメントパネルにはランボルギーニの「カーボンスキン」を使用。エンジンのスタート&ストップボタンも、ランボルギーニと共通の「赤いカバー付き」デザインとしている。
ピエヒ博士に敬意を表したHVスポーツ、シアン
シアン FKP 37は2019年9月のフランクフルトショーでワールドプレミアしたハイブリッドスーパーカー。ハイブリッドシステムには、世界で初めてスーパーキャパシタを蓄電用に採用。システム最高出力は819hpに達し、パワーウェイトレシオはランボルギーニのV12モデル中で最高の1.0kg/hpを実現した。0-100km/h加速は2.8秒を下回り、最高速度は350km/h以上。車体価格は税抜きで200万ユーロ(約2億3700万円)超えだが、生産分の63台は完売している。
ちなみにFKPは、同年8月に逝去した故フェルディナント・カール・ピエヒ(Ferdinand Karl Piech)博士に敬意を示したネーミング。フォルクスワーゲンブランドを長年見守ってきた博士は、ランボルギーニの真の理解者であり、数字の“37”もピエヒ博士の生まれた1937年を表したものだ。「シアン」はランボルギーニの故郷、ボロネーゼの方言で“閃光”または“稲妻”を意味する単語である。
昔、海上を高速で走るパワーボートはレーシングドライバーとは切っても切り離せない存在だった。洋上と陸上、両方の速度記録に挑んだ英雄たちの姿は数多い。波を切り裂き疾走するランボルギーニの姿は、かつての輝かしい文化を思い起こさせてくれる。