アルピーヌ A110がマイナーチェンジでグレード体系を変更

アルピーヌ A110 SとA110 GTがマイナーチェンジで出力アップ! 「あらためてオリジナル A110を貴重と感じさせるクルマだと痛感」

アルピーヌ A110 Sの走行シーン
2018年の登場以来、初のマイナーチェンジを受けたA110。写真はもっともスポーティなグレードのA110 S。
軽量コンパクトなミッドシップスポーツカーとして喝采を浴びたアルピーヌ A110がマイナーチェンジで改良され、グレード体系も整理された。外観からは大きな変貌は見られないが、その中身は長足の進化を遂げていた。

Alpine A110 S / A110 GT

グレード分けがさらに明確に

2018年の登場以来、初のマイナーチェンジを受けたA110。写真はもっともスポーティなグレードのA110S。
オリジナルのA110を意識して、リヤに空力付加物を備えないのが新生A110の決意であった。

オリジナルのアルピーヌ A110は1973年の世界ラリー選手権を勝ち抜いた初代チャンピオンカーだ。そして、そのオマージュとして誕生した新生A110が、2018年の登場以来、初のマイナーチェンジを受けた。従来のグレードはベーシックグレードのA110 ピュア、ラグジュアリー仕様のリネージ、高性能版のA110 Sというグレード展開だったが、新型でピュアがA110に、リネージがA110 GTになった。A110 Sの名称は維持された。

パワートレインはこれまで同様、1.8リッター直4ターボに7速DCTの組み合わせ。エンジンは出力違いで2種類用意され、A110に252psの標準仕様が、GT及びSに300psの高出力仕様が搭載される。ポイントは後者が最高出力で8ps、最大トルクで20‌Nmそれぞれ向上したことと、マイチェン前のリネージは標準仕様だったがGTにはS同様の高出力仕様が搭載されることである。

エンジンが2種類ならシャシーも2種類

エンジン同様にシャシーもスタンダードとスポールの2種類が用意される。A110及びGTがスタンダードシャシーを、Sのみスポールシャシーを装着する。スタンダードシャシーはオリジナルのA110を彷彿させるロールの大きさが特徴で、それはすなわち市街地での良好な乗り心地につながる。スポールは名前どおりにスプリングレートやアンチロールバーをスタンダード比で約1.5倍強められている。結果コーナリングフォース1Gあたりのロール角は、スタンダードシャシーが3.3度に対して、スポールシャシーが2.8度に抑えられているという。

今回はSとGTを比較試乗したが、その印象はともに軽快で痛快。Sのフロント215、リヤ245(GTはフロント205、リヤ235)という今となっては適度に幅の狭いタイヤは恐ろしい領域まで行かずとも限界を知らせてくれるし、床まで踏み込まずともアクセルオフで聞こえる破裂音がそこそこのスピードでもやっている気にさせてくれる。もちろん300psをきっちり引き出すにはサーキットへ行った方がいい。

運転が楽しいクルマの信念とは

Sと比べ、GTは数字以上に大きなロールを感じた。サーキットでのドライビングは難しそうだが、反面乗り心地は圧倒的に優れているので、サーキットに通わないのなら迷わずGTを選びたい。なお8ps、20‌Nmの高性能化は旧型と並べて比べなければわからなかった。

開発時にオリジナルを強く意識していた新生A110は、エレガントなスタイリングと軽量から来るドライビングの楽しさを追求したミッドシップスポーツカーである。車速問わず楽しい瞬間が連続する。安全性や快適性のため漸次重量増が進む現代にあって、異例とも言える約1100kgという車重は、アルミボディといえど並大抵の努力ではたたき出せまい。フロント44%、リヤ56%と良好な前後重量配分や、低い重心もまたこのA110の走る悦びの核心である。最高速度260km/hでありながら、エレガンス追求のためスポイラーを備えない点も信念を感じる。

特別な受注生産プログラムもあり

室内はアップルカープレイとグーグルアンドロイドオートに対応するマルチメディアシステムがトピックだが、走るのに夢中で試すのを忘れていた。なおコラム固定式パドルは舵角が大きい場合、シフトの際にステアリングから手を離す必要があり、ステアリング裏にするかシフトアップダウンできるセレクタレバーが欲しくなるのは前期型と同様だった。

最後に自分だけの特別なA110を造るための受注生産プログラムを紹介したい。ボディカラー、ホイール、ブレーキキャリパーなどの組み合わせは約7万通りで、これなら自分と同じ仕様とすれ違う危険性は少ないだろう。もし目移りしてしまって選べないというなら、本国推奨のオプションが装着されたエッセンシャルパッケージでもいいだろう。素のA110で39万円高の850万円、A110 Sで58万円高の955万円となる。後悔のない選択をしよう。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 8月号

SPECIFICATIONS

アルピーヌ A110 S〈GT〉

ボディサイズ:全長4205 全幅1800 全高1250mm
ホイールベース:2420mm
車両重量:1110〈1120〉kg
エンジン:直列4気筒DOHC+ターボ
総排気量:1798cc
最高出力:221〈185〉kW(300〈252〉ps)/6300〈6000〉rpm
最大トルク:340〈320〉Nm(34.6〈32.6〉kgm)/2400〈2000〉rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前215〈205〉/40R18 後245〈235〉/40R18
車両本体価格:897〈893〉万円

【問い合わせ】
アルピーヌコール
TEL 0800-1238-110

【関連ウェブサイト】
アルピーヌ公式サイト

1975年コルシカのルノー・ワークスのカラーリングを再現した、アルピーヌ A110 ツール・ド・コルス 75。

非公開: 1975年のWRCコルシカをオマージュ、ワークスカラーを纏った「アルピーヌ A110 ツール・ド・コルス 75」がデビュー 【動画】

アルピーヌは、1975年のWRC(世界ラリー選手権)ツール・ド・コルスで2位に入った、7号車のカラーリングを再現したスペシャルモデル「A110 ツール・ド・コルス 75」を発表した。全世界で150台が限定販売され、英国には5台が上陸し、価格は6万6855ポンドから 。日本市場への導入台数と時期は明らかになっていない。

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著者プロフィール

吉岡卓朗 近影

吉岡卓朗

Takuro Yoshioka。大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わり…