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“記憶”を遺せるカメラ
GR IIIは僕にとって唯一無二、特別な存在のカメラだ。肌身離さず、毎日持ち歩きたい。いつでも手の届く場所に置いておきたい。写真を撮るだけならスマートフォンがあるじゃないかって? 確かに今時のスマートフォンは、こちらの心を読んでいるかのように“綺麗に見える”写真を撮影させてくれる。そう“させてくれる”。スマートフォンは、日常を記録する上でこれ以上ない道具に違いない。しかし、僕が遺したいのは記録ではなく“記憶”。そのとき、全身で感じた感覚を1枚の写真としてプリザーブしたい。気の利いたスマートフォンが記録してくれた美しい思い出ではなく、五感で感じるすべてを1枚の写真として表現し遺したい。
ちょうどいいサイズ感
「スマートフォン以外に“写真撮影の道具を持ち歩く理由”はあるのか?」
ある。だから僕はGR IIIを使う。レンズ交換式カメラ並みAPS-Cサイズの大型CMOSセンサーは2240万画素。F2.8の35mmフィルム換算で28mm相当となる単焦点レンズは、開放F値からシャープな描写だ。レンズ前3cmまで寄れる設計はワイドマクロでの大胆な表現では、大型のセンサーとともに美しいボケ味まで楽しめる。記録を目的とするなら、単焦点レンズは時に不便なものだが、記憶を遺すにはちょうどいい、そのとき感じる空間全体を包み込む画角だ。画素数こそ減るものの、35mm相当、50mm相当にクロップ(切り抜き)モードも備える。
フィルムをシミュレートするかのようなピクチャーモードに、カスタマイズで変化を加えられる“ルック”を登録しておけば、その時々のシーンに応じたより積極的な表現にも対応できる。お気に入りは「ハードモノトーン」をベースに、諧調と色調を調整。四隅に口径食を少しだけ加えた、僕だけのカスタムモードだ。自分だけのレシピを2つのカスタム設定にしておけば、レリーズするだけで自分だけの表現を盛り込める。
もちろん、絵作りだけじゃない。片手で握ったホールド感の良さを確かめながら、2つのダイヤルとシンプルなプッシュレバーで撮影パラメーターへとダイレクトにアクセスできる。そして何よりGR IIIを特別なものにしてるのが、手にすっぽりおさまるサイズ感とポケットに入る薄さ、持ち歩くことを躊躇させない軽さ、それに存在感の希薄さ。旅先の何気ない風景や被写体を威圧しない佇まいが、このカメラの価値でもある。こればかりは、どんな高画質な一眼カメラでも敵わない。
スマホじゃ足らない理由
週末の待ち合わせ、早めにバーに到着すると、まだ誰もいない店内での忙しなく準備する様子を遺したくなった。GR IIIのストラップを手首に通し、市街を軽くランニング。朝靄の街を写真に収めながら、その日の行動を決めることが、初めての街、初めての朝での定番になった。今、このときを遺したい。そう思った時、いつでもレリーズすれば、最高の状態で瞬間を捉えてくれる。レリーズしたい瞬間には、自分自身で操れるカメラを手元に置いておきたい。GR IIIがもたらしてくれるのは、そんな他では換えられない唯一無二の世界観だ。だから僕は、スマートフォンに加えてもう1台。GR IIIを持ち歩く。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/中島仁菜(Nina NAKAJIMA)
MAGAZINE/GENROQ 2019年 12月号
評価
コストパフォーマンス:4
革新性:3
使い勝手:4
デザイン:4
画質:5
PRICE
12万3750円(税込)
【問い合わせ】
リコーイメージングお客様相談センター
TEL 0570-001313
【関連ウェブサイト】
http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/