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面倒くさい洗浄も考えなくていい
ものすごく簡単に言えば、ペーパードリップのコーヒーを丁寧に安定した味わいで、手軽に抽出してくれる。さらに手入れも容易という、コーヒー好きにはたまらない製品がコレ。バルミューダが開発した「BALMUDA The Brew」だ。長いエスプレッソ全盛時代から、サードウェーブコーヒー時代に入り、ドリップコーヒー全盛の時代になると思いきや、単なるドリップコーヒーに留まらず、様々な抽出方法を様々な焙煎コーヒーと組み合わせることで趣味性が高まった現代のコーヒーの世界。
僕がコーヒーの深淵を覗いたのは1990年代初頭、バブル真っ盛りの赤坂「コヒア アラビカ」だった。何も知らずに待ち合わせに行くと、魔法のように味わい深い、ふくよかな香りの一杯が今も鮮明に記憶に残っている。はるか昔、30年も前のことだが、この製品にはそんな思い出をフラッシュバックさせるだけの強烈な拘りが感じられる。コヒア アラビカが拓いた世界はその後、外国人がより洗練されたカルチャーとしてサードウェーブコーヒーへと繋げていくことになる。
本製品はさらにそこから派生して家庭で、しかもスーパーで安価に販売されているようなコーヒー粉でも、美味しくコーヒーをいただける製品だ。しかもペーパーフィルター以外はサッと水洗いするだけで、次の抽出へと進めるのだから、面倒くさい洗浄も考えなくていい。なんと都合の良いコーヒーメーカーだろうか。
アイスコーヒーにできる抽出モードも
美味しさのワケは0.2mlという微量単位のお湯をきめ細かな温度管理で注ぐドリップ制御とクリアな味わいを実現する“注湯”にある。レギュラーモードでは市販の手軽なコーヒー粉を想定し、絶妙のタイミングの蒸らしと適度な湿り気をキープしながら、やや速めの抽出速度で濃いコーヒーを抽出。最後の仕上げに25%に相当する分量のお湯を注ぎ込む。雑味が抽出液に入らないよう注意を払いながら、適量のお湯でクリアな味わいにするというわけ。
こだわり派にオススメなのはストロング。こちらはコーヒー粉からたっぷり旨味成分を引き出すため、ゆったりとその実力を引き出す抽出モードだ。雑味の多いコーヒー粉ではマズくなるが、良いコーヒー豆を挽きたてで抽出するなら断然こちら。なお氷と合わせることでアイスコーヒーにできる抽出モードも備えている。
作り手の意気込みを感じる1台
フィルターは一般的な台形型ではなく円錐型を採用。これにより安定して良い結果を得られるのだとか。熱によって失われる風味を最小限に抑えるコンパクトなコーヒーミルも純正で用意される。ペーパーフィルターをセットし、コーヒー粉をいれ、水をタンクに注いだら、あとはボタンを押すだけ。“カチカチカチ”と機械式のタイマーを模した音が、コーヒー香とともに放たれる演出もなかなか粋だ。最大3杯分と大量のコーヒーは抽出できないが、その分、1杯でも2杯でも変わらない味わい。アイスモードで濃い目に抽出したコーヒーを、スチームドミルクで割って頂くのも具合が良かった。
手軽さと美味しさの絶妙なるバランス。そして垣間見える拘りの作り込み。作り手の意気込みを感じる1台だ。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 8月号
PRICE
5万9400円
評価
好きなコーヒー豆を自分で選びたい拘り派はもちろん、安価なコーヒー粉でも美味しく飲めるよう設計され、幅広い楽しみ方ができる。ドリップコーヒーの良さを改めて感じられる1台。
メンテナンス性:5
味わい:5
機能性:3
コストパフォーマンス:3
設置スペース:4
【問い合わせ】
バルミューダ
TEL 0120-686-717
https://www.balmuda.com