エリーゼ、エキシージ、エヴォーラが終了した今ロータスはどんなラインナップなの?

「エリーゼ、エキシージ、エヴォーラが終了したらロータスはどこへ進むのか?」まもなく登場する最新モデルを解説する

グッドウッドに展示された新型ミッドシップスポーツカー「エミーラ」(左手前)とレース仕様の「エミーラGT4」(左中)、BEVのハイパーSUV「エレトレ」(右)、限定生産のBEVハイパーカー「エヴァイヤ」(左奥)。
グッドウッドに展示された新型ミッドシップスポーツカー「エミーラ」(左手前)とレース仕様の「エミーラGT4」(左中)、BEVのハイパーSUV「エレトレ」(右)、限定生産のBEVハイパーカー「エヴァイヤ」(左奥)。
生粋のスポーツカーメーカーとして名を馳せたロータスが、その方針を大きく変えようとしている。これまでのエリーゼ、エキシージ、エヴォーラという3本の柱は2021年に生産が終了し、まもなく本邦にも上陸する新型ミッドシップスポーツカー「エミーラ」を中心に、限定生産のBEVハイパーカー「エヴァイヤ」、BEVのハイパーSUV「エレトレ」というラインナップが用意される。新生ロータスのラインナップを俯瞰して見てみよう。

もともとはライトウェイトスポーツカーメーカー

駆動方式はAWDで、500psを発揮するドライブユニットが1輪ずつ駆動させる。
2000psのハイパーEVのエヴァイヤ。駆動方式はAWDで、500psを発揮するドライブユニットが1輪ずつ駆動させる。

もともとロータスはコーリン・チャップマンによって1958年に創設されたレーシングカーコンストラクターである。F1で1960年代に3回、1970年代に4回コンストラクターチャンピオンとなって名を馳せた。その一方で卓越したロードカーも産み出しており、当時としては画期的なFRPモノコックをもつエリートやエラン、ヨーロッパなど小型ライトウェイトスポーツカーを次々と発表。それらはいずれも非力ながら、軽量かつ小型故に優れた操縦性を持っており、レーシングカーにも通じる魅力を持っていた。現在につながるライトウェイトスポーツカーメーカーのイメージはここから誕生したのだ。

しかし、その後エリートやエスプリなど、それまでと較べて大きく豪華なニューモデルを登場させたことで、1980年代に販売は低迷。1982年にはチャップマンが急死し、結局GM傘下に収まった。その後、アルティオーリやプロトン傘下などを経て、2017年からは中国のジーリー(吉利汽車)がロータス株式の51%を取得している。

ジーリー主導のもとロータスが発表したのが、新世代商品群である。まず2019年に電動ハイパーカーの「エヴァイヤ」が、続いて2021年に「エミーラ」が発表され、2022年にライトウェイトスポーツカーメーカーとしては禁じ手ともいえるSUV、しかもBEVの「エレトレ」を発表した。本記事では大きな変化を遂げつつあるロータスの今後のラインナップを紹介し、その驚くべき中身を理解してみたい。

Lotus Emira

新世代ロータスのリーダー「エミーラ」

ロータスにとって最後の内燃機関搭載モデル、エミーラ。
ロータスにとって最後の内燃機関搭載モデル、エミーラ。

エリーゼ、エキシージ、エヴォーラという、ここ20年の代表的ラインナップの後を継ぐ、中核モデルとなるのがエミーラだ。それと同時に、ロータスにとって最後の内燃機関搭載モデルでもある。車名が「E」で始まるのがロータスの常だが、エミーラ(Emira)は古代言語で、「リーダー」や「司令官」といった意味を持つという。

新たにロータスを牽引する新型2シーターミッドシップスポーツカーは、全長4413mm、全幅1895mm、全高1226mmで、2+2のエヴォーラよりわずかに大きなボディを持つ。なおホイールベースはエヴォーラと同値の2575mmとなる。

トヨタ製3.5リッターV6とAMG製2.0リッター直4

搭載されるエンジンは2機種で、エキシージやエヴォーラにも搭載されたトヨタ製3.5リッターV6スーパーチャージドと、今回初採用となるAMG製2.0リッター直4ターボである。スペックは3.5リッターV6スーパーチャージドが最高出力405ps/6800rpm、最大トルク430Nm/2700-6700rpm(MT=420Nm/2700-6700rpm)。2.0リッター直4ターボが最高出力365ps/7200rpm、最大トルク430Nm/3000-5500rpmとなる。トランスミッションはV6モデルが6速MTあるいは6速ATが選択でき、直4モデルが8速DCTのみとなる。

ロータスの誇る押し出しアルミシャシーによって、車両重量(Kerb weight)はV6が1485kg、直4が1405kgと双方とも軽量に仕上げられている。0-100km/h加速はV6が4.2秒(MT=4.3秒)で、出力がわずかに低い直4モデルも軽量を活かして同じく4.2秒である。一方で最高速度はV6が288km/h、直4が283km/hとなっている。

これまでと一線を画する充実の快適装備

これまでのロータスともっとも違うと感じるのは室内だろう。カップホルダー2つ、ドアポケット、グローブボックスなどの小物入れをはじめ、シート後方スペースに208リットル、リヤトランクに151リットルなど、これまでのロータスにはなかった収納が備わった。これによってポルシェ・ケイマンやアルピーヌA110などと充分対等に伍する快適性が期待できる。ADASも充実しており、ACCや衝突予防システム、車線逸脱警告、車線変更アシスト機能も用意している。いかにも現代的なスポーツカーらしい期待に応えてくれる。

SPECIFICATIONS

ロータス・エミーラ V6〈直4〉

■ボディサイズ:全長4413 全幅1895 全高1226mm
■車両重量(DIN):1458kg
■エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージド〈直列4気筒DOHCターボ〉
総排気量:3456cc〈1991cc〉
最高出力:298kW(405ps)〈269kW(365ps)〉
最大トルク(※AT):430Nm(43.8kgm)〈同値〉
■トランスミッション:6速MT/6速AT〈8速DCT〉
■駆動方式:RWD
■パフォーマンス
最高速度:288km/h〈283km/h〉
0→100km/h加速(※AT):4.2秒〈同値〉
■車両本体価格(税込):1452万円〈1386万円〉

ロータス エミーラのフロントビュー

非公開: 新型ロータス エミーラは「ベイビー スーパーカー」! デザイナーがそのカタチの原点を語る。エクステリア編

ロータスにとって「最後の内燃機関モデル」となるエミーラ。新時代に向けて走り出すロータスにとって、そのムーブメントを先導することになる第1弾のプロダクトとなる。エクステリアデザインひとつとっても、これまでのロータスとはひと味もふた味も違うムードが強く漂っている。存在感たっぷりなエミーラの外見を形づくったデザイナーに、そのポイントについて語ってもらった。

Lotus Evija

なにもかもが規格外のハイパーBEV「エヴァイヤ」

エヴァイヤは最高出力2000ps、最大トルク1700Nmという圧倒的なスペックが話題となったBEVハイパーカー。
エヴァイヤの駆動方式はAWD。最高出力2000ps、最大トルク1700Nmという圧倒的なスペックを誇る。

エヴァイヤは最高出力2000ps、最大トルク1700Nmという圧倒的なスペックが話題となったBEVハイパーカーである。全長4459mm、全幅2000mm、全高1122mmという見た目は、完全にミドシップスポーツカーだが、駆動方式はAWDとなる。AWDといっても各車輪間にデフやプロップシャフトといった機械的なつながりはない。インテグラル・パワートレイン社が設計したモーターとインバーターに、Xtrac社が供給するプラネタリーギヤを用いた減速機が組み合わされ、500psを発揮するドライブユニットが1輪ずつ駆動させる。EVの強みを最大限に活かした設計だ

その驚異的パフォーマンスは0-100km/h加速が3秒以下、0-300km/hが9秒以下を謳う。ちなみにブガッティ・シロンは13.6秒である。最高速度320km/h超はEV故にギアレシオの問題だろう。

キーワードは「ポロシティ」

エヴァイヤの車重は1680kg。ロータスの基準からすれば重量級だが、EVの平均から見れば軽い。バッテリーの単体重量は718kgで容量は比較的小さな70kWhだが、最大航続距離はWLTP複合サイクルで400kmを謳う。電圧800Vのバッテリーパックは床に平置きではなくミッドに搭載する。前代未聞の最大800kWで充電可能といい、わずか9分でフル充電になるという。バッテリーと電子制御系の設計には、フォーミュラEのバッテリーサプライヤーであるウィリアムズ・アドバンスト・エンジニアリングが参画している。

エヴァイヤは「ポロシティ(多孔性)」という言葉がキーワードだ。ボディ外板だけでなく車両内部を通過する気流によって優れた空力性能を発揮するという。EVならではのデザインの自由度を最大限に活かして、美しいボディと高いダウンフォースを両立させた。もちろん軽量にもつながる。

エヴァイヤの車両本体価格は200万ポンド(約3億3000万円)超と言われ、その生産はわずか130台の限定である。

SPECIFICATIONS

ロータス・エヴァイヤ

■ボディサイズ:全長4459 全幅2000 全高1122mm
■車両重量:1680kg
■モーター:
最高出力:2000ps
最大トルク:1700Nm(173.3kgm)
■駆動方式:AWD
■パフォーマンス
最高速度:320km/h以上
0→100km/h加速:3.0秒以下
■環境性能:航続距離400km(WLTP)
■車両本体価格:200万ポンド(約3億3000万円)

ロータスの次世代EVハイパーカー、エヴァイヤのオーナーのために生まれたノートン&サンズのドライビングジャケット

非公開: ロータス エヴァイヤのオーナーだけが入手可能!サヴィル・ロウの流儀で仕立てる超絶レアなドライビングジャケット

ロータスが満を持して投入するピュアEVの次世代ハイパースポーツ「エヴァイヤ」。そのオーナーだけが手に入れることができる、特別なドライビングジャケットが誕生した。手掛けたのは、サヴィル・ロウで200年以上の歴史を誇る老舗テーラー、ノートン&サンズだ。

Lotus Eletre

ロータス初のSUV「エレトレ」はピュアEV

ロータス初のSUV、エレトレは最高出力600ps、最高速度260km/h、0-100km/h加速3秒以下、最大航続距離約600kmを目標値として掲げるピュアEVのSUVである。
ロータス初のSUV、エレトレは最高出力600ps、最高速度260km/h、0-100km/h加速3秒以下、最大航続距離約600kmを目標値として掲げるピュアEVのSUVである。

2022年3月に突如発表されたロータス初のSUV、エレトレは最高出力600ps、最高速度260km/h、0-100km/h加速3秒以下、最大航続距離約600kmを目標値として掲げるピュアEVのSUVである。2022年後半には中国に新設した工場で、その生産をスタートする予定だ。

ボディサイズは全長5103mm、全幅2135mm、全高1630mmで、ホイールベースは3019mmとなる。長く、幅広で、SUVとしては低いシルエットはランボルギーニ ウルスを彷彿させる。このスタイリングは空力哲学に基づいたもので、フラッシュサーフェイス化されたドアハンドルも、空気抵抗を減らすための施策のひとつである。

自律走行を視野に入れたセンサー類

フロントグリルは自動開閉するアクティブ式。必要に応じて空気抵抗を減らす時には閉じ、モーターやバッテリー、ブレーキなど冷却が必要な時には開放して空気を送り込む仕組みだ。左右に分割したカーボンファイバー製のルーフスポイラーも特徴的。中央部を無くすことで軽量化を図るとともに、リヤガラス上部に搭載したLIDARセンサーにも干渉しないよう配慮した結果、このようにユニークなデザインが生まれたという。前後ウインドウ、フロントフェンダーアーチに搭載したLIDARセンサーとADAS用カメラを連動させることで、自律走行機能を実現する計画もあるという。

エヴァイヤは1輪ずつにモーターを備えるが、エレトレは前後に1基ずつ電気モーターを搭載するAWDだ。電子制御エアサスを全車に標準装備。他に自動車高調整機能や後輪操舵、アクティブアンチロールバー、トルクベクタリングといった最新デバイスもオプションとして設定する。

コクピットは中央に15.1インチのOLEDタッチスクリーンを配置。上下30mm未満の薄型インストゥルメントパネルが斬新だ。

SPECIFICATIONS

ロータス・エレトレ

■ボディサイズ:全長5103mm 全幅2135mm 全高1630mm
■ホイールベース:3019mm
■モーター:
最高出力:kW(600ps)
最大トルク:1700Nm(173.3kgm)
■バッテリー:100kWh以上
■駆動方式:AWD
■パフォーマンス
最高速度:260km/h
0→100km/h加速:3.0秒以下
■環境性能:航続距離600km(WLTP)

ロータス エレトレのフロントビュー

非公開: ロータス エレトレ、ワールドプレミア! ブランド初の5ドア電動SUVは2022年後半に生産スタート

ロータスは2022年3月30日、新型車「エレトレ」を発表した。同社初のフル電動5ドアSUVであり、最高出力600hp、航続距離は600kmを目標値に掲げる。中国に新設した工場で、2022年後半より生産をスタートする予定である。

電動化とSUVは自動車メーカーの必達事項?

ボディサイズは全長5103mm、全幅2135mm、全高1630mmで、ホイールベース3019mm。
エレトレのボディサイズは全長5103mm、全幅2135mm、全高1630mmで、ホイールベース3019mm。

エミーラは今後様々なバリエーションのベースとなるモデルとして期待される。と同時にエミーラはロータスにとって最後の純内燃機関車であると公言されており、実際、エヴァイヤにしても同社初のSUVエレトレにしてもBEVとなった。今後ロータスのミッドシップスポーツカーは少なくともハイブリッド車となるだろう。

一方でこれまでの歴史を紐解けば、その始まりはモータースポーツ由来のライトウェイトスポーツカーであり、経営環境の変遷でラグジュアリースポーツカー路線を進んで、ブランドイメージを混乱させたことを考えると、ファンは行く末を心配するのはやむを得ないところだ。

とはいえ、今やラインナップにSUVを加える、あるいは電動化することは、世界の自動車メーカーにとって時代の潮流であり、スポーツカーメーカーも例外ではない。エンジニアリング会社として様々な自動車メーカーの開発に携わってきたその技術力を信じて、新時代ロータスの行く末を見守りたい。

英国・ヘセルに新規オープンした最新の製造施設「チャップマン・プロダクション・センター」。

非公開: ロータス、エミーラ製造ファクトリー「チャップマン・プロダクション・センター」を正式オープン

ロータス・カーズは、英国・ヘセルに建設した新たなスポーツカー製造施設を正式にオープンした。同社の創設者に敬意を表して、この施設の名称を「チャップマン・プロダクション・センター(Chapman Production Centre)」としている。

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ゲンロクWeb編集部 近影

ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…