新型ポルシェ 911 GT3 R、2023年から各国レースに投入

GT3カテゴリーの大本命! 新型「ポルシェ 911 GT3 R」がスパ・フランコルシャン24時間で初公開【動画】

タイプ992をベースに開発された、ポルシェの最新カスタマー向けレーシングカー新型「911 GT3 R」。
タイプ992をベースに開発された、ポルシェの最新カスタマー向けレーシングカー新型「911 GT3 R」。
ポルシェの最新世代GT3レーシングカー「911 GT3 R」が、7月28〜31日にかけて開催されたスパ・フランコルシャン24時間レースにおいて公開された。タイプ992をベースに、GT3規程で開発されたカスタマー向けレーシングカーは、2023年シーズンから世界中のGTシリーズに登場する予定だ。

Porsche 911 GT3 R

獲れる勝利をすべて手にしてきた先代モデル

ポルシェの最新カスタマー向けレーシングカー新型「911 GT3 R」のエクステリア。
あらゆるGTレースで結果を残してきた先代モデルに対し、新型911 GT3 Rはその成功を引き継ぐ使命を持って生まれてきた。

新型911 GT3 Rは最新世代のタイプ992をベースに開発され、最高主力565ps(416kW)を発揮する4.2リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンを搭載。ポルシェ製6速シーケンシャルギヤボックスを介して、リヤを駆動する。先代モデルと比較するとエアロダイナミクスが大幅に進化し、マシンバランスが最適化された。

開発は2019年にスタートし、プロドライバーだけでなく、レース経験の少ないジェントルマンドライバーのためにドライバビリティを向上させている。シリーズごとに異なるBoP(バランス・オブ・パフォーマンス:性能調整)に対応すべく、あえて余裕をもった性能が与えられている。また、プライベーター用マシンとして、コンポーネントの合理化を進めたことで、ランニングコストの低減も目指したという。

ポルシェモータースポーツのセールスディレクターを務めるマイケル・ドライサーは、新型新型911 GT3 Rについて次のように説明する。

「新型911 GT3 Rには、大きな使命があります。 先代モデルは2019年からの4シーズンで、獲得できるタイトルや勝利をすべて手にしてきました。ニュルブルクリンク24時間、スパ・フランコルシャン24時間での総合優勝、そしてル・マン24時間やデイトナ24時間でクラス優勝を達成しています。私たちはその成功を引き継がなければならないのです。ポルシェのカスタマーレーシング担当にとっては、非常に厳しい仕事となりました」

プライベーターが長く使い続けられるクルマ

ポルシェの最新カスタマー向けレーシングカー新型「911 GT3 R」のエクステリア。
IMSAやWECでもGT3規程マシンが参戦できるようになったことから、プライベーターが戦闘力を保った状態で長く使い続けられるマシンが開発された。

北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権は2022年シーズンから、従来のGTLMクラスに代わってGT3規程マシンで争うGTDプロクラスを導入。これにFIA 世界耐久選手権(WEC)も追従したことで、2024年からは新型911 GT3 Rを含めて、GT3レーシングカーが、初めてル・マン24時間レースに参加できるようになった。

ポルシェ・モータースポーツの911 GT3 R担当プロジェクトマネージャーのセバスチャン・ゴルツは、新型の開発目標について以下のように説明する。

「先代モデルで、私たちはある意味GT3規程における大正解を引き当てました。だからこそ、その後継モデルのハードルが非常に高くなったのです。その課題はスピードアップではなく、BoPによって設定された性能範囲内でいかにパフォーマンスを発揮させるかにありました」

「カスタマーチームにとっては、戦闘力をキープした状態で、より長い期間このクルマを使い続けられることが重要です。そのためには耐久性が求められますし、同時にドライバビリティの向上にも重点を置きました。新しい4.2リッターボクサー6エンジンの使用可能回転域の幅広さ、より安定した空力特性、そしてリヤタイヤへの負担低下に反映されています。これによりタイヤのポテンシャルをより長く持たせることが可能になりました」

最高出力565psを発揮する自然吸気ボクサー6

ポルシェの最新カスタマー向けレーシングカー新型「911 GT3 R」のエクステリア。
4.2リッターに拡大された自然吸気ボクサー6エンジンは、最高出力565psを発揮。各シリーズによって異なる性能調整(BoP)に対応すべく、余裕をもったスペックが与えられた。

新型911 GT3 Rのコアとなるのが、タイプ992のパワーユニットをベースとした自然吸気ボクサー6だ。911 RSRと同様、911 GT3 Rの排気量は3997ccから4194ccへと5%拡大。これにより最高出力は565ps(416kW)にまで向上している。しかし、重視されたのはピークパワーではなく、全回転域におけるパワーとトルクカーブの最適化だった。この結果、ジェントルマンドライバーでも扱いやすいパワーユニットが完成したという。

アンダーボディディフューザーの設置スペースを確保するため、先代911 GT3 Rと比較してエンジンは5.5度前方に傾けられて搭載。オルタネーターやエアコンコンプレッサーなどの補機ユニットは、エンジンとギヤボックス前方のスペースへと移動した。

足まわりに関しては、多くのコンポーネントが、より高性能なレーシングカー「911 RSR」からキャリーオーバーされた。フロントはダブルウィッシュボーン、リヤはマルチリンクを採用。改良が施されたKW製ショックアブソーバーは5段階の調整が可能となっている。

ホイールベースは2459mmから2507mmに延長。これにより駆動輪であるリヤタイヤへの負荷が軽減され、特に耐久レースの長時間スティントにおいて、タイヤ性能が大幅に向上した。ブレーキはキャリパーとディスクともに、AP製が採用されている。

スワンネック・マウントを採用したリヤウイング

ポルシェの最新カスタマー向けレーシングカー新型「911 GT3 R」のエクステリア。
カーボンファイバー製大型リヤウイングは、GTマシンではトレンドとなっているスワンネック・マウントを採用。これにより、ウイング下部を流れるエアフローが最適化された。

新型911 GT3 Rは、ワンメイクシリーズ用の「911 GT3 カップ」に続き、現行のタイプ992をベースに開発。アルミニウムとスチールが組み合わせられた軽量ボディは、市販モデルの特徴を活かして製造された。ボンネット、エンジンカバー、ドア、サイドパネル、リヤウィング、ルーフは、軽量・高剛性のカーボンファイバー製。前後フェンダーは、アラミド繊維が使用されている。 

エアロダイナミクスは911の伝統的なスタイルと踏襲しつつ、高い効率性が重視された。そのキーとなるのが、フロントアクスルの前部に設けられた高めに配置されたアンダーボディだろう。今回、GT3マシンとしては初めて曲線を描いたアンダートレイと、新形状のリヤディフューザーを導入。この組み合わせにより、ドラッグを増加させることなく、ダウンフォースレベルが向上した。

リアウイングはGTマシンのトレンドとなっているスワンネック・マウントを採用。これにより、ウィング下部のエアフローが最適化され、エアロダイナミクス効率が大幅に向上している。

最適なポジションを取れるドライバーズシート

ポルシェの最新カスタマー向けレーシングカー新型「911 GT3 R」のコクピット。
先代と比較し、よりボディ中央に配置されたドライバーズシート。これにより、あらゆる体型のドライバーが理想的なシートポジションを取れるようになった。

安全性の面でも、新型911 GT3 Rは妥協のないアプローチが採り入れられた。ドライバーズシートはボディ中央部に移動。あらゆる体型のドライバーが、改良されたロールケージと新開発のFIA規格サイドインパクト保護デバイスの効果を最大化できる、より理想的なシートポジションを取れるようになった。

今回、6点式セーフティハーネスを改良。特殊なスロープを介して素早くハーネスをスライドさせることで、ピットストップ時のドライバー交代時間が約1秒短縮されている。ステアリングホイールの形状も、操作性を向上すべく変更。10.3インチのディスプレイは911 GT3 カップでの成功を受けて、911 GT3 Rにも導入された。

高性能LEDヘッドライトは、LMDh規程で開発された「963 プロトタイプ」用のテクノロジーが流用された。これにより、特にナイトレースにおいて、先代モデルを大きく上回る広い範囲の照射が可能になった。

ポルシェ・モータースポーツは今回の発表に合わせて、2023年シーズンに向けた新型911 GT3 Rの販売を開始。ベース価格51万1000ユーロ(税別)に、参戦シリーズに合わせたオプション装備を加えた価格で提供される。

ポルシェ 911 GT3 Rを動画でチェック!

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ゲンロクWeb編集部

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