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ライトウェイトスポーツの頂点を競う素晴らしきライバル
約半世紀の時を経た今もなお、クルマ好きのバイブルとして人気の高い『サーキットの狼』。主人公の“風吹裕矢”と共に活躍を果たす「ロータス ヨーロッパ」は、軽量さを武器にフェラーリやランボルギーニといったハイパワーモデルたちを打ち負かす。その物語の礎は作者である池沢早人師先生の実体験によるもので、先生は当時の相棒を務めたロータス ヨーロッパへの思いを募らせる。
そして、ロータス ヨーロッパの直系たるエリーゼはかつて池沢先生も「21世紀の狼」であると太鼓判を押していたが、新たにその座をうかがう新鋭が現れた。それがアルピーヌ A110Sだ。完全に競合する2台のライトウェイトを箱根で乗り比べ、両車のパフォーマンスをジャッジする。
軽量さが際立つ本家ロータスの最終兵器!
箱根の峠に姿を見せた2台のライトウェイトスポーツ。アルピーヌA110Sとロータス エリーゼ スポーツ220IIは個性的なスタイルを競い合うように佇んでいた。究極ともいえる2台のスポーツカーを同時に試乗できる至福の時が訪れる・・・。
前回のレポートでもお届けしたように、フランス生まれのA110SはハイブリッドやEVという新たな時代の方向性を模索する近代自動車のなかに於いては稀有な存在であり、「操る楽しさ」や「走る喜び」といったクルマ本来の魅力を感じさせてくれる一台であった。車両重量も1110kgと、電子機器と安全装備、贅沢な内装によって肥大化した最新モデルたちとは逆行する軽さを武器に、292psを誇るパワーユニットの威力を存分に発揮。「現代に蘇ったライトウェイトスポーツ」の称号が嘘ではないことを証明してくれたのである。
エリーゼは初期モデルとは比較にならない進化を遂げていた!
一方、今回のライバルとして登場したロータス エリーゼ スポーツ220IIは、ボクが愛したロータス ヨーロッパのDNAを継承する由緒正しいモデルであり、バックヤードビルダーとしてクルマを生み出してきたコーリン・チャップマンの意志を強く受け継いでいる。実はボクは1996年頃にエリーゼのフェイズ1を手に入れたことがあり、その俊敏な走りを楽しんでいた。今回のモデルは2018年にパリ・モーターショーでデビューを飾ったフェイズ2をベースに熟成を重ねたモデルである。当時を思い出しながら試乗してみたのだが、エンジン、走り、エキゾーストノート・・・その全てに於いて初期モデルとは比べ物にならない進化を遂げていたことに大きな衝撃を受けた。
まず気が付いたのが、アルミ素材を剥き出しにした内装が少しばかり豪華になったことだ。ドアやサイドシルにレザーが張られてはいるものの、クッション材などは使用されず軽量化とのバランスを考えた最低限の妥協にロータス社の苦悩が見受けられる。
どれをとっても魅力的なデザインで構成し、走りに徹した潔さが身上
試乗したエリーゼ スポーツ220IIは6速MT仕様となり、ショートストロークのシフトはコンソール部分のリンケージが見えるメカニカルな演出が男心を刺激してくれる。ただし、できることならこのコンソールの高さをあと5cmほど高くしてくれたら、コーナリング中のニーレストとして機能してくれたはず。アクセル側は太いサイドシルがニーレストとして機能していることを考えたら少しばかり残念な部分である。
スタイルはフェイズ1と比較するとシャープさを増したデザインへと進化を遂げているが賛否は両論。いまだにフェイズ1を支持するファンも多いようだが、個人的には決して嫌いではない。運転席に座ると左右に盛り上がって見えるマッシブなフロントフェンダーや、サイドを大きく抉ったエアインテーク、緩やかな曲線を描くフロントスクリーンとAピラー、ディフューザーとスポイラーを装備したリヤセクション・・・どれをとっても魅力的なデザインで構成され、走りに徹した潔さがドライバーを高揚させる。アンダーボディはしっかりとフラット化されディフューザーの効果と相まって高速走行時の安定性を実現しているというのも見逃がせないポイントだ。
A110Sとエリーゼの同時試乗で痛感したことは「感覚の曖昧さ」
今回のアルピーヌ A110Sとの同時試乗で痛感したことは「感覚の曖昧さ」だ。前回の試乗ではA110Sの1110kgの軽量さによるシャープなドライビングに驚嘆したが、エリーゼ スポーツ220IIの、より軽量な924kgによるアドバンテージには更なる衝撃を受けた。
共に1.8リッターの4気筒DOHCエンジンをミッドシップに搭載し、A110Sはターボ、エリーゼはスーパーチャージャーと過給器の違いはあるものの基本的なレイアウトは共通。しかし性格の違いは歴然であり、A110S単体で試乗した時にはその軽量さが際立ったものの、エリーゼの軽量さはさらに別次元の走りを見せつけてくれた。まさに「ハンドリングマシン」と言うべき操作性は、ハンドリングのダイレクト感やハードさとしなやかさを持つ足まわりと共鳴することでダイレクトなドライブを提供してくれる。
カウンター狙いのA110S、リズミカルに繰り出すジャブのエリーゼ
絶対的なパワーは感じられないが、オールファイバーボディとアルミ製のモノコックボディを組み合わせた軽さによるパワーウェイトレシオが俊敏な走りを支えていることは間違いない。パワーとウェイトが絶妙なバランスを見せ、ワインディングならばハイパワーのスポーツカーに後塵を浴びせることができるはずだ。
この感覚はボクが描いた『サーキットの狼』の原点でもあり、ロータス ヨーロッパで味わったライトウェイトスポーツ本来の楽しさでもある。両モデルの走りをボクシングで表現するならば、A110Sがカウンター狙いの鋭いストレート、エリーゼがリズミカルに繰り出す軽快なジャブの連打のような感覚だ。共に絶妙なタイミングでコーナーを駆け抜けるのだが似て非なる爽快感でドライバーを誘惑する。
ただし、エリーゼ スポーツ220IIがA110Sを凌駕しているかと問われれば、決してそうではない。A110Sと比べ軽量さによるアドバンテージはあるものの、絶対的なドライバビリティは互角だと思う。もちろん、性格の違いはオーナーのライフスタイルにも影響を与える。A110Sは日常を支える快適さと俊敏さを兼ね備えて普段使いも問題ないが、エリーゼはスポーツドライブに特化できる環境を求めるはずだ。
A110Sは高い協調性をもち、エリーゼは非日常への渇望を満たす!
両モデル共に2シーターということもあり、ファミリーカーには適さないものの日常でのドライブや買い物に於いてはA110Sに軍配が上がる。しかし、セカンドカーとして考えるならばエリーゼの魅力は限りなく大きい。ロータス エリーゼ スポーツ220IIは「走りに特化した潔さ」が際立つクルマであり、日常の快適さを捨てたことでライトウェイトスポーツとして魅力を研ぎ澄ますことができたのだと思う。
しかし、この類稀なる名車は1995年に登場してから既に四半世紀を生き抜いた長寿モデルとなり、生産中止の噂も流れ始めている。本当の意味でのライトウェイトスポーツを手に入れたいなら、今が最後のチャンスになるかもしれない。
TEXT/並木政孝(Masataka NAMIKI)
PHOTO/森山良雄(Yoshio MORIYAMA)
【SPECIFICATIONS】
アルピーヌ A110S
ボディサイズ:全長4205×全幅1800×全高1250㎜
ホイールベース:2420㎜
車両重量:1110㎏(※グリトーネルマットのみ1120kg)
エンジン:直列4気筒DOHC 16バルブ+ターボチャージャー
総排気量:1798cc
最高出力:215kW(292ps)/6420rpm
最大トルク:320Nm/2000‐6420rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動動方式:MR
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前後320mm
タイヤサイズ:前215/40R18 後245/40R18
最高速度:260km/h
0-100km/h加速:4.4秒
WLTCモード燃費:12.8㎞/L
車両本体価格(税込):889万円
ロータス エリーゼ スポーツ220II
ボディサイズ:全長3800 全幅1720 全高1130mm
ホイールベース:2300mm
車両重量:924kg
エンジン:直列4気筒DOHC16バルブ+スーパーチャージャー
総排気量:1798cc
最高出力:162kW(220ps)/6800rpm
最大トルク:250Nm/4600rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前後288mm
タイヤサイズ:前195/50R16 後225/45R17
最高速度:233km/h
0-100km/h加速:4.6秒
車両本体価格(税込):682万円
【問い合わせ】
アルピーヌ コール
TEL 0800-1238-110
ロータス コール
TEL 0120-371-222
【関連リンク】
・アルピーヌ・ジャポン公式サイト
https://www.alpinecars.jp
・エルシーアイ 公式サイト
http://www.lotus-cars.jp/