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Porsche 911 GT3 RS Weissach Package
ナナサンカレラから続くRSの系譜
911カレラ RS 2.7、通称ナナサンカレラが1972年のパリショーでデビューして以来、ポルシェにとって“RS”の2文字は特別な存在であり続けてきた。1984年の911 SC RS、1991年の964型911 RS 3.6がこれに続き、2003年からは911 GT3をベースにしたRSモデルが継続的に登場している。996型ベースに始まり、2006年には997型、2009年に997.2型、2011年にはその4.0モデルがデビューし、2015年に991型、そして2018年には現行の991.2型の911 GT3をベースとしたRSモデルが誕生している。
ナナサンカレラから受け継がれる特別なRSの系譜。その新しいページに加わったのが、2022年8月17日にデビューした992型911 GT3 RSだ。
レース由来の空力テクノロジーを最大限投入
911 GT3 RSは、レースフィールドで鍛え上げられた空力テクノロジーを最大限に活用している。たとえば、ル・マンでクラス優勝を果たした911 RSR由来の「セントラルラジエーターレイアウト」を採用。従来搭載されていた3基のラジエーターに代わり、フロントのラゲッジコンパートメントに大型のセンターラジエーターを配置。それにより、サイドに生まれた余白スペースへ、高度な可変エアロダイナミクスデバイスを搭載することが可能になった。
リヤに搭載した巨大な上下分割式のスワンネック式リヤウイングは、油圧により上部の角度が調整可能になっている。これにより、ポルシェ市販車としては初となる「DRS」機能を実現。「いざ」というときにはF1でお馴染みのオーバーテイクウイングの恩恵に授かることができる。
ダウンフォース量はGT3比の3倍
フロントのスプリッターからフロントフェンダーのルーバー、ルーフ上のフィン、サイドブレードといった満載の“鎧”が生み出すダウンフォースは、現行GT3比でじつに3倍。200km/h走行時で409kg、285km/hでは860kgものダウンフォースを生み出すという。
最新のレーステクノロジーを投じた空力デバイスにくわえて、搭載する4.0リッター水平対向6気筒エンジンの最高出力も、GT3比でプラス15psの525psにパワーアップ。サスペンションや制御システムにも特別チューンを施すとともに、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を積極的に用いて軽量化も徹底している。ちなみに、これだけ大型の空力デバイスを複数搭載していながら、車重はGT3のPDKモデルよりわずか15kg増の1450kgに留められている。
見逃せない有償オプションの存在
当代随一のアスリート911として仕立てられた本車には、さらにその性能を押し上げる「ヴァイザッハ パッケージ」が設定されている。この有償オプションの内容がかなり魅力的。最新の911 GT3 RSを購入するなら、選ばぬ手はないメニューとなっている。
ヴァイザッハ パッケージを選択すると、フロントボンネット、ルーフ、リヤフェンダーの一部、そしてエクステリアミラーのアッパーシェルがカーボンファイバー製に。フロント&リヤのアンチロールバー、リヤのカップリングロッド、リヤアクスルのシアーパネルはCFRP製となる。
さらに、無償オプションの「クラブスポーツパッケージ」に含まれるスチール製ロールケージが、本パッケージでは初のCFRP仕様となる。これにより、スチール比で6kgの重量軽減を実現している。
本国でのパッケージ価格は邦貨約500万円
また、PDKにはモータースポーツ由来のマグネット技術を採用したマグネシウム製パドルシフトを装着。プレッシャーポイントとクリック感がより明確になり、より確実なギヤチェンジが可能になる。さらに、ヴァイザッハ パッケージならば8kg軽いマグネシウム製鍛造ホイールも装備できる。かように広範囲な施策により、クラブスポーツパッケージを装着した911 GT3 RS比で、22kg以上の軽量化を実現しているという。
ヴァイザッハ パッケージは、911 GT3 RSが本来持つポテンシャルを最大限引き出すために設定されたオプションといえる。ちなみに、パッケージ価格はドイツ本国では3万6390.2ユーロ(約496万円)。参考までに、本国での車両価格は22万9517ユーロ(約3130万円)である。