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Volkswagen GEN.TRAVEL
完全自動運転時代のMPV
フォルクスワーゲンが2022年9月に発表したコンセプトカー「GEN.TRAVEL」は、本当の意味でのMPV(Multi Purpose Vehicle)といえるかもしれない。
ガルウィングドアを備えた画期的なスタイリングが目を惹く「GEN.TRAVEL」は、自動運転レベル5が実現する時代の“新しいクルマの姿”の提案だ。運転にまつわるすべての操作を機械側が担当することを想定しているため、重視されるのは、車内で乗員がいかに自由に過ごすことかできるかどうか。
リビングや会議室、ベッドルームにも変身
「GEN.TRAVEL」は最大で4人の乗員に対応。シートレールが特殊な構造になっており、用途にあわせて様々なシートやレイアウトに変更することができる。4座を向かい合わせに配置して、中央に大きなテーブルを置けばリビングや会議室に変身するし、フルフラットまでリクライニングできるシートを2座設置すればベッドルームにも変身する。
ちなみに、詳細は公開されていないものの、寝そべっていても最大限の安全を確保する「革新的な拘束装置」を備えているという。もちろんチャイルドシートを取り付けることも可能。長距離移動の退屈な時間も、AR(拡張現実)プロジェクションを使って映画やゲームといった様々なコンテンツを楽しむことができる。
乗員の健康状態に配慮する照明システム
照明にも先進のテクノロジーを投入し、作業効率を高めたり、乗り物酔いを防ぐような環境を作り上げる。とりわけユニークなのが、脳から分泌される睡眠ホルモンのメラトニンに働きかける照射モードを備えるというアイデア。健やかな眠りと爽やかな目覚めをサポートすることで、乗員の健康にも配慮するというわけだ。
持続可能性に配慮するべく、乗員が触れる生地や樹脂などには、すべてリサイクル素材や天然素材を使用している。
スーパーカーのようなガルウィング
自由な発想がてんこ盛りの「GEN.TRAVEL」はエクステリアも独創的。キャビン上部が巨大なガラスで覆われる構造になっていて、まるで航空機のキャノピーのよう。また、乗降性を考えた結果、ドアはスーパーカーを思わせるガルウィングタイプを採用している。
なお、車両のピッチングやロールを検知して、常にボディを水平に保つアクティブボディコントロール機能も採用。もちろんAIも搭載しているので、常に最適なルートやスピード、ドライビングを選択し、できるだけ航続距離を伸ばしながら快適な移動をサポートするという。
ガルウィングのミニバンというと、かつてランボルギーニとベルトーネが提案したコンセプトカー「ジェネシス」が思い出される。また、巨大なガラスでキャビンを覆うという点では、ランボルギーニ伝説のコンセプトカー「マルツァル」も彷彿させる。ジェネシスは残念ながら実車化しなかったものの、マルツァルはエスパーダというカタチで、量産車にそのモチーフが見事に受け継がれた。
『GEN.TRAVEL』は、新しいコンセプトと新しい機能のためのスタディモデルであり、客の反応を見るための実験機だ。フォルクスワーゲンは「研究結果に基づき、おって個々の機能が量産車に移行される可能性がある」と主張している。さて、キャビンの自在なレイアウトなのか、ガルウィングなのか、はたまた健康状態に配慮する照明なのか。どの機能がいち早く量産車に採用されるだろうか。