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たいていの繋ぎ方にきちんと対応
ウォールナットのエンクロージャにブルーのバッフル板、高域ドライバーはホーン型設計と絵に描いたようなJBLルックスを踏襲するこの製品。だが、その中身は最新技術が詰まっている上に、使いこなしに優れる実に優等生な製品だ。とにかく誰でも簡単に良い音が楽しめる。「価格が高いな」と感じる人もいるだろうから先に書いておくが、約22万円(実勢価格)でこれだけの完成度が高い音は、コンポーネントの組み合わせではほぼ得られない。実はすごくお買い得なHiFiシステムだ。
見た目はクラシカルだが、ネット接続はもちろん左右スピーカーの接続すらワイヤレス。幅210mm、奥行き235mmとパソコンの左右に配置するには大きいが、左右それぞれに必要な電源コンセントさえ確保すれば、あとは一切のケーブルが不要となる。
音を鳴らす方法は6種類。Bluetooth、Chromecast、AirPlay2、USB DAC、アナログオーディオ、デジタルオーディオ(S/PDIF)に対応する。難しく考える必要はないが、たいていの繋ぎ方にきちんと対応できるということだ。パワーアンプも内蔵されているため、この製品以外に音楽を楽しむ上で必要なものは、スマートフォンかパソコンぐらいしかない。
オーディオ製品の煩わしさがない高音質スピーカー
しかも、置き場所に対して極めて寛容だ。低域を補完するバスレフ構造を採用しているが、ポートは後ろではなく前を向いており、設置する壁との距離を意識しなくていい。それこそ本棚にも設置することも可能だ。本棚設置や左右壁との隣接時は低域が反射して膨らむが、その場合の設置調整も-3dBスイッチを入れるだけ。25mmコンプレッションドライバーが出す音は立ち上がりが速く、極めて明瞭だが、適切に指向性を拡大するHDIホーンにより、ナチュラルかつ広範囲に音が広がる。コンプレッションドライバーとは、空気を圧縮しながら音波を隙間から放出する形式なのだが、生産管理や設計が難しく現在はJBLしか作っていない。
抜けがよく小気味よい音に組み合わせられている133mmウーファーも、低域を欲張らず、高い応答性を感じさせる作りで、バランス良い音楽がポンと置いただけで楽しめるのだ。ワイヤレスかつアンプ内蔵という手軽さも加わり、オーディオ製品の煩わしさがないところは最大の美点だ。
この製品だけで完結するシンプルな構成
大音量では大きなスケールで鳴り、小音量でも音像が明瞭。とりわけヴォーカルの正確な描写はうっとりするが、これが映像作品のセリフともビタっとハマってくれるから、テレビなどと接続しておくと映像作品のセリフが聞き取りやすくなる。133mmウーファーだけに低域もかなり低いところは出ないが、低音のボリューム感を出す演出は一切されていない。物足りないと感じる楽曲もあるかもしれないが、むしろ得手不得手なく描き切る実力派であることを、使い込むほど実感できるはず。
レイアウトフリーかつ、この製品だけで完結するシンプルな構成、そして本格的なサウンドを考えれば改めて言うけれどバーゲン価格。音楽好きなら一度は体験してほしい名機だ。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2023年 3月号
PRICE
オープン価格
評価
デジタル部、DAC、アンプ、スピーカー。音楽再生に関わる大部分がひとつの製品になっているため、極めてまとまりの良いコントロールされた音を楽しめる。新時代の小型スピーカーだ。
コストパフォーマンス:4
機能:3
使いやすさ:5
設置性:5
音質:5
【問い合わせ】
ハーマンインターナショナル コールセンター
TEL 0570-550-465