フォルクスワーゲンが新型パルスインバータと熱管理システムを自社で開発

「電動パワートレイン全体を自社開発」フォルクスワーゲン・グループのコストと効率性追求の決意

現在、フォルクスワーゲン・グループ・テクノロジーが開発を続ける、統合一体型熱管理モジュールが、「テックデイ2023」において公開された。
現在、フォルクスワーゲン・グループ・テクノロジーが開発を続ける、EV用統合一体型熱管理モジュールが、「テックデイ2023」において公開された。
フォルクスワーゲン・グループ・テクノロジーは、「テックデイ 2023(Tech Day 2023)」において、バッテリー、充電、電子部品など、今後の電気自動車の技術革新に関するプレゼンテーションを行った。EVに搭載される様々なコンポーネントを自社開発することで、フォルクスワーゲン・グループは効率性とコスト面のスケールメリットを拡大させようとしている。

スケールメリットを目指すフォルクスワーゲン

フォルクスワーゲンを筆頭に、電動化を推し進めるフォルクスワーゲン・グループ。電動モデルにおいて必要とされる電気モーターやバッテリーだけでなく、パルスインバーターや熱管理システムももグループ内で一括開発することで、コスト面でのスケールメリットを目指している。
フォルクスワーゲンを筆頭に、電動化を推し進めるフォルクスワーゲン・グループ。電動モデルにおいて必要とされる電気モーターやバッテリーだけでなく、パルスインバーターや熱管理システムもグループ内で一括開発することで、コスト面でのスケールメリットを目指している。

「テックデイ 2023」のプレゼンテーションにおいて注目されたのは、フォルクスワーゲン・グループが開発する未来の電動駆動システムだった。現在、フォルクスワーゲン・グループはEVに搭載されるすべての主要コンポーネントの自社開発を目指しており、バッテリーや電気モーターだけでなく、パルスインバータや熱管理システムも自社で開発を続けている。

これらのコンポーネントが実用化するれば、フォルクスワーゲンの電動パワートレインは、すべて1社により提供されるため、約20%もの効率アップに加えて、コスト面で大きなメリットがあるという。フォルクスワーゲン・グループの取締役会長、オリバー・ブルーメは次のように、EV開発におけるアドバンテージについて次のように説明する。

「フォルクスワーゲン・グループとそのブランドは、一流の製品と高い技術の象徴となっています。グループの規模とレンジ、そしてグループ内に結集された専門知識により、私たちは非常に大きなスケールメリットを活用することができます。これがお客様に利益をもたらし、私たちのクルマをより良い存在にしているのです」

フォルクスワーゲン・グループの技術担当取締役のトーマス・シュモールは、次のように付け加えた。

「私たちの目標は、電動モビリティにおいても技術的なリーダーシップを発揮することにあります。そのため、グループ全体が持つ能力を活かし、バッテリーセルや電気モーターだけでなく、パルスインバータや熱管理システムの開発も行なっています。将来的には、フォルクスワーゲン・グループは、最適化された完全な電動駆動システムを提供できる、世界で唯一の自動車メーカーとなるでしょう」

大幅にコンパクト化される熱管理モジュール

現在フォルクスワーゲン・グループが開発する統合一体型熱管理モジュール(左)と、MEBの熱管理システム(右)。パイプ類がまとめられたことで、大幅にコンパクト化されている。
現在フォルクスワーゲン・グループが開発する統合一体型熱管理モジュール(左)と、MEBの熱管理システム(右)。パイプ類がまとめられたことで、大幅にコンパクト化されている。

パルスインバータは電気駆動系の頭脳であり、効率と性能に大きく関わってくる基幹コンポーネント。フォルクスワーゲンが独自設計した初のパルスインバーターは、ハードウェアとソフトウェアをすべてゼロから設計し直すことになった。

このパルスインバータは、モジュール形式で開発されたことにより、エントリーレベルの電動パワートレインから、最高出力500kW(680PS)以上を発揮するスポーツモデルまでカバー。さらに、将来的には、それ以上の大きさとパワーを持つ大型商用車にも実装することが可能だという。現在、この技術は量産化に向けて開発が続けられており、すでに次世代MEB(Modularer E-Antriebs Baukasten:モジュラー・エレクトリック・ドライブ・マトリックス)に導入される予定だ。

また、熱管理システムに関しても、フォルクスワーゲン・グループは全く新しい技術ソリューションに取り組んでいる。現在使用されている電動パワートレインでは、多数の個別機器とホース接続が使用されているが、将来的には、これらに代わって、極めてコンパクトな統合一体型熱管理モジュールが使用される予定だ。高電圧バッテリーを含め、空調全体を一括制御するため、車両の航続距離と急速充電機能に大きな影響を与え、大幅な軽量化により堅牢かつ効率的な機器になるという。

共通バッテリーセルを80%の車種に採用

フォルクスワーゲンは、共通バッテリーセル「ユニファイド・セル」の開発を進めており、2025年から導入を開始し、2030年までに80%の車種に採用するとしている。
フォルクスワーゲンは、共通バッテリーセル「ユニファイド・セル」の開発を進めており、2025年から導入を開始し、2030年までに80%の車種に採用するとしている。

フォルクスワーゲン・グループ・テクノロジーは、バッテリー/充電/電気コンポーネントの分野におけるグループ全体の活動を束ね、グループ全体のテクノロジーサプライヤーとして、フォルクスワーゲン傘下にある各ブランドをサポートする。この取り組みには、子会社のバッテリー企業「PowerCo」、充電・エネルギー企業「Elli」も参加している。

今回紹介したフォルクスワーゲン・グループを横断した取り組みは、2025年以降、フォルクスワーゲン・グループの全車両に搭載され、バッテリー技術における新たなベンチマークとなる、共通バッテリーセル「ユニファイド・セル(Unified Cell)」も含まれる。

フォルクスワーゲン・グループは、このユニファイド・セルを2030年までに80%の車両で採用する計画を発表。これにより、バッテリーにかかるコストを50%も削減することが可能になり、より購入しやすい価格でEVを販売することが可能になるという。

スウェーデン北部の雪道を舞台に、寒冷地テストを行う「フォルクスワーゲン トゥアレグ」改良新型。

非公開: 「VWマークが光る?」改良新型フォルクスワーゲン トゥアレグのスウェーデン寒冷地テストで明らかに

フォルクスワーゲンは、2023年夏に投入を予定しているフラッグシップSUV「トゥアレグ」改良新型の寒冷地テストを実施し、その様子を公開した。2018年にデビューした3代目トゥアレグは、欧州で販売されるフォルクスワーゲン・モデルとして初めてリヤにイルミネーション・ロゴを採用する。

キーワードで検索する

著者プロフィール

ゲンロクWeb編集部 近影

ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…