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東京オリンピックに導入された最先端バイク
ロータス・エンジニアリングは、2024年に開催されるパリ・オリンピックに向けて、自転車部品メーカーのホープ・テクノロジー社と新型トラックバイクの開発を進めている。英国サイクリング・ナショナルチームとの協業では、ロータス・エンジニアリングのテクニカルサービス部門が保つ、デザイン、製品コンセプトの決定、先進素材の選出など、高い技術力が活かされることになる。
ホープ・テクノロジーとロータス・エンジニアリングが共同開発したトラックバイクは、2021年に開催された東京オリンピック、2022年のコモンウェルスゲームで使用。このトラックバイクには、ロータス・エンジニアリングが長年培ってきたコンポジット素材技術、エアロダイナミクスへの深い知見が生かされている。
英国サイクリング・ナショナルチームとのパートナーシップは、ロータス・エンジニアリングがこれまで手がけてきた様々な企業や団体とのコラボレーションの一部に過ぎず、そのほとんどはクライアントの要望により機密事項として扱われてきた。五輪に向けたトラックバイクの開発は、プロジェクトの存在が明らかにされた数少ない一例だと言えるだろう。
バイク開発の起点となった1992年バルセロナ五輪
ロータス製トラックバイクの歴史は、1992年のバルセロナ・オリンピックで使用された「ロータス タイプ 108」にまで遡ることができる。 タイプ 108を使用したイギリスのクリス・ボードマンが4000mパシュートで金メダルを獲得。さらに、ボードマンはタイプ108をベースに開発されたタイプ110で、1994年のツール・ド・フランスのプロローグでも勝利を手にしている。
当時も現在も、バイクの開発においては、ロータスは最大の強みである「軽量化」「最先端素材」「エアロダイナミクス」へのアプローチに集中している。タイプ108/タイプ110から30年の時を経て何が変わったのか、ロータスのチーフ・エアロダイナミシストであるリチャード・ヒルは、次のように説明してくれた。
「バルセロナ・オリンピック当時は、速く走るため、ひたすら空力に特化したバイクを開発することが目的となっていました。ただ、自転車競技においては、バイクとライダーというふたつの要素があります。この2者が一体となって、空気を引き裂いて移動していくのです。それこそが、東京オリンピックに向けたバイク開発で行ったアプローチです。これは2024年のパリ・オリンピックでも続くことでしょう」
ヘセルの最新設備で開発されるトラックバイク
現在、ロータスが保有する、英国・ヘセルのデザインスタジオは、現代的な専用施設を持ち、敷地内の他のエリアと同様に、近年かなりの投資が行われてきた。特にバーチャルリアリティ/拡張現実(VR/AR)施設と、3Dプリンティング設備は最新鋭の機器が揃えられている。
また、デザイナー、デジタルモデラー、スタジオエンジニアのためのワークスペースとサーフェスプレートを統合した、3つのセキュアスタジオも存在。4メートルのスクリーンを備えたプレゼンテーションルームは、機密保持が徹底されており、クライアントとのミーティングにも活用されている。
この最新設備を舞台に、ロータス・エンジニアリングは、ホープ・テクノロジー、そして英国自転車競技ナショナルチームと協力。2024年夏開催されるパリ・オリンピックで勝利するため、トラックバイクの開発を進めている。