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Renault 5
9台のプロトタイプを使用してテストを実施
ルノーのベストセラーとして高い人気を誇った「5(サンク)」が、BEVとして復活を果たす。現在、ルノーは5のプロトタイプ「ミュール(Mules)」を9台製作し、実走テストを行っている。
ミュール試作プロトタイプは、プラットフォーム、パワートレイン、バッテリーなど、市販仕様のコンポーネントが搭載されており、現行クリオやかつての“サンク”を思わせるエクステリアを採用。エキゾーストパイプが存在せず、代わりに充電用ポートが配置されている。
2022年から2023年にかけて、ミュールは静的/動的な調整と耐久テストを交互に行った。この間、スウェーデンの北極圏に近いアルビッツヤウルの氷雪路、パリ周辺のラルディ、ノルマンディーのオーブヴォワにある、ルノーのテクニカルセンターのテストトラックで周回を重ねている。
オーブヴォワのテクニカルセンターでは、カスタマーが遭遇するあらゆる負荷を再現することが可能。面積613ヘクタールの敷地内には、最長60kmを含む35種類のトラック、42種類のテストライン、2基の風洞施設、18基の腐食槽が存在している。すべての施設が深い森の中に配置されているため、発売前のプロトタイプをパパラッチの目から守っている。
「CMF-B EV」採用によるアドバンテージ
新型「5」で初採用される小型BEV専用プラットフォーム「CMF-B EV」は、クラス最高の性能を提供しながら、このセグメントにおいてライバルを圧倒する性能を目指して開発。現行クリオやキャプチャーのベースとなった「CMF-B」プラットフォームから70%のパーツが流用されており、コスト面でのアドバンテージを持つ。フル電動モデル「ゾエ(ZOE)」と比較すると、製造コストが30%以上も安くなったという。
「CMF-B EV」は電動モデルに最適化されたシャシーと、フロア下に設置されたバッテリーによる低重心化により、よりダイナミックなパフォーマンスを実現した。さらに、モジュール式プラットフォームを採用したことで、トレッドやホイールベースを調整することが可能。バリエーションに富んだBEVの製造・開発ができるようになった。
BEVセグメント・プロダクト・パフォーマンス・ディレクターのデルフィーネ・デ・アンドリアは、「CMF-B EV」プラットフォームの優位性について次のように指摘する。
「この『CMF-B EV』プラットフォームの採用によって、これから登場する新型ルノー5は、Bセグメントにおいて大きな競争力を保ちながら、真のドライビングプレジャーをアピールすることになるでしょう。製品の観点から見ても、大きなアドバンテージになることは間違いありません」
大幅な軽量化による走行性能の向上
「CMF-B EV」プラットフォームは、小型化されたパワートレインに対応して、よりコンパクトなボディサイズを実現した。搭載される電気モーターは、ゾエやメガーヌ E-Tech エレクトリックに搭載され、高い実績を持つ巻線界磁形同期電動機(EESM)をベースに開発。このモーターは、永久磁石モーターよりも出力が高いだけでなく、レアアースを使用しないため、生産コストと環境負荷が大幅に低くなる。
ルノー 5に搭載される電動パワートレインは、3つの主要コンポーネントを組み合わせた、新開発の内部アーキテクチャを採用。DC/DCコンバーター、新開発バッテリー充電システム、配電を管理するアクセサリーボックスという、3つのコンポーネントをひとつにまとめたことで、大幅な小型・軽量化を実現している。これによりゾエから約20kgも軽量化され、効率性と走行性能の向上を達成した。
新開発バッテリーパックは、ゾエに搭載されていた12個の小型モジュールから、4個の大型モジュールに変更。よりシンプルな構造となったことで、15kgもの軽量化を実現した。また、バッテリーパックをプラットフォーム内に収めたことで、より高い保護性能を確保し、ボディ剛性を高め、静粛性やドライビングプレジャーを向上させている。