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ケーニグセグとは
ケーニグセグとは、創業者のクリスチャン・フォン・ケーニグセグが自身の名を冠して立ち上げた自動車メーカー。創業は1994年。当時22才の青年だったクリスチャンは自身で考案した設計を元に、数少ない仲間とわずかな資金で車両をハンドメイド。2年で完成させたプロトタイプ「CC」は、当時最先端のカーボンボディとデタッチャブルルーフを採用していた。1997年のカンヌ映画祭でお披露目したセンセーショナルでユニークなスーパーカーは、多くの話題をさらっている。
それから数々の“ベスト記録”を打ち立てるハイパーカーメーカーとしてケーニグセグの名が世界に広く認知されるようになるまで、そう時間はかからなかった。いまでは著名人を含め、世界の大富豪を顧客にもつスーパーカーブランドへ成長し、1.7kmの滑走路が隣接する本社施設へプライベートジェット機で乗りつける顧客も珍しくない。極めて限られた台数のみが作られるケーニグセグ車は(安くても)2億円超えは当たり前のプライスタグを掲げるが、限られた生産台数分は即完売するのが通例となっている。
ケーニグセグの特徴的な3つのアイコン
垂直に開くディへドラルドアや着脱・収納が可能なルーフシステムなど、独創性あふれるスタイルがケーニグセグ流。個性派揃いのスーパーカーに囲まれても、「我こそケーニグセグ」という絶対的な存在感を主張する。そんなケーニグセグを特徴づけている3つのアイコンをご紹介したい。
エンブレムのモチーフはケーニグセグ家の紋章
ボンネットの中央に鎮座するケーニグセグのエンブレムは、ケーニグセグ家の紋章がモチーフになっている。ケーニグセグ車はキーフォブにもこのフォルムを用いていて、まるでエンブレムをそのまま持ち歩くようなデザインとなっている。ちなみにケーニグセグのキーフォブは大ぶりのサイズで存在感溢れるタイプとなっており、ダイヤモンドやゴールドで装飾することも可能。
実用性にも配慮したディへドラルドア
ケーニグセグがロードカー全車に採用しているのが、「ディへドラル・シンクロ・ヘリックスドア」。通称“ラプタードア”と呼ばれる機構で、オープン時は一旦ドアが外側へせり出してからドア後部が上方に向けて回転するように持ち上がり、最終的にはドア全体が垂直状態に固定されるというもの。狭い場所でも開閉が可能になるよう実用面を考慮して考えられた、いわばスーパーカー仕様のスライドドアのような機構といえる。
“幽霊”がマスコット!
ケーニグセグには紋章をモチーフにしたエンブレムの他に、もうひとつのアイコンが存在する。それが幽霊をモチーフにした「Ghost Squadron(ゴースト・スコードロン)」と呼ぶロゴ。どこか愛嬌を感じさせるこのマスコットのルーツを探ると、ケーニグセグが2003年に本社施設を移設した場所にヒントがある。スウェーデン南部のエンゲルホルムにある現在の本社施設は、元々スウェーデン空軍の基地として使用されていたもので、ここをホームベースにしていたヨハン・ロッド飛行隊が使っていたのがこのゴースト・ロゴなのだ。
ケーニグセグ3車種を比較|特徴・価格・最高速度
ケーニグセグが現在生産中、および生産を予定している基幹車種は「レゲーラ」「ジェスコ」「ジェメラ」の3モデル。それぞれの特徴や最高速度をまとめつつ、三車三様の最新スウェディッシュスーパーカーの個性を比較してみよう。ちなみに車両価格は非公表であり、またケーニグセグはカスタマーが望む様々なオーダーを受けつけ、またケーニグセグを購入するカスタマーはほぼ例外なく別注をかけているため、実際の車両価格は不明だ。
ケーニグセグ ジェスコ
ケーニグセグ ジェスコ(Koenigsegg Jesko)は、2019年3月のジュネーヴ・ショーで発表された125台限定の2シーターミッドシップマシン。名前の「Jesko」は、ケーニグセグ社の代表であるクリスチャン・フォン・ケーニグセグの尊父、ジェスコ・フォン・ケーニグセグに由来する。
お馴染みのカーボンモノコック製タブをベースに、自社製の5.0リッターV型8気筒DOHCツインターボエンジンを搭載。通常のハイオクガソリンを使用した場合の最高出力は1280hp、E85バイオエタノール燃料なら最高出力1600hpを発生する。そこにLST(ライト・スピード・トランスミッション)と呼ぶ独自開発の9速マルチクラッチトランスミッションを組み合わせ、最高速度は482km/hを標榜するというモンスターマシンだ。ジェスコの正式な車両価格は公表されていないものの、ジュネーヴでの発表時には海外メディアの多くが「およそ280万ドル(約3億円)」がスターティングプライス、と報じていた。
ケーニグセグ ジェスコのサイズ・スペック
ボディサイズ | 全長4610 全幅2030 全高1210mm |
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ホイールベース | 2700mm |
車両重量 | 1420kg |
エンジン | V型8気筒DOHC |
総排気量 | 5.0リッター |
ボア×ストローク | 92×95.25mm |
最高出力:ガソリン使用時[E85使用時] | 955kW(1280hp)/7800rpm[1195kW(1600hp)] |
最大トルク | 1000Nm/2700-6170rpm |
トランスミッション | 9速LST |
駆動方式 | RWD |
サスペンション形式 | 前後ダブルウィッシュボーン |
タイヤサイズ | 前265/35R20 後325/30R21 |
ケーニグセグ ジェメラ
2020年春に登場した、ケーニグセグ初の4シーターモデル「ジェメラ(Gemera)」。ドライサンプ方式の1987cc直列3気筒ガソリンツインターボエンジンに、3基の電動モーターを組み合わせるPHVハイパーカーであり、エンジン+モーターのシステム最高出力は1700ps、システム最大トルクは3500Nmに達する。4人乗車とそのラゲッジを載せた状態で、0-100km/h加速1.9秒という強烈な加速力を実現するという。また、燃費性能にも優れており、EVモードで50km、ハイブリッドモードで950kmの航続距離を確保。条件が揃えば最長1000kmまで走ることができるロングツアラーだ。最高速度は現時点(2021年9月)では未発表だが、「シングルギヤで0-400km/hまで加速できる」と資料に記載がある通り、400km/h超のパフォーマンスが期待される。
全輪駆動、全輪操舵、そしてトルクベクタリング機構を採用することで、圧倒的なパワーを余すことなくコントロール。レベル2相当の先進安全運転支援機構(ADAS)も装備するなど、グランドツアラーとしての快適性も重視した。ボディディメンションは全長4975×全幅1988×全高1295mmで、サイズ感としてはフェラーリの4座モデル「GTC4 ルッソ」に近い。ジェメラの生産台数は300台。やはり価格は未公表だが、英国の自動車メディア『top gear』は「170万ユーロあたり(約2億2000万円)」とレポートしている。
ケーニグセグ ジェメラのサイズ・スペック
ボディサイズ | 全長4975 全幅1988 全高1295mm |
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ホイールベース | 3000mm |
車両重量 | 1988kg |
エンジン | 直列3気筒ツインターボ |
総排気量 | 1987cc |
エンジン最高出力 | 440kW(600bhp)/7500rpm |
エンジン最大トルク | 600Nm/2000-7000rpm |
電気モーター | フロントアクスル駆動×1/リヤアクスル駆動×2 |
電気モーター最高出力 | 前:400bhp/後:500bhp |
電気モーター最大トルク | 前:1000Nm/後:500Nm |
システム最高出力 | 1700bhp |
システム最大トルク | 3500Nm |
ケーニグセグ レゲーラ
2015年のジュネーヴ・ショーで初公開された「レゲーラ(Regera)」は、2シーターのPHV車。5.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンに3基の電動モーターを組み合わせ、システム最高出力は1500hp超、システム最大トルクは2000Nm超を誇る。一方で車両乾燥重量は1420kgに抑え込んでおり、停止状態のスタートから400km/hに達するのに20秒かからないというから、その加速力は驚異的だ。
ちなみにレゲーラは2019年9月時点で、「0-400-0km/h」加速・停止記録の“世界新”を樹立。2017年に自らアゲーラRSで打ち立てた世界記録の33.29秒を1.8秒短縮する31.49秒のレコードタイムを打ち立てている。トップスピードの403km/h(250mph)まで変速せずに一気に加速するという圧巻の走りを見せつけた。しかも記録挑戦に使用されたレゲーラは完全な生産仕様であり、豪華な装備やシートもあえて取り払うようなことはしていない。唯一の変更点としては、ドライバーの安全のために組まれたロールケージと4点式ハーネスのみだった。レゲーラは80台のみの限定生産で、車両価格について英国自動車メディア『evo』の報道では「約150万ポンド(約2億2700万円)のプライスタグを掲げる」と示されている。
ケーニグセグ レゲーラのサイズ・スペック
ボディサイズ | 全長4560 全幅2050 全高1110mm |
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ホイールベース | 2662mm |
車両重量(乾燥重量) | 1590(1420)kg |
エンジン | V型8気筒ツインターボ |
総排気量 | 5.0リッター |
エンジン最高出力 | 1100hp |
エンジン最大トルク | 1250Nm |
電気モーター | フロントアクスル駆動×1/リヤアクスル駆動×2 |
電気モーター最高出力 | 700hp |
電気モーター最大トルク | 900Nm |
システム最高出力 | 1500hp以上 |
システム最大トルク | 2000Nm以上 |
ケーニグセグを所有する日本人オーナー
ケーニグセグの顧客リストには、世界中のセレブリティや富豪の名が並んでいる。その中にはもちろん日本人のオーナーの名前も。スウェーデン発の孤高のスーパーカーを所有する生粋のジャパニーズエンスージアストとは?
新地哲己氏:ケーニグセグ アゲーラRSR
太陽光発電事業を主軸に、建設、不動産、ホテル、飲食、イベントといった多角的な事業を展開している芝浦グループホールディング。その代表取締役会長兼CEOの新地哲己氏は、日本を代表するハイパーカー/スーパーカーコレクターとして知られる。そんな新地氏が購入したのは、限定3台のみ、しかも日本でしか販売されなかった「アゲーラRSR」。25台限定の「アゲーラRS」をベースにしたスペシャルモデルで、最高出力1200ps、最高速度はおよそ425km/hを標榜。価格は税抜きで「2億6000万円〜」とされている。
前澤友作氏:ケーニグセグ ジェスコ
衣料品通販サイト運営会社ZOZOの創業者、前澤友作氏はスーパーカーの魅力を発信する「前澤友作スーパーカープロジェクト」を立ち上げるなど、自他共に認めるクルマ好き。ロールス・ロイスやパガーニのワンオフモデルなど稀少な車両が揃う氏の濃密なコレクションへ、今後加わる予定なのがケーニグセグ ジェスコだ。自身のYouTubeチャンネルではジェスコの特別内覧の様子も公開しており、動画内で車両価格は「3.8億円」と明らかにした。
Dr.K氏:ケーニグセグ アゲーラRSR
日本のみで販売された3台だけのケーニグセグ「アゲーラRSR」のもう一人のオーナーが、東京在住の医師「Dr.K」。氏のアゲーラRSRは鮮やかなブルー×ゴールド×カーボンブラックのカラーリングが特徴的。インテリアも特別なゴールド仕様となっている。Dr.K氏はインスタグラム(@dr.k1013)内で愛車の様子を逐次公開している。
ケーニグセグのディーラーや日本国内の購入方法
「BINGO SPORTS(ビンゴスポーツ)」ブランドで海外輸入車販売事業を手がけるBHJとBINGO SPORTSは、2020年12月に「ケーニグセグ・ビンゴスポーツ(Koenigsegg BINGO SPORTS)」をスタート。新体制の発表イベントでは、ケーニグセグ史上最速となる市販モデル「ジェスコ アブソリュート」、そして初の4シーターモデル「ジェメラ」を公開した。
新会社のCEOにはポルシェジャパン社長などを歴任した七五三木敏幸(しめぎとしゆき)氏を迎え、現在は東京・千代田区永田町、愛知・名古屋市守山区、大阪・大阪市東成区の3ヵ所を拠点にケーニグセグブランドのシェア拡大を図っている。ちなみに、前身となるケーニグセグジャパンは2016年に設立。すでに日本限定の「アゲーラRSR」、そして「レゲーラ」の販売実績を持っている。
ケーニグセグ ジェスコ、ジェメラ、レゲーラの価格
限定された生産台数、カスタマーの要望に極めて忠実かつ柔軟に対応する仕様など、ケーニグセグがリリースする車両は限りなくワンオフモデルに近づいていく。例えばオートクチュールの製品に定価というものが存在しないように、ケーニグセグの各モデルも販売価格を公表していない。巷間に流布している価格はすべてメディアによる推測であったり、関係者筋から非公式に漏れ伝わったものである。
従って実際にいくらだったのか?という疑問にたいしての回答はオーナーに聞くしかないが、例えばジェスコを購入した前出の前澤友作氏は自身が発表している動画内で「3.8億円」と語っている。ただしこれも「前澤友作氏が購入したジェスコ(個体)の価格」であり、もし他の124台を手にしたオーナーが購入価格を語ることがあったとしても、それぞれ異なる金額がでてくることだろう。
【Q&A】ケーニグセグについて多い質問
現代を代表するスーパーカーブランドの一角・ケーニグセグは、その超弩級のパフォーマンス、エキゾチックなスタイリング、生産台数の少なさなどから想像できるように、庶民には縁遠い存在であるのは間違いない。有り余る資金力をもって購入金額に糸目をつけず、なおかつ相当なカーエンスージアストのみが商談に臨めるクルマだ。そんなケーニグセグを購入するのに資格や審査はあるのだろうか?
Q. ケーニグセグを購入するための審査基準は?
稀少性の高いスーパーカー/ハイパーカーの購入には、一定の条件が求められることが多い。年収や所有車両、顧客期間といった各項目をもとに事前審査を行ったり、メーカー側がふさわしいと判断した顧客に“逆コンタクト”したりと、その手法はブランドや車種によって様々。ケーニグセグは審査基準などについて明らかにしていないものの、そのプライスレンジや稀少性を鑑みるに、いわゆる“一見さん”が入手できる機会は極めて限られているといっていいだろう。
Q. ケーニグセグの販売価格は?
メーカーとして販売価格は公表していない。前出の各メディアのように「およそ〇〇〇〇ポンド」というように、すべて推測の域を出ずオーダーしたカスタマーのみが知りうるだけである。しかもエクステリア及びインテリアの仕様はカスタマーの求めに応じて自在に設定するのがスーパーカーメーカーの流儀であり、それをよく承知しているこのクラスのクルマを買うカスタマーは吊るしで買うことはほぼ皆無であることからも、ケーニグセグ各モデルの正確な販売価格はオーナーのみぞ知る、ということになる。
Q.ケーニグセグの中古車は?
これまで見てきたように、ケーニグセグは1台1台が一般に流通している車両とは異なる特殊なモデルだ。台数が少ないうえに個体ごとに仕様が千差万別であることから通常の中古車感覚で論じることは難しく、あえて言うなら美術品の類が近い。セカンド以降のオーナーになるには、個人間でのやりとりや美術品と同じようにサザビーズのようなオークションにかけられるのを待つか、あるいは正規販売店(日本国内ではケーニグセグ・ビンゴスポーツ)に依頼して出物を待つか・・・。いずれにせよ、ケーニグセグの中古車を手に入れようとするなら、新車のオーダーとさして変わらない手間と時間、忍耐力と運、そして場合によってはプレミア価格での資金力が必要となるだろう。