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ミニマム構成のシアターシステム
「映像作品をスマートフォンやタブレットで楽しむとき」なんてことを書くようになるとは10年前は想像もしなかったけれど、今やパーソナルなデバイスで映画やドラマ、アニメを楽しむのはごく当たり前だ。多くの場合はイヤホンを使うのだけれど、映画やドラマならもっとリラックスした空間で楽しみたい。この製品は、そんな現代のスマートフォンユーザーに向けたミニマム構成のシアターシステムを提案している。
バッテリー内蔵でワイヤレス動作が可能な本体スピーカーを目の前に置き、上に配置された平べったい丸いスピーカー(サテライトスピーカー)を取り外して、自分の後方の左右に配置。あとは楽しみたい映像を再生させる。すると、まるでホームシアターのような立体的な空間を感じさせる音場が広がる。“自分の周りだけに”音場が展開するのがユニークだ。本体もサテライトスピーカーも完全ワイヤレスだから、スタイルフリーで使いこなせる。
5.0.2チャンネル相当の立体音響を実現
HT-AX7とスマートデバイスの接続は、一般的なBluetooth Audioを用いるため、ステレオ音声、つまり2チャンネルなのだが、これをソニー独自の音響解析技術「SOUND FIELDエフェクト」で立体音響情報へと変換した上で立体的な音にする。その仕組みは、波面合成による仮想音源生成技術。音の波面がぶつかるところに仮想音源を作り出し、5.0.2チャンネル相当の立体音響にすることで、豊かな音場を作り上げるとか。
ドラマ系の映画から音楽ビデオ、そしてアクションものも含め、自分の周りに立体感のある音が包み込む感覚を楽しめるが、実はこの製品にはもうひとつの使い方がある。それは、音楽で部屋を満たすことだ。
SOUND FIELDエフェクトをオフにすると、リヤスピーカーとフロントスピーカーの間に、音楽が漂うように流れる。明瞭な音像などを期待してはいけない。ステレオかどうかなどは関係なく、部屋のどこにいても音楽が漂うように心地よく聞こえる。いわゆるカフェなどの店内で流れるBGMのような音だ。
どこにいてもなんとなく楽しめる
実はサテライトスピーカーは、適当な場所にポンと置いただけで、概ね同じように聞こえるよう、極めて広い指向性で設計されている。上方向に向けられたドライバーから、大きく全方向に広がるウェーブガイドが与えられ、どの方向にも音が広がるように作られている。この間の空間を歩いてみると、音の方向感はかなり曖昧な一方で、どこにいてもなんとなく楽しめることを実感できるだろう。主張しない音質、音域幅もさほど広くないことは、ゲストを自宅に招いた時の主張しないBGMにピッタリ。異なる2つのシーンで使うことができるのだ。
ベッドに寝っ転がって、あるいはソファーでくつろいでいる時に、手元の映像に立体音響空間を作り、友達がきた時には部屋全体を音楽で満たす。もちろん、読書などをする際に使ってもいいだろう。というわけで、興味を持ったならば、是非とも体験してほしい。もちろん、普通のBluetoothスピーカーとしても使えるが、これまでにない新しい体験を提供してくれるはずだ。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2023年11月号
評価
接続はBluetoothのみ。HDMIは繋がらないの? なんて無粋なことは言わず、スマートフォン/タブレット専用シアターと捉えるといい。これまでにないジャンルのスピーカーだ。
コストパフォーマンス:3
立体音響:4
心地よさ:4
バッテリー:5
設置性:5
PRICE
オープン価格
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