BMWがミュンヘンのエンジン工場での生産を終了

BMWがミュンヘンでのエンジン生産を終了「ミュンヘン製BMWエンジンはもう手に入らない?」

ミュンヘン製のエンジン搭載車はもう手に入らない?
ミュンヘン製のエンジン搭載車はもう手に入らない?
2023年11月、BMWはミュンヘン本社敷地にある第1工場内の内燃機関用エンジン工場の製造を終了した。地元が誇る「Made in Germany」エンジンが姿を消すという非常にショッキングなニュースがミュンヘンを駆け巡り、地元新聞各社が一斉に報じた。ミュンヘン在住ジャーナリストが寄稿した。

V8はマグナシュタイヤー社で

BMWらしいスポーティな走りを実現してきた3.0リッター直6ツインターボエンジン。

60年間もの間に渡り、直列4気筒、6気筒、V型8気筒、V型12気筒と、スポーティでパワフルな走りを象徴するBMW、MINIそしてロールス・ロイス用のエンジンが製造されていた歴史あるエンジンファクトリーが幕を下ろした。

ファクトリーでは、約1200名の従業員がエンジン組み立て作業に従事し、1日に2000基以上のエンジンを製造していたが、改装して新モデル用のラインが組まれ、エンジン製造に従事していた従業員らも配置換えとなるという。

ミュンヘンの第1工場では既にi4が製造されているのだが、それに加えて9月に開催されたIAAモビリティ ミュンヘンでワールドプレミアとなった新プラットフォームの「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」は、慣れ親しんだ3シリーズフォーマットのEVセダン、そしてスポーティなEVのSUVはi3シリーズとして本社工場で製造される予定となっている。今後はオーストリアのマグナ シュタイヤー社でV8エンジンを、英国ハムズホールでV8以外のエンジンが製造されるという。

内燃機関モデルの開発と製造は継続

レーゲンスブルグ工場で製造されるiX2。

地元ミュンヘンはもちろんの事、日本をはじめ、世界中に「Made in München」の車両を求める熱心なコレクターも数多く存在するが、すでにエンジン生産が終了したこともあり、第1工場で製造されるMモデルを含む3や4シリーズの新車には、ミュンヘン製のエンジン搭載車はもう手に入らない。

ミュンヘンでの内燃機関のエンジンは製造終了となったものの、BMWでは引き続きガソリン/ディーゼルの内燃機関モデルの開発と製造は継続され、ハイブリッドと電気自動車を加え、様々なモビリティの選択肢をユーザーへ提供してゆくという。

BMW M社が作り上げる、内燃機関に負けないパワフルなEVのMモデルも次々と発表され、高い評価もされている。だが、60年もの間、地元の熟練マイスターたちがその仕事に高い誇りを持ち、丹精込めてエンジンを作るために毎日通った「Bayerische Motoren Werke(=バイエルン・エンジン工場)」のエンジンの製造ラインが完全に停止した今、時代の移り変わりとはいえ、なんとも言えない切なさと寂しさがこみあげてくる。

EVインフラは改善されたが……

MINIカントリーマンはライプツィヒ工場で生産される。

2026年までに約4億ユーロ(約650億円)を電気自動車部門へ投資をするBMWは、2030年までに全出荷数の50%以上をBEVにする目標を立てており、2025年から2年以内に6つのニューモデル発表を予定している。

ミュンヘンのBMWの本社工場敷地内では、数多くの建物や立体駐車場が取り壊され、大規模工事が行われている最中で、新規モデルの製造ライン建設に向けて急ピッチに工事が進められている。さらにミュンヘン市北部にあるFIZ(研究開発センター)の敷地もEV用に拡大建設中だ。なおEV用モーターは2013年からディンゴルフィング工場で製造されている。

政府の助成金が功を奏し、以前に比べるとミュンヘン市内を走る電気自動車(BEV、PHEV、HV)の数はここ数年で一気に増えた。インフラも随分改善されて、数多くの充電ステーションが設置されているものの、車両数に対してまだまだ不足しているのが現状だ。ミュンヘン市内及び都市部には一軒家が少なく、古い集合住宅が密集しているため駐車場も不足し、路上での縦列駐車が今も昔もスタンダードだ。ただでさえ不足している路上の駐車スペースから、チャージングスポットのスペースを作ろうとしているが、根本的な解決には至っていない。

最後のM3クーペ。これ以降、M3といえば4ドアセダンを指し、2ドアはM4になった。そして、最後の自然吸気M3でもある。

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