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Porsche Macan Prototype
テストは最終段階に
ポルシェとアウディは、電動車用プラットフォーム「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」を共同開発し、既報のとおりアウディはQ6 e-tronを、ポルシェは新型マカンを2024年に市販化する予定だ。そして今後はこのPPEをベースに新型BEVを投入していくことになる。2023年10月、テストも最終段階に入ったこのタイミングで、新型マカンの概要説明およびタクシーライド(同乗走行)の機会が用意された。
プロトタイプのエクステリアにはエンブレムの類はなく、リヤまわりにはまだ偽装が施されている。4本の線で構成されたデイタイムライトはタイカンを思わせるもの。フロントまわりはシャープに、ルーフからリヤにかけてのラインはかなり傾斜がきつくクーペ色が強くなっている。取材時にはインテリアは撮影不可だったが、のちに公開された画像によると新型カイエンの流れを汲んだものとなるようだ。
100kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載
新型マカンにはタイカンと同様に800Vのアーキテクチャーと永久磁石式同期電動モーター(PSM)を採用。当初はエントリーモデルと最上級モデル(おそらく名前はターボ)が投入される予定で、後者のシステム出力は最大約450kW(約600PS)、最大トルクは1000Nm以上。前後重量比は48:52で、PPEは後輪駆動と4輪駆動のいずれにも対応するが、マカンは4輪駆動となる。PSMはフロントは共通で、リヤはグレードによって差別化されている。またタイカンのものに比べて冷却性能が高められており、充電時間を大幅に短縮した。トランスミッションはタイカンが2速なのに対して1速となり、これによってコンパクト化が図られた。そしてバッテリーの温度や充電状況によるが最大約240kWの回生が可能となる。一方でドライバーがアクセルペダルをオフにし、しばらくブレーキを踏まなければ、いわゆるコースティングモードに入るなど効率も高められている。
アンダーボディには総容量100kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。バッテリーは角柱状のセルを持つ12個のモジュールで構成されている。ニッケル、コバルト、マンガンの混合比は8:1:1。最大270kWの充電能力を実現する。バッテリーは前世代のバッテリーよりも30%ほど 高いエネルギー密度を達成。個々のモジュールやその他の重要なコンポーネントを交換可能とするなど修理性も向上。また、車載AC充電器、高電圧ヒーター、DC/DCコンバーターの3つのコンポーネントを組み合わせた革新的なインテグレーテッドパワーボックス(IPB)の採用によりサイズ、重量、コストの削減に成功。WLTPモードによる航続距離は500km以上という。
サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リヤにはマルチリンクを採用。PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)電子制御ダンパーは、2バルブ式となり、広い領域をカバーすることができる。また、グレードによってエアサスペンションやリヤアクスルに電子制御式ディファレンシャルロックであるポルシェトルクベクタリングプラスも装備。エアサスはモードに応じて-30mmから+40mmまで車高の調整が可能となる。マカンでは初となるリヤアクスルステアリングも設定され、80km/h 以下の速度では前輪と後輪は逆位相に、駐車時には後輪は最大5度の舵角がつく。これにより優れた走行安定性と小回り性能を両立する。
予想を遥かに超える俊敏な動き
タクシーライドはまずライプツィヒ工場の敷地内にあるエクスペリエンスセンターのオフロードトラックから始まった。未舗装で砂利だらけ、ところどころ大きな水たまりのあるダートコースにいきなり全開でつっこんでいく。とにかく足がしなやかに動くことに驚く。テストドライバーに尋ねるとやはりエアサス装着車だという。現行マカンでは登れないという勾配約40°の急斜面もなんなくクリアしてしまう。水深50cm、長さ100mある、まるで川のようなコースも勢いよく走りきった。最大渡河性能についての詳細は教えてくれなかったが、ポテンシャルの高さは十分に伝わってきた。
オンロード体験は、全長約3.7kmのテストコースで行われた。モードはもちろんスポーツプラス。ひたすら全開、ときどきドリフト、揺り戻しのない俊敏な動きは、予想を遥かに超えていた。まさにポルシェのスポーツカーそのものだった。
REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)
PHOTO/PORSCHE AG.
MAGAZINE/GENROQ 2024年 2月号
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