大きな進化を遂げた720S後継モデル「マクラーレン 750S」

720Sの後継モデル「マクラーレン 750S」はエクステリアも中身も大きな進化を遂げていた

パワーは30‌PSアップした750PS、これは純V8エンジン車としては世界トップクラスで、トルクも30‌Nmアップの800Nmとなった。
パワーは30‌PSアップした750PS、これは純V8エンジン車としては世界トップクラスで、トルクも30‌Nmアップの800Nmとなった。
マクラーレンの市販車フラッグシップであるスーパーカーシリーズが、750Sへと生まれ変わった。パワーアップはもちろんのこと、あらゆる部分が大きな進化を遂げた究極の正常進化といえる1台が、早くも日本に上陸。早速その実力を試してみよう。(GENROQ 2024年2月号より転載・再構成)

McLaren 750S

驚くほどの軽さを達成

大型化され、位置が高くなったリヤウイング。720Sのリヤウイングは格納時はボディとほぼ一体化していたのに対し、750Sは格納時でも中央部はボディとの間に隙間があって、そこをエアが流れるようになっている。

720Sから750Sへ。マクラーレンは基本的に車名を継承しないからモデルが変わるとラインナップの中のヒエラルキーが分かりづらいのだが、これは名前もルックスもわかりやすい。つまり720Sの純粋な後継モデルだ。

エンジンは基本的に720Sと同じ4.0リッターのV8だが、パワーは30‌PSアップで車名の通り750PS、これは純V8エンジン車としては世界トップクラスで、トルクも30‌Nmアップの800Nmとなった。それに合わせて7速DCTはギヤレシオをより加速重視に変更。また軽量化も徹底され、720Sよりも重量を30kg削減し、乾燥重量は1277kgと驚くほどの軽さを達成している。その結果、0-100km/h加速は2.8秒と、3秒を切る数字を叩き出す。ちなみに同時に登場したスパイダーは電動のリトラクタブルハードトップを備えながら、クーペに比べわずか49kgの重量増に抑えている。

足まわりにも手が加えられている。伝統の油圧リンク式サスペンションは専用アキュムレーターに改良を加えたPCCIIIへと進化し、ダンパーとスプリングも見直された。他にもパワーステアリングのアシストポンプを刷新し、ギヤ比もよりクイックなものとなっている。

インテリアはアルトゥーラと同じようにメーターバイザー両脇にアクティブダイナミクスのロッカースイッチが配されたのが大きな変更点だ。それに伴って720Sの特徴であった格納式のメーターは廃止されたが、そもそもメーターを畳まなくても視界は非常に優れているので、実用的な問題はほとんどないだろう。

前衛的な外観の割に高い実用性

中身がこれほど大きく刷新されているのに、外観から受ける印象は720Sと大きくは変わらない。マクラーレンの説明ではヘッドライトのインテーク部を細くしたというが、これは720Sと並べてみない限り気づくことは困難だろう。よく見ると、確かにフロントバンパーはかなりプレーンなデザインとなっているし、フェンダー上には3本のスリットが入り、より迫力が増しているようだ。

そしてリヤへ回ってみると、720Sとはかなり変わっていることに気がついた。まずリヤウイングが明らかに大型化され、位置も高くなっている。そして720Sのリヤウイングは格納時はボディとほぼ一体化していたのに対し、750Sは格納時でも中央部はボディとの間に隙間があって、そこをエアが流れるようになっている。エアロダイナミクスの変更点はこれ以外にもフロントのスプリッターが拡大されているという。

さらに観察するとマフラーがセンター出しとなっている。総じてフロントよりもリヤ周りの方が進化の度合いが大きい。有機的な曲面のボディラインはマクラーレン共通のアイデンティティだが、それが最も顕著なのが720Sから始まったスーパーシリーズ。750Sへの進化によってそれがさらに加速されているようだ。

前衛的な外観の割に実用性が高いのもマクラーレンの特徴で、特筆すべきはその視界の良さだ。おそらくミッドシップのスーパースポーツでこれほど斜め後方が目視できるクルマは他にない。今回の試乗は街中だったので、走り出してまず実感したのがこの視界の良さからくる運転のしやすさだ。そして次に感じたのが乗り心地の良さ。720Sもスーパースポーツカーにしては快適な乗り心地を実現していたが、750Sはそれにしなやかさが加わったようだ。4つのタイヤが路面にしっかり追従し、不快な振動をすべて丸め込んでくれているような感じ。マクラーレンのようなカーボンモノコックのクルマは剛性は高いが、ちょっとギシギシとした感触を乗り手に伝えてくることが多いのだが、750Sにはそれが一切ない。ひょっとしてモノコックも改良を受けたのかと思ったが、そうではないらしいので、これはやはりPCCIIIの制御が優れているということだ。

想像以上の進化を遂げた

高速道路に入ると、750Sはますますフラットライドな姿勢を保ち、滑るように加速する。750PSをフルに発揮することはとてもできないが、どこからでも即座にトルクとパワーが立ち上がるV8エンジンのレスポンスの素晴らしさは良くわかる。試しにリヤウイングを上げてみると、ややステアリングが重くなり、明らかにクルマがグッと安定する。100km/h強の速度域でも実感できるダウンフォースの高まり、これは雨でも降っていたらより有効に違いない。

ただパワーがアップしただけの改良かと思っていたら、750Sの進化は想像以上だった。これならばもっと外観を変えたほうが新しさをアピールできるのでは、と思ってしまったのは余計なお世話だろうが、わかりやすい目新しさよりもストイックなまでに自らが求める走りを探究るその姿勢は、実にマクラーレンらしいと言える。ピュアな走りを求める人には、最も相応しい1台だろう。設立からわずか10年ちょっとでスーパースポーツの中心的ブランドとなったのには、ちゃんと理由があるのだ。

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/McLaren Automotive
MAGAZINE/GENROQ 2024年 2月号

SPECIFICATIONS

マクラーレン750S

ボディサイズ:全長4569 全幅1930 全高1196mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1277kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:552kW(750PS)/7500rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR19(9J) 後305/30ZR20(11J)
車両本体価格:3930万円

【問い合わせ】
マクラーレン東京
TEL 03-6438-1963

マクラーレン麻布
TEL 03-3446-0555

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TEL 06-6121-8821

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TEL 082-942-0217

マクラーレン福岡
TEL 092-611-8899

マクラーレン・オートモーティブは、サスペンションメーカー「モンロー」が公式インテリジェント・サスペンション・サプライヤーになったことを発表した。

非公開: マクラーレンが公式サプライヤーとしてモンロー製「インテリジェント・サスペンション」の採用を継続

マクラーレン・オートモーティブは、アメリカ合衆国の自動車部品メーカー「テネコ(Tenneco)」が傘下に持つサスペンションメーカー「モンロー(Monroe)」が、ロードカーの公式インテリジェント・サスペンション・サプライヤーになったことを発表した。

大幅な進化を果たしたミッドシップスーパースポーツ「マクラーレン 750S」の走行シーン。

マクラーレンの最新スーパースポーツ「750S」が実現した驚異の車重と性能「乾燥重量1277kg」「最高出力750PS」

マクラーレン・オートモーティブは、ミッドシップスーパースポーツ「720S」の後継モデル「750S」を発表した。約30%のコンポーネントが刷新され、4.0リッターV型8気筒ツインターボは、最高出力750PS、最大トルク800Nmを発揮。新型750Sは日本を含めたマクラーレン正規販売店において、オーダー受付がスタートしている。

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。古典的ジャイアンツファン。卵焼きが好き。愛車は993型ポルシェ911。カメラはキヤノン。