英国のスペシャリスト集団「EタイプUK」がフルレストア

ノルウェーで発見されたジャガー Eタイプの希少なシリーズ1。スペシャリストの手によりレストア&モディファイを完了

希少なパールグレーとダークブルーの組み合わせ、1964年製「ジャガー Eタイプ シリーズ1 FHC」のレストアを完了
レストアを施した1964年製ジャガー Eタイプ シリーズ1 FHCのフロントスタイル
ジャガー Eタイプのレストアビジネスをリードするスペシャリスト集団、英国の「EタイプUK(E-Type UK)」は、1964年製ジャガー Eタイプ シリーズ1 FHCのフルレストアを完了。現代の走行条件にも対応するモディファイを加えて伝説の名車がまた1台、蘇った。

1964 Jaguar E-type Series 1 FHC 

ノルウェーで保管されていた左ハンドル仕様

希少なパールグレーとダークブルーの組み合わせ、1964年製「ジャガー Eタイプ シリーズ1 FHC」のレストアを完了
今回、長らくノルウェーの田舎で保管されていた、左ハンドルの希少なEタイプ シリーズ1のレストアが完了した。

今回フルレストアされた「ジャガー Eタイプ シリーズ1 FHC(フィクスド・ヘッド・クーペ)」は、珍しい左ハンドルのシリーズ1クーペ。オーダー時は見事なパールグレーのエクステリアペイントと、ダークブルーのレザーインテリアが施されていた。この特別なカラーの組み合わせの1台はノルウェーの奥地で保管されており、そのバックボーンがさらなる希少性を生み出している。

今回、EタイプUKのスペシャリストチームの手により、ボルト1本に至るまで細心の注意を払いながら大規模なレストアを敢行。性能面での大幅なアップグレードにより、1960年代に活躍したこの車両は21世紀の現在でも問題なく使用できるコンディションへと復活している。

ボディとシャシーの状態を現代のレベルに

希少なパールグレーとダークブルーの組み合わせ、1964年製「ジャガー Eタイプ シリーズ1 FHC」のレストアを完了
60年近くが経過したボディに浮いた錆を徹底的に除去した後、現代の使用に耐えうるレベルへと徹底的にレストアされた。

3500時間に及んだレストア作業、その最初のステップは、構造的な剛性アップとシャシーの強度を保証するため、ボディの各パネルに錆の兆候がないかどうかを調べることにあった。サンドブラストで50年以上経過した錆類を除去した後、これ以上の錆の発生を防ぐためそれぞれのパネルに下地処理が施された。

EタイプUKの熟練した金属加工職人は、フロア、リヤシャシー、ギヤボックストンネル、バルクヘッド、前後フェンダー、そしてボンネットを修復。見た目の美しさだけでなく、最高の安全性も確保した。正確に位置合わせが行われた後に新しいボディパネルが取り付けられ、オリジナルシャシーに溶接された。

充填工程では、ボディシェル全体の寸法とパネルの隙間がミリ単位で正確になるように、慎重かつ詳細に充填剤が塗布された。続いて金属が露出している部分には防錆剤を塗布し、さらにハイビルドプライマーが何度も塗り重ねられている。その後、ボディを数週間休ませ、すべての材料を完全に硬化させてからペイント工程へと進んだ。

希少なオリジナルカラーであるパールグレーにハンドペイントするため、入念なマスキングを経て何度もスプレーを行い、続いて高品質のクリアラッカーを丁寧に塗り重ねて最終的なポリッシュが行われている。世界的なレストア作品に相応しい仕上がりを実現するため、ラッカーは何時間もかけて手作業で磨き上げられ、完璧な輝きを取り戻した。

独立懸架型リヤサスペンションをアップグレード

希少なパールグレーとダークブルーの組み合わせ、1964年製「ジャガー Eタイプ シリーズ1 FHC」のレストアを完了
当時としては画期的な独立懸架型リヤサスペンション「IRS」を大幅にアップグレード。さらにブレーキシステムも強化された。

Eタイプには、当時としては非常に先進的な技術が数多く採用されていた。例えば、IRS(Independent Rear Suspension:独立懸架型リヤサスペンション)が搭載されており、後輪とサスペンションをシャシーに固定することで、ロードノイズ、振動、ハーシュネスを低減。ラグジュアリークーペに相応しいスムーズな走りを実現している。

今回のレストアでは、革新的なIRSシステムのフルリビルドに加えて、新たにベアリング、ユニバーサルジョイント、ブレーキライン、コイルオーバーが装着された。さらに信頼性の高いEタイプUK製4ポット・ブレーキキャリパー、パフォーマンス・ブレーキパッド、最新のハンドブレーキシステムも追加している。

これらの魅力的なアップグレードが装着されたIRSユニットは、ドライバーにダイナミックなブレーキングと優れたロードパフォーマンスを提供。さらに、フロントセクションにもEタイプUK製フロント6ポット・ブレーキキャリパーへのアップグレードが行われている。

現代の使用状況にも耐えうる「XKエンジン」

希少なパールグレーとダークブルーの組み合わせ、1964年製「ジャガー Eタイプ シリーズ1 FHC」のレストアを完了
ジャガー伝統の3.8リッター直列6気筒「XKエンジン」は、フューエルインジェクションの搭載など現代的にリファイン。パフォーマンスの復活に加えて、日常域での使い勝手を手にしている。

搭載される3.8リッター直列6気筒「XKエンジン」も徹底的にレストアされた。新たなガスフローヘッド、ハイリフトカム、バランス調整&軽量化されたクランク、リップシールの交換などにより、1960年の製造当時を上回る圧倒的なパフォーマンスと使いやすさを手に入れている。

フューエルインジェクションの採用に加えて、Eタイプのエンジンルームにはオルタネーター、電子制御式イグニッション、高トルクスターター、クランクシャフトセンサー、高圧・低圧燃料ポンプ、オイルキャッチタンク、空気・冷却水温度センサーを装備。従来のディストリビューターは取り外され、代わりに高機能コイルパックが装備されている。

ギヤボックスは、当時の雰囲気を残しつつ現代の使用状況にも耐えうる仕様に変更することが課題となった。それを踏まえて、オリジナルの4速マニュアルギヤボックスは新たに5速マニュアルへと変更。この結果、エンジンへの負担が大幅に軽減され、走行状況に合わせて各ギヤをより正確に選択することが可能になった。

美しく蘇ったダークブルーレザーのインテリア

希少なパールグレーとダークブルーの組み合わせ、1964年製「ジャガー Eタイプ シリーズ1 FHC」のレストアを完了
完璧に蘇ったエクステリアに合わせて、ダークブルーレザーのインテリアも丁寧なレストア作業により、美しく仕上げられている。

インテリアは、レストアの最終段階として、丁寧に作業が行われた。オリジナルのダークブルーレザーは、新たにペイントされたパールグレーのエクステリアと完璧にマッチするように、驚くほど深みのあるカラーで再現された。また、最高級レザーを使用したシートやダッシュボードも、洗練されたスタイルに仕上げられている。

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著者プロフィール

ゲンロクWeb編集部 近影

ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…