連載

GENROQ アストンマーティンアーカイブ

DB2/DB2/4(1950-1957)

DB2と名付けられた新型車

2リッター・スポーツ/DB1譲りのヒル設計による角断面のメインフレームに小径のチューブフレームを組み合わせたスチールフレームシャシー。サスペンションも同様にフロントトレーリング式、リヤリジッド式が採用された。

デイヴィッド・ブラウンがアストンマーティンに続きラゴンダも買収したのは、彼らの作るエンジンに魅力を感じていたからだ。というのもラゴンダでは第一次大戦後から数々の高性能大排気量多気筒エンジンを開発。1935年にはベントレーの創業者であるウォルター・オーウェン(W.O.)・ベントレーが移籍し、傑作と評される4 1/2リッターV12エンジンを開発するなど、その技術は折り紙付きだった。

1948年、ジャガーが3.4リッター直列6気筒DOHCエンジンを積んだXK120を発表し、大成功を収めると、アストンマーティンもクロード・ヒルの設計したシャシーに、ウィリー・ワトソンがW.O.ベントレーの元で開発を進めていた直列6気筒LB6エンジン(LBはラゴンダ・ベントレーの略)を搭載したニューモデルの開発を開始する。

自身の開発した2.0リッター直4OHCに自信を持っていたヒルがその決定に反発し、アストンマーティンを去るというハプニング(彼はその後トラクターのファーガソン社に移籍し、4輪駆動、前輪駆動システムの開発で名をあげる)があったものの、新型車は1950年に完成。デイヴィッド・ブラウンのイニシャルをとりDB2と名付けられた。

イタリアン・デザインのクーペスタイル2シーター

写真は折りたたみ式のリヤシートとテールゲートを装備し、ボディを若干延長した「DB2/4」。1953年に登場した。

シャシーは2リッター・スポーツ/DB1譲りのヒル設計による角断面のメインフレームに小径のチューブフレームを組み合わせたスチールフレームで、フロントトレーリング式、リヤリジッド式のサスペンションも基本的に同じものが採用された。

一方、フランク・フィーレイの手によるアルミ合金製のボディはイタリアン・デザインの影響を受けたクーペスタイルの2シーターとなった。

エンジンは前述したようにワトソンとベントレーが手がけた2580cc直列6気筒DOHC LB6ユニットで、ジャガーXKユニットには及ばないものの、ヒルの2.0リッター直4を大きく上回る最高出力106PSを発生した。

さらに1951年には圧縮比を6.5:1から8.16:1へと高め、2基のSUキャブレターの口径を1 1/2インチから1 3/4インチへと拡大することで127PSを発生する高性能版のヴァンテージも追加している。

ボディを若干延長したDB2/4

ボディを若干延長し、要望の高かったドロップヘッドクーペも新たに追加された「DB2/4」。

こうして登場したDB2だが、初期のLB6ユニットにトラブルが多かったのに加え、ラゲッジスペースのない狭い2シーター・クローズドボディへの不満が多く、1953年に折りたたみ式のリヤシートと、テールゲートを装備し、ボディを若干延長したDB2/4を投入。要望の高かったオープンのドロップヘッドクーペも新たに加わった。ちなみにDB2、DB2/4のボディ製造はベントレーのボディでも有名なバーミンガムのH.J.マリナーが担当。また車両重量増加の対策として127PSのヴァンテージ・エンジンが標準で装備されている。

その後1954年に直6ユニットの排気量を2992ccへと拡大。1955年には新たに買収したニューポートパグネルのコーチビルダー、テックフォードに製造を移管し、ボンネットフード、1.5インチ高くしたルーフラインなど、ボディ各所に手を加えたDB2/4 MkⅡを発表。これにもクーペとオープン、2種類のボディが用意されたほか、142PSを発生する2992cc直6DOHCユニットを標準で搭載。さらにビッグバルブ、ハイカムで167PSにまでチューンを施したスペシャルシリーズも用意された。

こうして年次を重ねながら、幾多の改良が加えられたDB2シリーズで、アストンマーティンは高級、高性能GTメーカーとしての礎を築いた。なおDB2シリーズの生産台数は、DB2が411台、DB2/4が565台、DB2/4 MkⅡが199台と言われている。

デイビッド・ブラウン体制下で開発された初めてのクルマ「2リッター・スポーツ/DB1」。1948年9月のロンドン・モーターショーで発表された。

初めてDBと名付けられた「2リッター・スポーツ/DB1」とは? 記念碑的モデルを振り返る【アストンマーティンアーカイブ】

昨年、創業110周年を迎えたアストンマーティン。その歴史は必ずしも順風満帆というわけではなかったが、だからこそ、語り継がれるドラマがある。この連載では今につながる「DB」の1台目を解説する。

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