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Porsche Panamera
アイコニックなカラーを生み出してきたポルシェ
ポルシェは、すべての生産モデルにおいて、エクステリアカラーのラインナップを再編成した。新しいカテゴリーとして導入されたのが、「コントラスト(Contrasts)」「シェード(Shades)」「ドリーム(Dreams)」「レジェンド(Legends)」。それぞれのカラーは様々なトピックを反映しており、より感情に訴えかけるラベル付がなされたことで、カスタマーはエクステリアカラーをさらに選びやすくなった。
1970年代のシグナルカラーや、1990年に流行したパステルカラーなど、ポルシェは常に大胆な発想で多彩なカラーバリエーションを生み出してきた。その最新バージョンとなるのが、パナメーラに導入されたエキサイティングなエクステリアカラーだろう。
例えば「マデイラゴールドメタリック」は、黄金色の秋を思わせる暖かみのあるコニャック色。繊細なエフェクト顔料が、メタリックならではの輝きを放ち、高性能とエレガンスをアピールする。
4つのテーマに分かれたカラーカテゴリー
前述のようにポルシェは、全生産モデルのカラースキームをエモーショナルに変更。コントラスト、シェード、ドリーム、レジェンドは、シリーズカラー、メタリックカラー、スペシャルカラーに代わる、新たなエクステリアカラーのカテゴリーの名称だ。
「コントラスト」は、クラシカルかつ時代を超越したカラーで構成。例えば、ブラックとホワイトは最大のコントラストを生み出す組み合わせとなる。一方、ホワイト、グレー、ブラックの様々な色調は「シェード」カテゴリーに属し、パナメーラに導入された控えめなニュアンスを持つシルバートーンの新色「アイスグレーメタリック」もここに含まれる。
「ドリーム」は強く、明るく、印象的なカラーバリエーション。カスタマーはエクステリアカラーで個性を表現し、主張することができる。パナメーラに導入されたのは、「ルガノブルー」と「マデイラゴールドメタリック」。「レジェンド」は、特別な個性を持ったレアカラーが集められた。エレガントでモダン、そして時代を超越したカラーをさまざまな色調で表現しており、パナメーラでは「モンテゴブルーメタリック」「オークグリーンメタリックネオ」「スレートグレーネオ」がこのカテゴリーに属している。
生産モデル用カラープログラムに加えて、ポルシェは「ペイント・トゥ・サンプル(Paint to Sample)」と「ペイント・トゥ・サンプル・プラス(Paint to Sample Plus)」による、さらに個性的なエクステリアカラーも提供する。
「ペイント・トゥ・サンプル」は、ポルシェの歴史から受け継いできたクラシックカラーを中心にラインナップ。現在、全モデルで170色以上のカラーバリエーションを展開する。「ペイント・トゥ・サンプル・プラス」では、カスタマーの希望に合わせた、独自の専用カラーを作ることも可能だ。
最新のトレンドを踏まえた新色の選定
ポルシェではエクステリアカラーに関しても、最初のアイデアからカスタマーへと提供されるまで、数年の歳月を要しているという。クリエイティブなプロセスと、品質保証を含む技術開発には時間がかかってしまう。非常に長い開発プロセスを経るなかで、スタイル・ポルシェのカラーエキスパートたちは常に時代を先取りすることも求められるという。
スタイル・ポルシェのカラー&トリム部門責任者を務めるフォルカー・ミュラーは「新色は単なるトレンドではなく、より長い期間をかけて定着させていく必要があります。そのため私たちはトレンドをいち早く察知し、時には自らトレンドを作り出す必要もあるのです」と説明する。
ファッション、建築、インテリアなどは、すべてのデザイナーにとって重要なインスピレーションの源となる。ミュラーによると、ある色が人々の目に定着すれば、スポーツカーのように長く使われる製品にも導入することができるという。
ブランドが持つ長い歴史もまた、幅広いインスピレーションを与えてくれる。例えば、「マデイラゴールドメタリック」は、「ノルディックゴールドメタリック」に最先端のトレンドを加えて、エレガントに再解釈した。ノルディックゴールドメタリックは、2007年から2010年まで、さまざまな生産モデルに設定されていた。
「どのカラーもポルシェには似合いますからね」と語るのは、スタイル・ポルシェのカラー&トリム・デザイナーのダニエラ・ミロシェヴィッチ。毎年カラー&トリム・チームがデザインする12〜15色の新色から、開発を進めるカラーが選択される。これらの塗料が技術的に実現可能であることが証明されれた段階で、量産に向けた3年間の開発プロセスがスタートする。
新色の導入に向けた長い開発プロセス
まず、デザイナーは現在のカラーレンジを分析し、すべてのカラーエリアが十分に表現されているかどうかを確認。新色のトピックリサーチでは、コンセプトやビジョンを視覚的に表現する、いわゆるムードボードが作成される。ムードボードは、新色や素材のトピックについて議論し、新しいアイデアを生み出すデザイナー間の社内ワークショップでも使われる。
新しいカラービジョンができあがると、サプライヤーが登場。 「私たちは色のアイデアを塗料サプライヤーに提示し、トピックごとに話し合います。このクリエイティブなプロセスで、さらに素晴らしいアイデアが生まれるからです。サプライヤーは様々な顔料を使って、私たちのために新しい色を作り出します」とミロシェヴィッチは説明する。
その後、ポルシェの生産、技術開発、デザイン、セールス、マーケティングに携わるあらゆるスペシャリストたちが、これらのペイントサンプルについて議論を行う。
新色は技術的に実現可能かつ、市場の需要に対応していなければならない。人気色はそれぞれの市場で異なっており、 「アジアのカスタマーは大胆な色を選ぶ傾向がありますが、アメリカの顧客は落ち着いた色調を好みます」とミロシェヴィッチは付け加えた。
また、デザイナーは将来導入される内装パーツも念頭に置く。エクステリアカラーはインテリアと調和していなければならず、レザーやレーステックス、その他のファブリックとも相性がよくなければならないのだ。
911を模したカラーフロッグへの塗装
次のステップでは、それぞれの色で「カラーフロッグ」に塗装する。これは現行の911を模したミニチュアモデルで、3D形状のボディで色の効果を評価することができる。同時に、ポルシェのバーチャルリアリティの専門家が塗装サンプルをスキャンし、幅16メートルのLEDスクリーン上で新色をリアルに視覚化もする。
新色を採用するかの最終決定は、ポルシェの執行委員会が担当。新色で塗装された車両が用意され、ポルシェのトップマネジメントは、スタジオのプレゼンテーションホールに設置されたLEDスクリーンに映し出された様々なエクステリアカラーを、昼間光とデジタル映像の両方で評価する。
トップマネージメントからの評価を経た新色は、約50~100kgの中型塗料バッチが製造される。こちらを使って約300枚の鋼板に塗装。いわゆるオリジナルサンプルは、オプションパーツのサプライヤー向けのカラーサンプルとしても使用される。カラーマッチングはポルシェの品質確保に欠かせないプロセス。金属とプラスチックでは色の性質が根本的に異なるが、ボディ上では完璧にマッチしていなければならないからだ。
開発プロセスはクリエイティブな作業だけではない。例えば、ペイントのスペシャリストは補修テストも行う。これには塗装済みのプリプロダクションカーをベースに、いわゆるスポットリペアが可能かをチェックする。
生産モデルの導入に向けた厳しいテスト
ポルシェのファクトリーで行われる実際の塗装工程では、塗料がタンクからホースを通ってアトマイザーへと送られる。カラー・ディベロップメント・チームのリーダーを務めるベルント・ミースケスは次のように説明を加えた。
「リング状のホースに剪断力が加わると、色にばらつきが生じる可能性があります。生産開始前のドレスリハーサルは、このような好ましくない事態を防ぐためのテストとなります。また、個々の生産工場における正確な塗装条件も考慮する必要があります。それぞれの工場では塗装ロボットの台数、サイクルタイム、ホースの長さ、システムの容量が異なるからです。このため、工場固有の条件に合わせて塗料を変更する必要があるのです」
カスタマーがカーコンフィギュレーターやポルシェセンターで、エクステリアカラーを選択する前に、さらなるテストを実施。いわゆる「ウェザー・オ・メーター(Weather-o-Meter)」では、サンプルプレートに強い紫外線を3200時間も照射。これは理論上、フロリダで1年間直射日光を浴びたシチュエーションに相当し、塗料の耐久性を証明する。この試験工程には防火、石への衝撃、塩水試験も含まれている。