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GENROQ マクラーレンクロニクル

McLaren 620R

オンロードを走行できるGT4マシン

リヤウイングは角度調節が可能だが、これもロードカーとしての認可を得るために角を丸めるなどの対応策が図られている。
リヤウイングは角度調節が可能だが、これもロードカーとしての認可を得るために角を丸めるなどの対応策が図られている。

2015年に誕生した「570S」を始まりとする、マクラーレンのスポーツシリーズには、その後さまざまな派生モデルが登場した。その中でも特にスポーティなキャラクターを追求したのが、マクラーレンにとっては特別な存在ともいえる「LT」の称号を掲げた「600LT」だろう。だがこのスポーツシリーズには、もう1台忘れてはならない存在の高性能モデルがあった。ここで紹介する「620R」がそれだ。

マクラーレンは570Sのパフォーマンスの高さを確信すると、それをサーキットへと投じることを決断した。GT4マシンの570S GT4がそのために開発されたモデルで、実際にその販売は2016年には早くも開始され、トータルでは3桁を超える数のGT4マシンが、マクラーレンからはデリバリーされたとされる。620Rはこの570S GT4をベースにロードカーへと転用されたモデル。つまりオンロードを走行できるGT4マシンとも表現することができる。

発表当初は350台の限定生産が計画されていた620Rだが、新型コロナウイルスの影響で生産が遅延したことなどを理由に、その数は225台へと縮小されることになった。いわゆる希少性はさらに高くなったことになる。参考までにイギリスでの新車価格は25万ポンドから(日本仕様は3750万円から)という設定だった。今後はそのプレミアム性から、さらに高値で取り引きされる可能性が高い。

徹底したエアロダイナミクスと軽量化

620Rのエクステリアデザインは、基本的には570S GT4のシルエットを受け継いだものだが、フロントバンパーやスプリッター、カーボンファイバー製のボンネットはオンロード専用デザインとなる。リヤウイングは角度調節が可能だが、これもロードカーとしての認可を得るために角を丸めるなどの対応策が図られている。もちろんその機能性はきちんと確保されており、例えば前で触れた620R用のフロントまわりの専用エアロパーツは、240km/h走行時に185kgものダウンフォースを生み出してくれる。軽量化も徹底しており、キャビンではセンターコンソールやシフトパドル、ステアリングホイールのスポークなどにカーボン素材を導入。乾燥重量は1282kgに抑えられている。

ミッドに搭載されるエンジンは、3.8リッターV型8気筒ツインターボで、最高出力は620PS、最大トルクは620Nmを発揮。570S GT4よりも50PSも高いパワーを得られたのは、レギュレーションによる吸気制限などの縛りを受けないためで、これに7速SSG(DCT)を組み合わせ、後輪を駆動することで、0-100km/h加速を2.9秒で、そして最高速は322km/hを達成する。

ピレリ製タイヤはオプションでスリックも

最高出力620PS、最大トルク620Nmの3.8リッターV型8気筒ツインターボを搭載。570S GT4より50PSも高いパワーを得られたのは、レギュレーションによる吸気制限などの縛りを受けないためだ。
最高出力620PS、最大トルク620Nmの3.8リッターV型8気筒ツインターボを搭載。570S GT4より50PSも高いパワーを得られたのは、レギュレーションによる吸気制限などの縛りを受けないためだ。

570S GT4から受け継がれたメカニズムで、もうひとつ忘れてはならないのはサスペンションのアイテムだ。手動調整式のパッシブ・ショックアブソーバーは、伸び側、縮み側ともに32段階刻みで設定を変更でき、スプリングとスタビライザー、トップマウントも620Sのために専用設計されたもの。タイヤはピレリ製のトロフェオRがスタンダードだが、オプションでスリックタイヤのオーダーもできる。ボディカラーはマクラーレンオレンジ、シリカホワイト、オニキスブラックの3色がスタンダードで、それぞれにコンビネーションカラーとアクセントストライプが描かれる。もちろんそれ以外のチョイスもオプションで可能なのはもちろんだ。

620R、それはまさに最強のモデルとして、スポーツシリーズの歴史にその名を残す作品なのである。

最高出力は570Sから30PSアップのエクストラを得て600PS。その車重は同様の比較でマイナス96kgとなる1247kg。軽量化できるところはすべて軽量化した。

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