災害時、一部の主要道路は、緊急自動車専用路に指定されて通行できなくなる

日本は、四方をプレートに囲まれていることから「地震大国」と呼ばれている。実際、内閣府は、今後30年以内に70%の確率で、マグニチュード7程度の大地震「首都直下地震」が発生するおそれがあると発表している。この数値は決して無視できるものではなく、現実的な脅威として受け止めるべきだろう。
首都圏は膨大な人口と交通量に直結しているため、大地震が発生すると甚大な影響を及ぼすことは、考えるまでもない。そのため、日頃から防災意識を高め、非常時の行動や避難経路を確認しておくことが、命を守る備えにつながる。
そこで確認しておきたいのが、「緊急自動車専用路」だ。震度6弱以上の大震災が発生した場合、高速道路や主要な国道の一部は、緊急自動車専用路に指定され、一般車両の通行が禁止される規制が実施される。
この措置は、「緊急通行確保のための交通規制」に基づくものだ。そして、救急・消防・警察・自衛隊・ライフライン事業者などの緊急車両が、円滑かつ迅速に通行できるようにすることを目的としているという。
緊急自動車専用路は、都道府県公安委員会や国土交通省が、事前に指定した道路が対象となる。たとえば、東京都の場合は、首都高速道路や中央道、環状七号線、甲州街道など、複数の幹線道路が緊急自動車専用路として設定されている。これらの道路では、災害発生直後にただちに緊急自動車専用路として運用が開始されるというわけだ。
また、緊急自動車専用路として規制された道路は、原則として通行許可証を持たない一般車両は進入できない。これは、一般車両が侵入することで緊急車両の交通を妨げてしまい、救助活動の遅延や混乱につながるおそれがあるためだ。
災害時には、一人ひとりの冷静な判断と協力が不可欠である。そして、自分の行動が被災地全体の復旧に影響することを強く認識すべきだろう。
「緊急交通路」は、一般車両であっても通行許可証を持っていれば通行可能

ちなみに、震災時の交通規制には「緊急交通路」も存在する。これは「緊急自動車専用路」と混同されがちだが、目的や運用方法に明確な違いがあるという。
緊急交通路は、大規模災害が発生した際に、救援物資の輸送や復旧作業に必要な車両が優先的に通行できるよう設定される道路だ。都道府県公安委員会があらかじめ指定しており、震災時には通行許可証を所持する車両のみが通行可能となる。
具体的な対象車両は、医療物資や食料を運ぶ輸送車両、電気・ガス・水道などライフラインの復旧をおこなう作業車などである。
一方の「緊急自動車専用路」は、通行許可証を持つ一般車両であっても進入は認められず、救助・救命活動を最優先とする専用の経路となる。

つまり、緊急交通路は「通行許可証があれば一般の支援車両も通行可能」であるのに対し、緊急自動車専用路は「一切の一般車両が通行不可」という点が大きな違いだ。いずれも、災害時における救援・復旧活動を支える重要な制度である。そのため、規制対象や通行条件を誤解すれば、社会的な混乱や交通妨害につながりかねない。
すべてのドライバーは、非常時には最新の交通情報を確認し、それぞれの制度の違いを正しく理解したうえで冷静に対応することが求められる。
* * *

「もしも」の事態に備えるうえで、避難場所や自宅周辺の道路状況をあらかじめ確認しておくことは非常に重要である。とくに、地震や豪雨などの大規模災害が発生した際、自宅近辺の道路が通行可能かどうかによって、避難の可否や安全性が大きく左右される。
通行止めのリスクが高い橋やトンネル、土砂災害警戒区域などが含まれていないか、事前に自治体の防災マップやハザードマップを確認しておくべきだ。日常からの備えが、災害時における冷静な判断と安全確保につながるだろう。


