突然現れる道路上の危険
高速道路を走行中、前方の路上にハシゴや木材といった大型の落下物が突然現れたら、ドライバーには回避する猶予がほとんどない。高速走行時に視界内に突如現れた障害物に対し、とっさに急ハンドルや急ブレーキを取れば、自車のコントロールを失い、他車との衝突や車線逸脱といった重大な事故につながる恐れがある。さらに、車間距離が不足していれば、後続車による追突事故のリスクも一層高まる。
こうした事故を未然に防ぐため、道路交通法では運転者に対し、積荷が転落・飛散しないよう必要な措置を講じる義務を課している。これを怠れば、懲役刑または罰金刑が科されることもある。落下物は「うっかり」では済まされない。落下物は単なる忘れ物ではなく、走る凶器となり得るのだ。
高速道路で落下物に遭遇したら

高速道路で走行中に落下物を発見した場合は、まず慌てずハザードランプを点灯して後続車に注意を促しながら減速し、安全に回避することが重要だ。そして、決して自ら落下物を回収しようとしてはならない。高速道路では車両の速度が非常に速く、歩行者の動きが周囲に伝わりにくいため、わずかな判断ミスが重大事故につながる。実際に落下物を回収しようと、車外に出た歩行者が巻き込まれて死亡した事例もある。
高速道路上で停止したり車外に出ることは極めて危険であるため、落下物の撤去は道路管理者に任せるのが原則だ。ドライバーは安全な場所に停車し、速やかに通報することに専念したい。
通報手段としては、携帯電話から道路緊急ダイヤル「#9910」を利用するのが基本だ。これは高速道路・一般道を問わず利用でき、最寄りの道路管理者へ直接つながる全国共通の短縮番号である。走行中で自らの通報が難しい場合は、同乗者に協力を求めるとよい。万が一番号を思い出せない、あるいは緊急度が高い場合には、警察の110番へ通報しても問題ない。
また高速道路上には「非常電話」が設置されている。道路脇に1kmおき(トンネル内では200mおき)にある電話機がそれで、受話器を取ると管制センターに直結し、迅速な対応が期待できる。さらに、料金所やサービスエリア(SA・PA)に立ち寄った際に係員に直接落下物の位置や内容を伝え、撤去を依頼することも可能だ。
いずれの手段を取るにしても、まず自分と同乗者の安全を最優先に確保すること。そのうえで、できるだけ早く適切な機関へ連絡を入れることが、落下物による二次被害を防ぐ最善策となる。
一般道で落下物を見つけた場合の対処法

一般道で落下物に遭遇した場合も、基本的な対応は高速道路と大きく変わらない。まずは急ハンドルや無理な回避を避け、ブレーキで減速しながら周囲の安全を確保する。対向車がいなければ、センターラインを一時的に越えて障害物を回避することも可能だ。しかし、対向車が迫っている場合は、無理に避けようとせず停止してやり過ごすほうがはるかに安全である。
落下物を無事に回避できたら、後続車に追突されないよう慎重に周囲を確認し、可能であれば道路脇へと安全に停車する。なお、走行中のスマートフォン操作は道路交通法で明確に禁止されているため、通報は必ず安全な場所に停車したうえで行うことが必要だ。
連絡先としては、高速道路と同様に道路緊急ダイヤル「#9910」または警察の110番が利用できる。特に#9910は、全国共通で一般道にも対応している便利な短縮ダイヤルである。
一般道であっても、落下物は放置されれば二次事故を引き起こすリスクがある。目撃した際は見過ごさず、しかるべき機関へ速やかに知らせ、早期の撤去につなげたい。
道路上の落下物は物体とは限らない

「道路に何かが落ちている」と聞いて、まず思い浮かぶのは、タイヤの破片や段ボール、農産物などだろう。だが実際には、動物や家具、工具、さらには風で飛ばされたトタン屋根まで、想像を超える“異物”が現場では報告されている。
2021年には、関越自動車道で「クマのようなものが歩いている」との通報が寄せられた。後にそれは大型犬と判明したが、「落下物=物体」とは限らない。重要なのは、「道路上に何か“想定外の存在”がいるかもしれない」という視点を、最初から持っておくことが重要だ。過去には、コンテナや発電機、マネキン、スノーボードなどの落下物が確認されている。
今後も、誰も想像していなかったようなものが、道路のど真ん中に転がっているかもしれない。例えば、スーツ姿のマネキンの腕だけとか、空気が抜けた着ぐるみの頭部、実物大のイルカの模型など。まずは落ち着いて対処できるよう心がけることが大切だ。