オービスの種類と仕組み

オービスの正式名称は「自動速度違反取締装置」であり、速度超過した車両を撮影し、ナンバープレートや運転者の顔を画像として記録するシステムだ。
日本では1960年代に導入され、現在は主に「固定式」「移動式」「半固定式」の3種類に分類されている。それぞれの特徴については下記の通り。
固定式オービス
一定の場所に持続的に設置されており、主に幹線道路や高速道路に多く見られる。
- レーダー式:レーダー波で速度を測定し、基準を超えた車両を自動撮影する。老朽化や誤検出の問題から近年は減少傾向にある。
- ループコイル式:道路に埋設された磁気センサー(ループコイル)で車速を検知する方式。制度上の信頼性が高く、多くの幹線道路で採用されている。
- Hシステム / LHシステム:道路上に設置されたフレームに複数のカメラやセンサーを搭載し、車両を撮影・記録する方式。正確性と同時多車線対応が特徴。
- レーザー式:近年新たに導入されている方式で、レーザー光を用いて高精度に速度を測定。従来のレーダー式に比べて精度・秘匿性に優れる。
移動式オービス

可搬性を持ち、状況に応じて取り締まりポイントを柔軟に変えることが可能な新型タイプ。
- 可搬式:三脚などで設置し、住宅街や通学路など狭い道路での取り締まりに活用されている。軽量・コンパクトな設計が特徴。
- 半可搬式:車両に搭載された中型装置。可搬式に比べて性能が高く、ある程度の移動性と高機能を兼ね備えてる。
半固定式オービス
カメラ本体を複数の設置台座間で移動させながら運用する方式。設置場所は事前に特定されにくい点が特徴。
- Lp型:阪神高速道路の非常駐車帯などに設置されているタイプ。複数の基礎台が常設されており、撮影機材本体が不規則に移設されることで取り締まり効果を高めている。
- 可搬式オービス:移動式オービスの一種だが、特定の拠点に繰り返し設置する半固定的な運用形態。主に生活道路や学校周辺など、速度規制の強化が求められるエリアで活用される
これらの装置は、制限速度を一定以上(一般的には+30km/h以上)超過した車両に対し、後日警察から出頭要請を送るという流れで運用されている。
オービスは人手を介さずに取り締まる特性から、機械による公平で厳格な運用という印象を持たれがちだ。しかし、そこには「見えるもの」だけを基準に判断するという構造的な限界がある。
特に固定式オービスは設置場所が事前に知られていることが多く、直前で減速し通過後に再加速する「対策走行」が横行しているのが実情だ。これは速度違反の形式的な抑制にはなっても、事故の抑止という本来の目的からすれば効果が疑わしい。
オービスは「速度超過=危険」という単純な構図に基づいて運用されているが、実際にそれが事故抑止にどれほど寄与しているかについては、今後もデータを用いた検証と制度の再設計が求められるはずだ。
オービス写真は不倫や事件の証拠になる?
オービスが速度超過車両を撮影する際、運転者と同乗者の顔が明確に写り込む場合がある。
この点について、1986年2月14日、最高裁判所は「オービスによって運転者および同乗者の容貌が撮影されることは、憲法13条のプライバシー権に反しない」との判断を示している。つまり、オービスの画像は法的にも証拠能力を持つということだ。
この特性から、「オービスに男女2人が写っていたことがきっかけで不倫が発覚した」という話がネット上で語られることがあるが、これは事実ではない。実際にオービスは、速度違反の証拠を記録するための装置であり、同乗者の関係性までは判断しない。
一方で、オービスの記録が事故や事件捜査に活用されることはある。たとえば、走行速度や車両の位置関係を示す証拠として、警察や裁判所に提出されるケースも少なくない。また、浮気調査や訴訟で探偵や弁護士がオービス画像を確認しようとする事例も存在する。
ただし注意すべきは、オービスが記録するのはあくまで「違反の瞬間」に限られるという点である。映像は断片的であり、たとえば同乗者が誰で、どのような関係かまでは読み取れない。ゆえに、それだけで不倫の証拠とするのは無理があるのだ。
写真は撮られる。だからこそ速度を守る

オービスは、不倫や事件を暴くための装置ではない。しかし、運転中の記録が思わぬかたちで手がかりとなる可能性は十分にある。特に、本人が違反に気づいていなかった場合でも、後日届く通知によって自らの行動が可視化されるという現実がある。
だからこそ、運転者には「撮られても困らない運転」を心がける姿勢が求められる。速度を守ることは、事故防止だけでなく、自らを守るための基本でもある。
大切なのは「見られている自覚」を持つことかもしれない。