徐行が求められる場所とその背景

歩行者が横断しようとしている横断歩道も徐行が必要な場所だ。

徐行が義務付けられている場面には一定の共通点がある。たとえば、「徐行」の標識がある箇所、見通しの悪い交差点、道路工事現場、学校や保育園の周辺、または歩行者が横断しようとしている横断歩道などが挙げられる。これらの場面では、飛び出しや障害物の出現といった予測困難な状況が生じやすく、車両が即座に停止できる体勢であることが求められる。

徐行とは、形式的なルールにとどまらず、歩行者や自転車を含めた交通空間の“共存”を表現する行動である。単なる事故回避ではなく、運転者としての配慮と共感が試される場面でもある。徐行の定義は数値によって測れるものではない。仮に時速5kmであっても、スマートフォンを操作しながらの運転では徐行とは言えない。一方で、時速10kmでも前方に集中し、いつでもブレーキを踏める体勢であれば、十分に徐行の要件を満たしていると言える。

結局のところ、徐行とは「スピードを抑えること」ではなく、「いつでも止まれる意識を持つこと」である。これは運転操作以上に、周囲に対する想像力と準備力の問題である。

最徐行というさらに厳しい概念

「徐行」よりさらに慎重な運転が求められる「最徐行」

なお、「徐行」よりさらに慎重な運転が求められる場面では「最徐行」という概念が適用される。これは法令上の正式用語ではないが、実務上は「歩行者と並行して走れる程度の速度」あるいは「歩くよりもやや遅い速度で、即停止が可能な状態」として運用されている。

たとえば、見通しの悪いT字路や通学路など、極めて高い注意が求められる場面では、通常の徐行よりもさらに抑えた速度での走行が求められる。これは「時速5km未満」や「時速3km程度」と解釈されることも多く、歩行者に寄り添う速度であることが基準とされる。

徐行違反の反則金と違反点数

見通しの悪い交差点や徐行標識のある区間での徐行違反は処罰の対象となる。

徐行違反は道路交通法に違反する行為として処罰の対象となる。たとえば、徐行義務のある場面で徐行せずに走行した場合、普通車であれば、反則金は6,000円、違反点数は1点。大型車では反則金は7,000円だ。

これらは見通しの悪い交差点や徐行標識のある区間で義務を怠った場合などに適用される。警察官の目視による摘発のほか、ドライブレコーダー映像や目撃証言が証拠として採用されるケースもある。

徐行すべき場所とはどこか

徐行が求められるのは、ひと言でいえば「先の見通しが悪い場所」である。例えば住宅街のカーブや人通りの多いエリアでは、建物や駐車車両によって視界が遮られ、飛び出しのリスクが高いため、法令上の指定がなくても徐行すべき状況といえる。

加えて標識がない場合でも、法律上「徐行しなければならない」状況は存在する。たとえば、狭い道路で歩行者のそばを通行する際、左折時や道路外への進入・退出時、または身体障害者や幼児のそばを通過する場面などが該当する。つまり危険の兆しを感じたときには、標識の有無に関係なく、自主的に減速し、すぐに停止できる体勢を保つべきである。徐行とは単なる速度制限ではなく、安全を確保するための大切な行動なのだ。