電動アシスト自転車には厳格な基準が定められている

2023年4月、警視庁は「違法電動アシスト自転車」に関する広報資料を公表している。この資料によれば、同年1月、道路交通法の基準を満たさない電動アシスト自転車を販売していた法人と、その代表取締役が検挙されたという。問題となったのは、ペダルをこがなくてもモーターだけで走行できる仕様の車両だ。これは法令上「原動機付自転車」に該当するにもかかわらず、「電動アシスト自転車」として販売されていた。
原動機付自転車は一般的に、ナンバー登録や保安基準への適合、運転免許の所持、ヘルメット着用などが必要となる。しかし、該当車両は購入者に対し、正しい説明がなされていなかったとされる。
そもそも、電動アシスト自転車(駆動補助機付自転車)とは、人がペダルをこぐ力をセンサーで感知し、それに応じてモーターが補助的に駆動力を加える構造の自転車を指す。あくまで「人力の補助」が前提であるため、モーターのみで走行できるものは含まれない。
そして、警視庁によれば電動アシスト自転車には、下記のように道路交通法上の「自転車」として認められるための、厳格な基準が定められているという。
まず、人の力を補うために用いる原動機が、次の「①」から「④」のいずれにも該当するものであること。
①電動機であること
②24キロメートル毎時未満の速度で、自転車を走行させることとなる場合において、人の力に対する原動機を用いて人の力を補う力の比率が、下記に定める数値以下であること。
10キロメートル毎時未満の速度2
10キロメートル毎時以上24キロメートル未満の速度
③24キロメートル毎時以上の速度で、自転車を走行させることとなる場合において、原動機を用いて人の力を補う力が加わらないこと。
④「①」から「③」までのいずれにも該当する原動機について、「①」から「③」までのいずれかに該当しないものに改造することが容易でない構造であること。
さらに、原動機を用いて人の力を補う機能が円滑に働き、かつ、当該機能が働くことにより安全な運転の確保に支障が生じるおそれがないものでなければならない。これらの基準を満たさない車両は「自転車」として扱われず、「原動機付自転車」や「二輪車」として分類されるというわけだ。
そして、消費者庁や警視庁なども、こうした基準を満たさない違法な「なんちゃって電動アシスト自転車」の流通に対して注意喚起をおこなっている。購入時は、販売店に確認するだけでなく、型式認定の有無やアシスト機能の仕様を自らチェックすることが重要だ。
2025年7月現在、依然として違反車両の数は多い模様
上述した同資料では、基準を満たさない「電動アシスト自転車」として10車種の名称が公開された。そして前述のように、この発表を受け、販売事業者およびその代表取締役は、東京都内で実際に該当車両を販売していたことにより検挙された。
ところが、その後の調査でさらに問題が浮上している。国民生活センターが同年9月に公表した資料によれば、警視庁が検挙した事業者によって販売された別の「1銘柄」についても、道路交通法に定める基準に適合していないことが新たに判明したという。この車種は、一定速度を超えてもアシスト機能が停止せず、走行中の安全性に重大な問題があると指摘された。
さらに、センターの報告では、たとえば、「こいでいないのに走り出す」「アシストが強すぎて危険」といったように、ほかにも同様の違法構造をもつ電動アシスト自転車に関する相談事例が全国から寄せられている。つまり、販売ルートやネット通販を通じ、こういった車両の流通が継続している実態が浮き彫りになっているのだ。
そして2025年7月現在、警視庁の発表からすでに2年近くが経過しているにもかかわらず、依然として基準不適合の電動アシスト自転車が流通している。もしこういった車両を公道で使用すれば、電動アシスト自転車の基準を満たさない車両で公道を走行した場合、無免許運転や保安基準不適合による違反と見なされ、罰則を受けるおそれもある。法令順守を前提とした車両選びと、確かな販売業者からの購入が求められている。
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電動アシスト自転車は、見た目は自転車であっても、基準を超えるアシスト力や速度制御の欠如などがあると「自転車」としては認められない。とくに、インターネットで購入した輸入品やノーブランド品では、基準を満たしていないケースも見られる。
そのため、自分が現在乗っている車種が道路交通法に適合しているかどうか、今一度確認しておくことが重要である。知らずに違法車両に乗っていた場合でも、責任は免れないため注意が必要だ。



