なぜ2つ?免許証の暗証番号の仕組み
運転免許証にはICチップが内蔵されており、そこには免許の有効期限、区分、本籍、顔写真といった個人情報が記録されている。この情報へアクセスするためには、2段階の暗証番号が必要だ。
第1暗証番号(暗証番号1)は、氏名や住所など、比較的一般的な情報にアクセスする際に求められる。一方、第2暗証番号(暗証番号2)は、本籍地などのより秘匿性の高い情報を読み取る際に使用される。
つまりこの2つの暗証番号は、情報の機密性に応じたセキュリティの階層を設けることで、不正アクセスや情報漏洩のリスクを下げる仕組みとなっているのだ。この構造は、運転免許証が単なる身分証明書から、IC技術を用いた高度な個人認証ツールへと進化したことを象徴している。
意外と出番は少ない?暗証番号の使用シーン

結論からいえば、免許証の暗証番号を日常的に使う機会は多くない。だが、いざ必要となったときに「番号を忘れていた」「使い方がわからない」とならないよう、使用シーンを把握しておくべきである。
実際に暗証番号が求められる主なケースは以下のとおりだ。
- 運転経歴証明書の発行手続き
- マイナンバーと連携する行政手続き
- 一部の自治体でのコンビニ交付サービス
- 警察署や運転免許センターでのICチップ情報確認
たとえば、マイナンバーカードを持っていない人が住民票などをコンビニで取得する際、代わりに運転免許証のICチップを使用することができる。こうした場面では専用の端末で免許証を読み取り、設定済みの暗証番号を入力することで本人確認が行われる。
ただし、宅配便の受け取りやレンタカーの受付など、日常の多くの本人確認ではICチップや暗証番号を使うことはほぼない。そのため、「一度も使った記憶がない」という人も多いのが実情だ。
暗証番号を忘れたらどうする?

利用頻度が低いため、設定した暗証番号を忘れてしまう人は少なくない。しかも3回連続で誤った番号を入力すると、ICチップがロックされてしまい、それ以降の読み取りが不可能になる。こうなった場合は、運転免許センターや所轄の警察署で再設定手続きを行わなければいけない。再設定には本人確認書類と該当の免許証が必要で、窓口で手続きをすればその場で新しい番号を登録できる。
ただし、ロックされた状態では一部の手続きが進められないケースもあるため、万が一のときに備えて事前に番号を記録しておくことが重要だ。
「使わないから覚えなくていい」は通用しない
「ほとんど使わないから暗証番号は覚えていない」と考えている人も多いだろう。だが実際に必要な場面で番号が分からなければ、証明書の発行や行政手続きがスムーズに進まなくなる可能性がある。
特に、行政サービスのデジタル化が急速に進んでいる現在、運転免許証のICチップがマイナンバーカードの代替として活用される機会も増えている。将来的には、運転免許証一枚でさまざまな手続きを完結できる時代が到来する可能性もある。
そのときに備えて、暗証番号は「いざ」という場面で確実に呼び出せるように管理しておくべきだ。番号そのものを記憶するのが難しい場合は、スマートフォンのパスワード管理アプリや、物理的なメモに控えておくのも有効な方法である。ただし、第三者に見られないよう厳重な管理が必要だ。
小さな数字に、大きな責任

運転免許証の“4桁×2”の暗証番号は、普段はその存在すら意識しないかもしれない。だが、それは単なる数字の羅列ではない。個人情報を守り、公的手続きを安全に進めるための「セキュリティキー」であり、持ち主の責任を伴う情報でもある。
出番が少ないからといって、忘れても構わない番号ではない。デジタル社会のなかで、確実に使える状態にしておくことこそが、これからの賢い免許証の持ち主に求められる心構えだ。