高速道路で逆走が発生する主な原因と相次ぐ逆走事故

高速道路の逆走の原因は、高齢ドライバーによる進行方向の誤認が多い

逆走が発生する背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っている。とくに多いのが、高齢ドライバーによる進行方向の誤認だ。出入口の取り違えや判断の遅れなどが目立ち、警察庁や高速道路会社の調査では、逆走事案の加害者のうち約6割が65歳以上というデータもある。

近年では、カーナビの誤案内による逆走も増加傾向にある。複雑に入り組んだインターチェンジ付近や市街地近くの高速道路入口では、ナビの指示通りに進んだ結果、本来出ていくべき出口から誤って進入してしまうこともある。

発生した逆走事故の中でも、特に深刻な被害をもたらした事例はいくつかある。たとえば、2022年には東北自動車道の福島県内で、80代の男性が約6kmにわたって逆走し、対向してきた車両と正面衝突。乗っていた2名が死亡するという痛ましい事故が発生した。

翌年の2023年には、名神高速道路の滋賀県内で高齢女性が逆走し、大型トラックと激突。さらに2024年には関越自動車道の新潟県内で、逆走車を避けようとした乗用車が急ブレーキをかけたことで後続車が追突し、多重事故に発展。複数の重傷者が出た。

これらの事例に共通しているのは、逆走した本人がその異常に気づいていなかったこと、そして事故がほんのわずかな時間のうちに重大な結末を迎えている点である。

高速道路の逆走撲滅に向け対策強化に乗り出した国土交通省と高速道路会社

「ハンプ」と呼ばれる段差を設置し、走行時の振動によってドライバーに異常を伝える。

相次ぐ逆走事故を受け、国土交通省と高速道路会社は、逆走事故の防止を目的に、全国189か所のインターチェンジやサービスエリアなどを「重点対策箇所」に指定し、対策の強化に乗り出している。

対象となったのは、2025年4月に東北自動車道で発生した逆走事故の進入地点と同様の構造を持つ「平面交差型」のインターチェンジや、過去に死傷事故や複数回の逆走事案が確認された場所などである。

会社別では、東日本高速道路が66か所、中日本高速道路が40か所、西日本高速道路が76か所、本州四国連絡高速道路が3か所、阪神高速道路が4か所となっており、全国的な取り組みが進められている。

これらの地点では、路面に「ハンプ」と呼ばれる段差を設置し、走行時の振動によってドライバーに異常を自覚させるといった対策が講じられる予定だ。視覚的・体感的な警告によって逆走を未然に防ぐ取り組みが、今後さらに広がることが期待されている。

自分が逆走してしまった場合の対処法

万が一、自分が逆走していることに気づいた場合は、冷静に行動することが何よりも重要だ。

まず、できる限り速やかに減速し、安全な場所へ車を停車させる必要がある。その際はハザードランプを点灯させ、周囲に異常を知らせることが欠かせない。停車後も車外に出ることは避け、車内から110番通報を行う。通報の際には、自分が逆走しているという状況と、現在の場所や車種など、把握できる情報を簡潔に伝えることが求められる。

慌ててバックしたりUターンを試みたりするのは極めて危険だ。高速道路では他の車両が高速で走行しており、急な操作はさらなる事故を招く可能性がある。逆走に気づいた時点で進行を止め、誤った判断を重ねないことが何よりも大切だ。

その後は、現場に到着した警察や道路パトロール隊の指示に従い、適切な対応を受けることになる。自らの判断で動こうとせず、専門機関の誘導に身を任せることが、被害の拡大を防ぐ最善の手段となる。

他車の逆走に遭遇した場合の備え

高速道路で逆走車に遭遇した場合、冷静な対応が自分自身の命を守る鍵となる。まず重要なのは、視野を広く保ち、前方だけでなく対向車線側や合流・分岐ポイントなど複雑な構造の場所にも意識を向けることだ。逆走車は予期せぬ方向から現れるため、通常の走行時以上に周囲の状況を注意深く観察することが求められる。

逆走車を目撃した際には、反射的に急ブレーキを踏みたくなるかもしれないが、後続車との距離が十分でなければ多重事故につながりかねない。可能な限りハザードランプを点灯して後続車に異常を知らせながら、徐々に速度を落とし、状況に応じて安全な位置に車線変更して回避するのが望ましい。

また、逆走車を発見した場合は、速やかに110番通報を行うことも重要だ。その際には、目撃した位置(道路名やインターチェンジ名、キロポストなど)、逆走車の車種や色、進行方向などを把握できる範囲で正確に伝えるようにしたい。こうした通報が、次に遭遇するドライバーの命を守る手助けとなる。

逆走を“他人事”にしない意識

逆走を防ぐためには。インターチェンジやサービスエリアで標識をしっかり確認することが重要だ。

高速道路の逆走は、誰か一人の過失ではなく、社会全体の構造や意識に根ざした問題である。自分が加害者にも被害者にもなりうるという前提に立ち、正しい知識と備えを持つことが求められる。標識を確認し、無理な運転を避け、周囲への注意を怠らない。こうした基本の徹底が、高速道路の安全を支える第一歩となる。

逆走は一度発生すれば重大事故につながるため、未然に防ぐための取り組みが何より重要である。そのためには、個人、家族、社会それぞれの立場から意識と対策を講じる必要がある。ドライバー個人としては、インターチェンジやサービスエリアで標識をしっかり確認すること、ナビに頼りすぎず現地の表示を優先すること、そして疲労時や夜間には特に慎重な運転を心がける姿勢が求められる。

家族や周囲の人々も、高齢ドライバーの運転状況を定期的に見守り、認知機能検査の結果を共有しながら運転継続の是非を検討する必要がある。また、運転を控えるよう促す際には、代替手段を一緒に考えることで本人の不安を和らげることができる。

社会全体としては、高速道路会社による逆走防止表示や警告装置の導入、夜間視認性の高い路面整備、そしてテクノロジーによる検知・通報システムの整備が進められている。今後は自動運転技術との連携も含め、逆走対策の強化が一層求められるだろう。