渋滞は2つのタイプに分けられる

渋滞は大きく2つのタイプに分けられる。ひとつは「」、もうひとつは「自然渋滞型」だ。
ボトルネック型とは、インターチェンジの合流地点や料金所、トンネルの入口など、道路が物理的に狭くなる区間で発生する渋滞だ。構造上、通行可能な車両数が一時的に制限されることで、交通の流れが滞る。つまり、道路そのものの設計や構造がボトルネックとなり、渋滞を引き起こす。
一方、自然渋滞型は明確な原因が見当たらないのに、突然交通が詰まる「謎の渋滞」である。とくに高速道路ではこのタイプが多く見られ、「なぜこんな場所で?」とドライバーを困惑させるケースも少なくない。周囲に事故や工事がないにもかかわらず発生するのが、この自然渋滞の特徴だ。
たった一台のブレーキが、渋滞を生む
自然渋滞の核心にあるのは、わずかな減速の連鎖である。たとえば、高速道路を一定速度で走行していた先行車が、前方のわずかな変化に気づいてアクセルを緩めたとする。それを見た後続車は、少しブレーキを踏んで速度を調整する。さらにその後続車も、前車の減速に反応して少し強めのブレーキを踏む。
この「減速の波」は、車列の後方に向かって次第に拡大し、やがて最後尾では停止を余儀なくされるほどの影響をもたらす。減速の原因となった車はすでにその場を離れているにもかかわらず、後続車はどんどん詰まり、渋滞が完成していくのだ。
このように、明確な先頭が存在しないまま生じる渋滞は「幽霊渋滞」とも呼ばれる。ドライバーには前が詰まっている理由が見えず、「なぜここで?」という疑問だけが残る厄介な現象だ。交通工学の分野では「車列の不安定性」が主な要因とされており、ごくわずかな速度変化が大規模な渋滞を招くことは、すでに実験でも確認されている。
合流・追い越し・車線変更が渋滞を助長する
交通の流れを乱す行動として、合流や追い越し、無理な車線変更が挙げられる。これらは一見、個々の運転操作にすぎないが、実際には周囲の車両に連鎖的な影響を与える「渋滞の火種」となり得る。
たとえば、合流地点で加速が不十分なまま本線に入ろうとする車両がいれば、後続車はそれを避けるために減速せざるを得ない。また、渋滞回避を狙って頻繁に車線を変更する車は、周囲のドライバーにブレーキや速度調整を強いることになり、全体の流れが不安定になる。
このような「交通のノイズ」が蓄積すると、本来スムーズに流れていた道路でも渋滞が生じる。運転者の意図にかかわらず、周囲の挙動に干渉すればするほど、道路全体の交通容量を低下させてしまうのだ。実際、高速道路の渋滞調査では、追い越しや無理な合流が集中する地点ほど交通の乱れが生じやすいことが確認されている。つまり、個々の「得」を優先する行動が、全体の「損」につながっているのだ。
上り坂とカーブにも要注意

渋滞の原因は合流や事故だけではない。見落とされがちだが、「上り坂」や「カーブ」もまた、交通の流れを鈍らせる要因となっている。
まず上り坂では、多くの車が無意識のうちに減速する。とくにオートマチック車ではアクセル操作が一定でもスピードが落ちる傾向があり、後続車がそれに反応してブレーキを踏む。こうした減速の連鎖が積み重なることで、「渋滞波」が発生しやすくなる。
また、カーブでは視界が制限されるため、ドライバーが慎重になり、自然と減速する場面が多い。とくにカーブの先が見えない場合、状況の不確実性からさらに速度を落とすことがある。こうした「安全運転」が皮肉にも交通の滞留を招いてしまうのだ。
このように、地形的な要素もまた渋滞の温床となり得る。上り坂やカーブの手前では、速度低下に備えて早めの車間距離の確保と、スムーズなアクセル操作を心がけたい。
渋滞を防ぐにはどうすればよいか

渋滞を完全に防ぐことは困難だが、個々のドライバーの行動によって緩和させることは可能である。そのカギとなるのが、「一定の速度を保つ運転」と「十分な車間距離の確保」だ。たとえば、無闇にブレーキを踏んだり、アクセルを急に踏み込んだりすると、その挙動が後続車に伝わり、車列全体のスムーズな流れを乱す。結果として、自分の一挙動が「渋滞波」の発生源となることもある。
一方、スピードを一定に保ち、前の車との距離をしっかりと取ることで、周囲の車両に無用な反応を強いず、交通の流れを安定させることができる。また、無理な追い越しや頻繁な車線変更は、周囲のドライバーに警戒を強い、加減速を誘発する原因となる。車線を安定的に走り続けるだけでも、渋滞を防ぐ一助になる。
国土交通省でも、こうした走行姿勢を「サグ部(道路のわずかな凹み)での渋滞対策」として推奨しており、高速道路上では看板や電光掲示板での注意喚起も行われている。自らが「渋滞を作らないドライバー」としての意識を持つこと。それこそが、日々の交通を快適にする一歩となる。
渋滞の見えない正体を知ることが第一歩
渋滞とは、単なる交通の混雑ではない。実際には、ドライバーひとりひとりの運転行動が連鎖的に積み重なることで引き起こされる現象だ。
たとえば、先行車がわずかに減速しただけでも、後続車がそれに反応してブレーキを踏み、その動きが連鎖すれば、最終的には「完全に停止した車列」が生まれる。こうした「事故も工事もないのに発生する渋滞」は、誰か一人の過失で起きるものではない。むしろ、多くのドライバーが無意識のうちに、その一因となっている可能性がある。
自分の減速が、数十台先まで波のように伝わる。その結果、見えないところで車列を乱し、予期せぬ渋滞を生んでしまう。そう考えれば、自らの運転が周囲に与える影響の大きさが実感できるはずだ。そのためには、スピードメーターをこまめに確認し、気づかぬうちに速度を落としていないかを意識することが肝要だ。大きな渋滞を防ぐためにも、小さな意識の積み重ねが、渋滞を緩和する確かな一歩となる。
