遮断機が下りても止まらず脱出を最優先に

まず何よりも重要なのは、踏切内にいる状態で遮断機が下り始めたら、ためらわずそのまま前に進んで脱出することだ。
「遮断機が下りた=止まらなければならない」と誤解して立ち止まってしまう人もいるが、それは致命的な判断ミスとなる可能性がある。JAFも「遮断機のバーに接触しても構わないので、まずは踏切から出ることを最優先すべき」と警告している。
遮断機のバーは、接触によって破損しても重大事故を防ぐための“安全設計”となっている。基本的には壊しても賠償を求められることはなく、命を守るためには遠慮なく押し上げて進むべきである。
踏切内での後退は危険、進むことが鉄則
遮断機が下りた場面で慌ててしまい、「後ろに下がればいいのでは」と考える人もいるだろう。しかし、踏切内での後退は非常に危険であり、避けるべき対応である。
後続車がぴたりとついている場合、後退は接触事故を引き起こすおそれがある。さらに、歩行者や自転車がいる可能性もあるため、後方の安全を確認する余裕は通常ない。
混乱のなかで冷静にバック操作をするのは難しく、後退によって事態がさらに悪化するリスクすらある。鉄則は、「とにかく前に出る」ことである。遮断機のバーを押し上げてでも前進する勇気が、自分の命と他人の安全を守る鍵となる。
車が動かないときは「非常ボタン」と「避難」が命を守る

どれだけ万全に整備された車でも、突然の故障やエンストで、踏切内で立ち往生してしまう可能性はゼロではない。そんな万が一の事態に遭遇したとき、何よりも大切なのは迅速かつ的確な行動だ。
まず迷わず行うべきは、踏切付近に設置されている「非常ボタン」を押すことである。このボタンを押すと、鉄道会社へ緊急信号が送信され、列車の運行を止めるための措置が講じられる。列車の運行に影響が出ることを気にするよりも、自分自身、そして列車の乗客・乗務員の命を守ることを最優先に考えるべきだ。
そして、車両がどうしても動かない状況であれば、ただちに車外へ出て踏切の外へ避難する。命を守るためには、車を残してでも逃げる決断が必要だ。
なお、遮断機が完全に下りてから列車が通過するまでの猶予は、おおむね15秒以上とされている。裏を返せば、対応が15秒以内にできなければ、致命的な事故につながる可能性があるということだ。
一瞬の判断が生死を分ける。非常時の行動を、日頃から頭の中でシミュレーションしておくことが、命を守る最善の備えとなる。
踏切で立ち往生しないために、事前の判断が命を守る

踏切内でトラブルに見舞われないためには、まず「そもそも踏切内に入らない」判断が重要だ。
多くの事故は、「前の車についてなんとなく入ってしまった」「前方が詰まっているのに渡り始めた」ことに起因している。特に、前が渋滞していて踏切内に収まりきらない恐れがあるときは、決して無理に入ってはいけない。
踏切を前にしたら、対向車線や信号、前方の車列の流れをよく観察し、「自分の車が一度で通過できるか」を冷静に見極めよう。大型車やトラックの直後に続く場合は、その影で前方の様子が見えにくくなるため、特に注意が必要である。
また、踏切内でのギアチェンジは控えるべき行為だ。クラッチ操作のタイミング次第ではエンストのリスクがあり、これが事故の引き金になるケースもある。踏切を渡るときは、あらかじめシフト操作を済ませ、スムーズな通過を意識してほしい。
迷ったら進む、それが命を守る判断だ
踏切で遮断機が下りるという非日常の状況は、誰にとっても強い緊張と混乱をもたらす。しかし、そうしたときこそ冷静な判断と「命を守る行動」が求められる。
遮断機のバーに接触しても構わない。バーは安全のために壊れやすく設計されており、破損したからといって損害賠償を求められるケースは基本的にない。ためらわず、車を前進させて踏切の外へ出ること。それが何よりも優先されるべき行動である。
たとえ非常ボタンを押す状況に追い込まれても、恐れる必要はない。ボタンひとつで電車の運転士に異常を知らせることができ、多くの命が救われる可能性があるのだから。
「踏切内では止まらない」「遮断機が下りても進む」「非常ボタンは迷わず押す」。この3つの原則を、いざという時のために心に刻んでおきたい。
命を守る判断とは、決して特別な行動ではない。日常の中で“もしも”を想定し、正しい知識と意識を持つことが、最終的に自分と周囲の安全を守る最強の手段となるのだ。
