進化する身分証「マイナ免許証」って何?

「マイナ免許証」はマイナンバーカードに運転免許証の情報を統合したもので、スマートかつ効率的な本人確認を実現する新たな身分証ツールだ。マイナ免許証のメリットとして特に注目されるのは、住所変更手続きの簡略化や更新手数料が従来より安くなる点だ。
導入からわずか数日で、全国で11万7,589人がマイナ免許証を取得し、うち約4万4,543人が「マイナ免許証のみ」を選択したことが明らかになっている。一方で約73,000人は「マイナ免許証と従来の免許証を両方」保持するという、慎重な移行を選ぶ層も一定数存在する。
ちなみに2024年12月から開始された「マイナ保険証」を見ると、2025年6月時点で利用率は30.64%にとどまる。このような利用状況から、マイナ免許証の普及はまだ限定的ながらも、一定の注目と実用性が確認されていることが伺える。
初動に予想以上の保有者数が増加した理由

マイナ免許証の施行直前の調査では、約9割が「マイナ免許証を認知している」と回答。そのうち「内容も把握している」と回答したのは46.8%、「聞いたことはある」と回答したのが43.2%だった。その上で、「所有したい」と回答した人が約3割存在し、最も多かったのが42%を占めた「様子見したい」であった。この結果からも、潜在的な需要が高かったことが示されている。
「所有したい」と答えた層にとって、最も支持された理由は「身分証をまとめられるから」で63.6%に上る。住所変更の簡略化、オンライン講習受講、更新費用の負担軽減などの利便性も続いて高評価だった。つまり、複数の制度のデジタル化を一本化した「マイナ免許証の利便性」に実感を持つ層が一定数いたことが、取得の動機となっているわけだ。
現状におけるマイナ免許証の課題
最大の問題点は、マイナ免許証には運転免許証としての情報(免許番号や有効期限など)が券面に記載されておらず、ICチップ経由でしか確認できないことだ。
これにより、例えば古本屋やリユースショップなどで免許証記載情報を控える業務形式では対応が困難になってしまう。また、現状のレンタカーやカーシェアサービスでは、マイナ免許証単体では利用できないケースが多い。具体的には読み取りアプリで情報を提示しないと貸渡し不可とする店舗があり、利便性が低下する可能性がある。
マイナ免許証は交通用のICカード一体型となるため、紛失時には再発行にかなりの日数を要してしまう。通常の運転免許証の即日再発行に比べ、数週間単位の停止期間が発生し、運転に支障をきたす恐れがある。
ICチップに格納された情報は、読み取りに電子端末やアプリの使用が必要だ。高齢者にとっては操作が煩雑で提示が難しい場面があり、「身分証として使いづらい」と感じるケースが散見される点も課題のひとつだ。さらにマイナ免許証に運転免許情報を一体化することで、誤った情報の紐付けや紛失・盗難による個人情報漏洩への懸念がある。
2025年6月時点で86万人が取得、今後は新たなシステム改善により保有者数はどうなるか?
マイナ免許証の保有者数は2025年6月末時点で約86万人以上が取得しており、その約7割は従来の免許証を併用する形を選択している。今後も保有者数が伸びていくことが予想されるが、解決すべき課題も残る。
現状、マイナンバーカードを更新すると、マイナ免許証に記録された免許情報が引き継がれず、再度一体化の手続きが必要だ。この点については、2025年9月1日からシステムが改善され、自動引き継ぎが可能になる予定である。
今回のシステム改善により、マイナンバーカード更新時の免許情報引き継ぎが自動化されることは、利用者にとって大きなメリットだ。従来は、カード更新のたびに警察署や運転免許センターでの再手続きが必要であったが、2025年9月以降はオンライン上で完結するため、手間や時間の負担が大幅に軽減される。
また、デジタル社会における「身分証明の一元化」は今後の行政DXの基盤でもあり、行政手続きやオンラインサービスの利便性を高める可能性を秘めている。特に、金融機関やレンタカー会社など、本人確認が必要な場面での活用が広がれば、マイナ免許証の存在感は一層高まるはずだ。
一方で、セキュリティ対策や個人情報保護、システム障害時のリスクなど、課題は依然として残っている。今後は政府・自治体・民間事業者が連携し、利用者が安心して使える環境を整備することが求められる。