ガソリンが安い県
統計的に見ると、愛知県・岐阜県・三重県といった中部地方はガソリン価格が全国的に安い傾向にある。その主な理由は次の通りである。
まず、中京地区には製油所や油槽所が集中しており、供給拠点からの距離が近いため輸送コストを抑えられる。さらに、自動車利用が盛んな地域でガソリンスタンドの数も多く、事業者間の競争が激しいことから価格が下がりやすい。
また、需要が大きいため規模の経済が働き、仕入れや流通コストの効率化にもつながっている点も理由のひとつだ。これらの条件が重なり、中部地方は全国的に見ても「ガソリンが安い県」としてランキング上位に入ることが多い。
ガソリンが高い県
一方で、長崎県・鹿児島県・沖縄県や北海道の一部地域では、ガソリン価格が全国的に高い傾向にある。最大の要因は輸送コストだ。離島や山間部では製油所からの距離が長くなるだけでなく、フェリー輸送など特殊な手段が必要となり、その分コストが上乗せされる。
また、人口が少なく需要が分散している地域では、ガソリンスタンドの数も限られ、規模の経済が働きにくい。さらに、過疎地では競合店舗が少なく、価格競争が起こりにくいため相場が高止まりしやすい。特に沖縄県は離島輸送が不可避であり、こうした条件が重なって全国平均より高い価格が常態化している。
2025年8月現在のガソリン価格ランキング

最新の週次統計によれば、ガソリンが最も安いのは青森県で、レギュラー平均価格は 165.1円/L。続いて愛知県が 165.6円/L、奈良県が 165.9円/Lと並び、いずれも全国平均(170.2円/L)より約5円安い水準にある(出典:gogo.gs)。これらの地域は製油所や流通拠点に近く、スタンド間の競争も活発なため、価格が安定して低めに推移している。
一方で、最も高値を示したのは鹿児島県で 184.5円/L。次いで長崎県が 183.2円/L、長野県が 181.8円/Lとなっており、全国平均を10円以上上回る結果となった。これらの県は輸送コストの高さやスタンド数の少なさといった条件が影響しており、価格が高止まりしやすい状況にある。
ガソリンは値下げ、軽油は据え置き? 暫定税率廃止がもたらす今後の影響

ガソリン価格は毎日の生活に直結するコストであり、地域差は家計に無視できない影響を与える。実際、2025年8月時点で最安の青森県(165.1円)と最高の鹿児島県(184.5円)では、20円近い差があり、満タン給油1回で千円以上の違いになる。
こうした中で注目されているのが、暫定税率の廃止だ。暫定税率は、本来の本則税率に上乗せする形で導入されたもので、道路整備財源の確保を目的としながら数十年にわたり事実上「恒久税」として機能してきた。ガソリン1リットルあたり25円前後を押し上げていたとされ、その存在は長らく消費者にとって負担の象徴だった。
今回の廃止により、ガソリン車ユーザーの家計負担は確実に軽減される見通しであり、地域や生活スタイルによっては年間数万円規模の支出削減につながるケースも考えられる。
一方で、物流コストの面では注意が必要だ。輸送業界の主役であるトラックの多くはガソリンではなく軽油を燃料としており、今回の暫定税率廃止の対象に軽油は含まれていない。そのため、ガソリン価格の低下は家計やガソリン車利用者に直接的な恩恵を与えるものの、物流全体のコストを劇的に押し下げる効果は限定的だと見られている。
それでも、個人の移動コストが下がることは地方生活者や通勤・通学に車を使う層にとって大きなメリットであり、ガソリン税制の変化は日常生活の負担感を和らげる第一歩となるはずだ。与野党で審議されている暫定税率の廃止に関する今後のニュースに注目したい。