ハザードマップを活用した避難行動は徒歩による移動が原則

昨今、日本各地ではゲリラ豪雨が頻発し、冠水被害や突発的な水害が相次いでいる。さらに、直近ではロシアで発生した大規模地震が日本にも津波注意報をもたらすなど、遠く離れた災害であっても影響が及ぶことが、改めて浮き彫りになった。災害は突然訪れ、決して他人事では済まされない。
こうしたリスクに備える第一歩となるのが、平時からの情報確認である。

自治体や国が公開する「ハザードマップ」を活用すれば、浸水想定区域や土砂災害警戒区域、津波浸水想定などを事前に把握できる。
また、国土交通省や国土地理院が運営する「ハザードマップポータルサイト」では、洪水や高潮といった複数の災害リスクを地図上に重ね、さらに指定緊急避難場所の位置を確認することも可能だ。つまり、自宅や職場周辺に潜む危険を理解することが命を守る起点となる。

では実際に避難が必要となったとき、どのように移動すべきなのだろうか。たとえば、冠水道路でクルマを使えばエンジン停止や立ち往生のおそれがある。くわえて、渋滞によって避難が妨げられるリスクも高い。
バイクや自転車も同様に、濡れた路面で制動が効きにくく、冠水箇所では転倒の危険が増すことはいうまでもない。したがって、災害時の移動手段としてこれらを選ぶのは適切ではないといえるだろう。

国交省も、「どのルートで避難するかを事前に確認しておくことが命を守る」と強調しており、それは徒歩での移動を前提とした考え方である。徒歩なら狭い路地や冠水を避けたルートを選びやすく、緊急車両の妨げになることも少ない。
さらに、道路が亀裂や陥没で寸断され、信号も停止して交通が麻痺するリスクから、地震の発生時にも徒歩避難が基本とされている。特に、都市部ではクルマやバイクなどでの避難は緊急車両の通行を妨げかねない。実際、内閣府や消防庁の指針でも「避難は徒歩が原則」とされている。
また、自治体の防災マニュアルでも「高齢者や障害のある方を伴う特別な場合を除き、自家用車避難は原則推奨されない」と明記されている。避難所の多くは徒歩での到達を前提に整備され、災害種別ごとに最適な施設が指定されているのだ。
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結論として、豪雨や洪水、さらには地震による被害を想定しても、避難は徒歩で安全なルートを確保することが大原則だ。ハザードマップを活用してリスクを把握し、平時から最寄りの避難所や経路を確認しておくことこそが、災害大国で生きる私たちにとって命を守る行動となる。