新車の納期が依然として長期化する背景

半導体のイメージ写真
一時期は自動車のみならず、さまざまな所で半導体不足に陥っていた

過去には半導体不足やコロナ禍による素材供給の停滞が大きく影響し、多くの新車が納車まで半年以上を要する状況にあった。その後、世界的な物流網の改善や生産体制の立て直しが進み、かつてのような混乱は落ち着きを見せている。

しかし2025年秋の時点でも、依然として半年以上の納期を示すモデルは存在している。

EV充電器の場所の写真
ハイブリッドモデルは人気がありその分手に届くまでが長いとか。

これは需要の集中や生産計画の偏りなど、個別の事情が影響しているためである。とくにハイブリッドやEVといった先進モデルは人気が高まり、生産枠を超える受注が続いている。結果として「供給が戻ったから短納期になる」とはならず、むしろ車種によっては長期化が定着しているのが現状である。

たとえば、ホンダでは販売店向け資料に基づき具体的な出荷予定が示されている。「フィットe:HEV」は2025年12月から2026年1月、「シビックe:HEV」は2026年2月から3月にかけての工場出荷が予定されている。契約から納車まで半年以上待つ見通しであり、購入者にとっては計画的な判断が必要となる。

一方で「フリード」や「N-BOX」については即納用の在庫が数十台単位で確保されている。すぐに乗り出せる状況が整っているため、同じホンダでもモデルによって大きな差が生じていることが分かる。このように、ホンダのラインアップは「半年以上待ち」と「即納可能」という二極化した状況にあると言える。

鍵を渡している写真
納車の時のイメージはこのような感じだろうか。

また、日産は公式サイトで工場出荷目処を公表しており、透明性が高いのが特徴である。その中で「クリッパーEV」は約6ヶ月、「クリッパーバンGX」は4〜5ヶ月と長期の待ち時間を伴う。一方で、「ノート」や「エクストレイル」は1ヶ月程度とされ、極めて短期間での納車が可能な状況である。

同じメーカーでも商用車は待ち時間が長く、量販モデルは早いという対照的な状況になっている。これは電気自動車への需要増加と生産能力のバランスに起因している。需要が集中する一部車種ではどうしても待ち時間が膨らむのである。

一方、マツダの工場出荷目処を見ると、全般的に短納期での出荷が可能となっている。「CX-5」や「MAZDA3」は1ヶ月前後、「CX-80」や「ロードスター」も1〜1.5ヶ月とされ、いずれも比較的短いスパンで納車が進む傾向にある。現状では大幅な遅れは見られず、消費者にとっては安心できる状況といえる。

納車の丸がついたカレンダーの写真
「工場出荷目処」と「実際の納車時期」を混同すると大きなズレが生じる可能性がある。

ただし、注意が必要なのは「工場出荷目処」と「実際の納車時期」は異なるという点である。工場を出てから実際に乗り出せるようになるまでには、輸送や登録作業が必要であり、数週間から1ヶ月程度の追加期間を見込まなければならない。

以上を踏まえると、「新車は半年待ち」という言葉は決して誇張ではないことがわかる。ホンダの一部ハイブリッドや日産の電動商用車では、実際に半年以上の待ち時間が発生している。ただしマツダのように短期間で納車可能なケースも多く、メーカーやモデルによって事情は大きく異なる。

このため購入検討者は「納期」と「工場出荷目処」の違いを理解し、どの段階の数字が示されているのかを確認する必要がある。

さらに、人気車種や新型モデルはどうしても注文が集中しやすく、納期が長期化する傾向にある。反対に、即納在庫があるモデルや量販車種であれば、短期間で乗り出すことができる。この差を理解して選択することが、今の新車購入では不可欠であるといえる。

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「半年待ち」は大げさではなく、実際に発生している現象である。ただし一律ではなく、モデルやメーカーによって差が大きい。

納期と出荷目処の違いを理解したうえで確認を徹底することが、納車を待つストレスを軽減し、満足度の高い新車購入につながるだろう。