【白黒ツートンが「警察の象徴」となった理由】

日本のパトカーは白と黒のツートンカラーが採用されている。

交差点や高速道路の合流点で、赤いランプを光らせながら走るパトカーを見かけることは珍しくない。遠くからでもひと目で分かるその姿は、まさに「警察車両の象徴」といえるだろう。そして、白と黒のツートンカラーは、どの地域にいても同じ印象を与え、安心感や緊張感を同時に生み出している。

では、なぜ日本のパトカーはこの色に統一されているのか。兵庫県警によると、現在のデザインは「一般市民が親しみやすく、誰の目にもパトカーと分かるように検討された結果」であるという。

パトカーのこの配色は法律で定められているわけではないが、道路交通法施行規則では「容易に識別できるように塗装しなければならない」とされており、都道府県警が運用する公用車として視認性が求められてきた。そのうえで、「白の反対色である黒を下半分に配することで、より鮮明に映る」という理由で、現在のデザインになっているのだ。

また、この配色となったのは、視認性と清潔感が追求された結果でもある。当初の警察車両は白一色であったが、汚れが目立ちやすく、一般車両との区別もつきにくかった。

そこで、視認性と清潔感を両立させるために、車体の下半分を黒に塗る方式が考案されたのである。この新しい配色が正式に全国へ広まったのは1955年(昭和30年)だった。

以降、白黒ツートンは「秩序」「威厳」「公正」を象徴するデザインとして定着し、どの地域でも同じ姿が見られるようになった。その統一感こそが、市民に安心感と信頼を与える要因になっている。結果として、どの地域に行っても同じ見た目であることが、市民の安心感と信頼を生む要因となった。

一方、海外の警察車両を見てみると国によって配色は大きく異なる。たとえば、イギリスでは黄色と青の反射パターン、いわゆるバッテンバーグ・マーキングを採用し、昼夜問わず遠方から視認できるよう設計されている。

また、ドイツはかつて緑と白を使っていたが、現在はEU統一基準に沿って青と銀をベースに変更された。

ドイツの旧パトカー、日本の白黒とは違い緑と白のカラーになっている。
EUに所属するフランスのパトカー。ボディーだけではなくランプにも青が使用されている。

他方、アメリカでは州ごとにデザインが異なり、白地に青や金のストライプを入れるパターンが多い。この配色について、青は「信頼」や「安心」を象徴する色として選ばれ、白と組み合わせることで落ち着いた印象を与えるという狙いがある。

海外メディアの心理学的分析によれば、黒と白のコントラストは人の視覚に強く訴える効果を持ち、「権威と秩序を象徴する色」として受け止められているという。

明暗の境界がはっきりした配色は、人の記憶に残りやすく、犯罪抑止の観点でも有効とされる。この点において、日本のパトカーも同様に、ただの慣例ではなく心理的な効果を意識した設計といえる。

また、白黒の組み合わせは、社会的にも「清廉」と「強さ」という二面性の表現となっている。警察という存在が市民の安全を守りつつも、法の執行者として厳格であることを示す意味合いが込められているのである。

一見すると単純な色使いだが、そこには秩序を視覚的に伝えるデザイン思想があるといえる。

同じくアメリカのFBIが使用しているパトカー。日本のものと同じく白と黒の組み合わせが使われている。
同じくアメリカのFBIが使用しているパトカー。日本のものと同じく白と黒の組み合わせが使われている。

また、時代の変化とともに、警察車両には多様な装備が加わってきた。デジタル表示板や車載カメラ、LED警光灯などが整備されてきたが、ボディカラーだけは一貫して変わらない。その不変性こそが、警察活動の継続性と信頼性を象徴しているといえる。

パトカーの白黒ツートンは、1955年の採用から70年近く経った今も、日本の風景の一部として根付いている。色の選択は単なるデザインではなく、社会に対するメッセージであり、法の秩序を象徴する存在として機能しているのである。

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パトカーの白黒ツートンは、警察の威厳と市民の安心を同時に伝えるデザインとなっている。その単純な配色にこそ、長年受け継がれてきた信頼の象徴が宿っているのである。