進化するサービスエリア。変化の背景にあるものとは?

各高速道路会社は、SA・PAの商業化・サービス向上・収益強化をおこなっている。

休日にクルマで出かけた際、「せっかくだから、あのサービスエリアにも寄ってみよう」と思った経験を持つ人は多いはずである。

かつては単にトイレ休憩や給油をおこなうだけの場所だったSA・PAが、いまや観光スポットや買い物目的の立ち寄り先として注目を集めている。この変化の背景には、運営の仕組みが大きく関係している。

2005年に日本道路公団が民営化され、NEXCO東日本・中日本・西日本が発足して以降、制度・組織改変のなかで、SA・PAを含む関連施設の商業化・サービス向上・収益強化してきた。

これにより、各社は単なる休憩所の運営ではなく、利用者が楽しめる空間づくりへと舵を切ったのである。そして、その結果として、施設の構成や運営スタイルは大きく変わった。

海老名サービスエリア の写真
海老名SA

たとえば神奈川県の「海老名SA」では、地元の名産品や人気菓子を扱う店舗が立ち並び、週末には観光地のような賑わいを見せる。

一方、首都高速の「大黒PA」ではクルマ愛好家が集い、カスタムカーやスポーツカーを眺めながら交流する姿が見られる。大黒PAは首都高湾岸線と横羽線を結ぶ位置にあり、アクセスが良いことから自然とクルマ好きの集合地点となった。

週末には希少車やチューニングカーが並び、写真撮影や情報交換を楽しむ人々で賑わう。この特性が、単なる休憩所ではなく“クルマ文化を体感できる場”としての魅力を高めている。

このように、SAやPAは「商業型」と「文化型」という二つの方向性に形成され、それぞれの特色を活かした発展を遂げている。まず、商業型の施設では地域と連携した観光促進が進められている。

NEXCO各社は地方自治体や生産者と協力し、特産品販売や地元食材を使ったメニューの提供を強化してきた。これにより、高速道路上で地域の味や文化に触れられるようになり、通過点だった道路が地域経済の循環を支える装置となった。

また、地元の観光名所へのアクセス拠点としても機能しており、「目的地までの道中を楽しむ」という新しい旅の形が定着している。

夜の大黒PA
首都高速湾岸線大黒PA

一方で、首都高速湾岸線大黒PAのような文化型の拠点では、クルマ好きのコミュニティが自然発生的に生まれ、イベント開催や情報交換の場として利用されている。

ただし、マナー問題や騒音トラブルも指摘されており、運営側は長時間駐車を控えるよう啓発活動をおこなっているという側面もある。それでも、こうした場所がクルマ文化を支える役割を担っていることは確かである。

このように、SAやPAは、経済と文化の両面から発展を遂げてきた。従来の「休憩するだけの空間」から、「過ごす」「体験する」「交流する」空間へと進化しているのである。

駿河湾沼津SAの写真
駿河湾沼津SA

また、施設内には地元グルメを楽しめるレストランや、宿泊施設、温泉、遊具広場などが整備され、家族連れでも一日過ごせる環境が整いつつある。

たとえば、新東名高速の「駿河湾沼津SA」では、展望デッキから駿河湾を一望でき、地元の海産物を使ったレストランも併設されている。さらに、東海北陸道の「城端SA」には宿泊施設「桜ヶ池クアガーデン」が隣接し、天然温泉での入浴も可能である。

海老名サービスエリア の写真
EXPASA海老名SA

NEXCO中日本は、一部の大型サービスエリアに「EXPASA(エクスパーサ)」を、NEXCO東日本は「Pasar(パサール)」という商業施設をつくり、各所の魅力を打ち出している。

こうした取り組みが奏功し、SAやPAは旅行計画の中で寄り道先ではなく“目的地のひとつ”に位置づけられるようになった。いわば、高速道路を走る楽しみが「移動そのもの」から「移動中の体験」へと変化したとも言える。

それは、経済合理性の追求だけでなく、ドライバーや家族が過ごす時間を豊かにするという文化的側面も持っている。

さらに、近年では各地のSA・PAで地元イベントや限定メニューが開催されるなど、地域の魅力発信拠点としての機能も強まっている。こうして、SAやPAは単なるインフラの一部ではなく、人と地域をつなぐ“体験型空間”へと進化してきたのである。

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SAやPAのテーマパーク化は、移動の途中に新たな発見をもたらす存在となった。今や、高速道路は「通る道」ではなく「楽しむ道」へと姿を変えている。

地域の魅力を発信し、人と場所をつなぐ旅の目的地として、これからも進化を続けていくかもしれない。