なぜ構造変更が必要なのか
車検証に記載されている内容と実際の車の状態が異なると、その車は「登録内容と異なる車両」とみなされる。この状態で公道を走ることは、道路運送車両法違反にあたり、取り締まりや罰則の対象になる。
構造変更は、こうした違反を防ぎ、安全性と適法性を確保するための仕組みだ。検査を通すことで、車が法令で定められた保安基準を満たしているかどうかが確認される。
言い換えれば、構造変更は「改造した車を合法的に走らせるためのパスポート」のような役割を果たしているのだ。
構造変更が必要になるケース

では、どのような改造を行った場合に構造変更が必要になるのだろうか。
国土交通省の基準では、車検証に記載されている項目(寸法・重量・乗車定員・用途など)に変更がある場合が対象とされている。
たとえば以下のようなケースが該当する。
- エンジンを載せ替えた場合
- サスペンションを変更し、全高が大きく変わった場合
- 車体の一部を切断・延長した場合
- 車いす仕様車など、乗車定員や用途を変更した場合
- バンをキャンピングカー仕様に改造した場合
一方で、ホイールやマフラーの交換、ライトのLED化など、外観の一部変更や性能に影響しない軽微な改造であれば、構造変更の対象外となる。
ただし、改造内容が安全性や排出ガス性能に関わる場合は、構造変更が必要になる可能性があるため、判断に迷ったら管轄の陸運支局に確認するのが確実だ。
構造変更検査の流れ

構造変更を行う際は、陸運支局で「構造等変更検査」を受ける必要がある。
手続きの流れはおおむね以下のとおりである。
- 改造を実施する(または専門業者に依頼)
- 必要書類を準備(車検証、改造概要書、重量証明など)
- 陸運支局に申請し、検査を受ける
- 検査に合格すると、新しい車検証が交付される
このとき重要なのは、検査に合格しなければ公道を走れないという点だ。
検査では、寸法・重量・安全装置・灯火類などが保安基準に適合しているかを細かくチェックされる。構造変更後の車検証には、新しい寸法や重量が正式に記載されるため、以降は合法的に走行できるようになる。
構造変更を怠った場合のリスク
構造変更が必要な改造を行っていながら手続きを怠ると、整備不良車両として取り締まりの対象になる。また、事故を起こした際には、任意保険が適用されない可能性もある。
さらに車検に通らず、結果的に公道を走行できなくなるケースも多い。「見た目だけ少し変えただけ」と油断していると、思わぬリスクを招くことになる。
たとえ軽微な改造であっても、安全性や寸法に関わる変更を加えた際は、必ず構造変更の要否を確認することが大切だ。
構造変更と車検の違い
構造変更検査と車検は似ているが、目的が異なる。
車検は「現状の車が安全かどうか」を確認する定期検査であるのに対し、構造変更検査は「改造によって変更された構造が法的に認められるか」を確認するための検査である。
たとえば、車高を変更した場合、車検では現状の車高が基準内かどうかを確認するだけだが、構造変更検査では車高そのものを変更したことを法的に登録し直す手続きだ。
つまり、車検は「維持のための検査」、構造変更は「変更のための検査」と言える。
構造変更は「合法改造」への第一歩

構造変更とは、改造した車を法の下で正しく走らせるための重要なプロセスである。
ルールを守って検査を受ければ、安心して自分好みのカスタムを楽しむことができる。逆に、手続きを怠ると、車検不合格や罰則、保険適用外といった大きなリスクを抱えることになる。
改造車文化は、ルールを守りながら楽しむことでこそ成り立つ。構造変更はその出発点であり、合法的にカスタムを楽しむための通行証とも言える。
安全・適法・美しい改造を目指すなら、まず構造変更の仕組みを正しく理解しておきたい。