視力にかかわらず、着用義務がある
結論は明確だ。その日の見え方に関係なく、運転中は必ず眼鏡やコンタクトを使用する義務がある。免許条件に従わずに運転する行為は免許条件違反で、違反点数2点・反則金は普通車7,000円(車種により異なる)となる。
人間の視力は体調や照明で変動する。昼間は見えても夜間に甘くなることは珍しくない。「眼鏡等使用」は、免許取得時の検査結果に基づく法的な条件であり、本人の主観で外すことはできない。
条件違反で事故を起こせば行政処分に加え、保険金が減額・免責となる可能性もある。
「今日は見えているから大丈夫」は通用しない

人間の視力は、日々の体調や疲労、照明環境によって大きく変化する。昼間は見えても夜間に見づらくなることもあり、瞬間的な見えているつもりが事故の原因になるケースは多い。
「眼鏡等使用」という条件は、あくまで免許取得時の検査結果に基づいて設定される法的条件であり、本人の感覚による判断は考慮されない。そのため、「今日はよく見えるから外して運転した」などの理由は、違反時の弁明として認められない。
もし裸眼で運転していて事故を起こした場合、免許条件違反としての行政処分だけでなく、保険金の減額・免責の可能性も指摘されている。
損害保険会社によっては「法令違反状態での運転」と判断されることがあるため、リスクは小さくない。
「眼鏡等使用」の対象と基準

普通自動車免許の視力基準は両眼で0.7以上、片眼でそれぞれ0.3以上と定められている。
この条件を満たせない場合、眼鏡やコンタクト等の視力補正具を装着した状態で検査を受け、基準クリアで免許の取得・更新は可能だが、その際は免許証に「眼鏡等使用」の条件が付く。
片眼が0.3未満等の場合の代替要件(他眼視野150度以上など)も定められている。
これは、「運転時には常に補正具を装着しなければならない」という意味であり、視力が良好に見える日であっても例外ではない。
なお、「眼鏡等」とは眼鏡やコンタクトレンズに限らず、オートバイや原付免許で使用される矯正ゴーグルなども含まれる。つまり、運転中の視力補正手段が何であっても、基準を満たす状態を維持することが義務づけられているのだ。
条件解除の手続き

レーシックやICL(眼内コンタクトレンズ)などの視力矯正手術によって、裸眼でも視力基準を満たすようになった場合は、「条件解除」という手続きを行うことで、運転免許証に記載された「眼鏡等使用」を削除することができる。
手続きの流れは比較的シンプルだ。
運転免許試験場(免許センター)、または条件解除に対応している一部の警察署で視力検査を受ける。その結果、裸眼で視力基準(普通自動車免許では両眼で0.7以上、かつ片眼それぞれ0.3以上)を満たしていれば、「眼鏡等使用」の条件が解除された新しい免許証が交付される。
免許センターであれば、当日中に新しい免許証が発行されることも多い。
また、免許の更新時にも視力検査が行われるため、その際に基準を満たしていれば自動的に条件は解除される。ただし、更新前に視力矯正手術を受け、視力が安定している場合は、早めに条件解除を申請しておくのが望ましい。
不要な条件が残ったままでは、たとえ裸眼で基準を満たしていても「眼鏡等使用」の条件に違反していると見なされるおそれがある。
なお、角膜矯正用コンタクトレンズ(オルソケラトロジー)のように「装着をやめると視力が戻るタイプの矯正」は、恒常的な視力回復とみなされず、条件解除の対象外となる場合がある。申請前に、必ず運転免許センターで確認しておきたい。
「もう見えるから外しても大丈夫」ではなく、正式な手続きを経て条件を解除することが、安全かつ法的にも正しい対応である。
コンタクトを紛失・破損した場合
コンタクトレンズを使用しているドライバーがよく直面するのが、「片方を落とした」「走行中に外れた」といったトラブルだ。このような状態で運転を続けることは、免許条件違反にあたるだけでなく、極めて危険な行為でもある。
片眼だけで運転すると、立体視が失われ、距離感を誤りやすくなる。また、片側の視野が狭まり、右左折時の安全確認や車線変更の判断が遅れやすい。
とくに夜間や雨天時など、視界が悪い状況ではそのリスクがさらに高まる。もしコンタクトが外れた、破損した、または曇って視界が不安定になった場合は、すぐに安全な場所に停車することが最優先だ。
そのうえで、予備のコンタクトレンズや眼鏡を使用してから運転を再開するようにしよう。また、こうしたトラブルに備えて、予備の補正具を車内に常備しておくことも安全運転を続けるための基本的な備えである。
一見「片目くらい平気」と思える状況でも、運転中の情報の約9割以上は視覚から得られる。視力の確保はドライバーの義務であり、自己判断による無補正運転は、安全面でも法令面でも決して見過ごせないリスクを伴うのだ。
ルールを守ることが「安全運転」そのもの

「眼鏡等使用」の条件は単なる形式ではなく、安全運転のための最低限のルールである。運転免許証にこの記載がある人は、視力の良し悪しにかかわらず、常に補正具を使用して運転する義務がある。
自己判断で外すことは、違反点数・反則金の対象になるだけでなく、事故時のリスクにも直結する。もし視力が回復した場合は、正式な「条件解除」を受けてから運転すればよい。
安全に走るための最も簡単な対策は、「免許証に書かれている条件を守ること」。それが、ドライバーとしての責任であり、安全社会の第一歩である。
