水素仕様のトヨタ・センチュリーSUVを目撃

年末の喧騒とクリスマスムードが入り混じる都内某所の水素ステーションで目に飛び込んできたのは、明らかに場違いとも言える異様な存在感を放つ一台だった。

水素充填を受けていたのは、トヨタ・センチュリーSUV。しかも、ただのショーカーや展示車ではない。どうやら“走るための実働車”のようだ。

センチュリーといえば、言わずと知れたトヨタの最高級車。SUV化された現行型もV8+ハイブリッドという構成が知られているが、水素とはまったく結びつかない存在だ。現場で充填作業に携わっていた関係者に話を聞くと、詳細な技術説明こそ得られなかったものの、興味深い証言が飛び出した。

このクルマ、第102回 東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の大会本部車として用意されたものらしいのだ。つまり、市販モデルとは別枠で仕立てられたイベント専用の水素仕様センチュリーSUVというわけだ。

リアゲートを開くとコンパクトな水素タンクらしきものが設置されていた。

目視できた範囲では、水素タンクは非常にコンパクト。満充填時の航続距離はおよそ120km程度とされ、長距離移動を前提とした仕様ではないという。エンジンの代わりに燃料電池を搭載し、水素と酸素の化学反応で発電したモーターで駆動するFCEVシステムは、あくまで「無音・無排出」での走行を目的とした、特別なパッケージだと予想できる。

充填を終えた車両は、そのまま箱根駅伝本番に向けたラッピング作業へと移行し、沿道に集まる観客の視線やテレビの前で観戦する駅伝ファンを意識した、格式と未来感を併せ持つ演出が施される。

2026年1月2日、箱根路を先導するのは、もしかすると日本最高級SUVの“水素というもうひとつの未来”。トヨタが水面下で進める次の一手、そのヒントがこの一台に隠されているのかもしれない。