GTIという名に込められた想いは、誰もが楽しめる高性能という価値

フォルクスワーゲンGTIとは、「Gran Turismo Injection(グラン・ツーリスモ・インジェクション)」の略称である。実用的なハッチバックに高性能エンジンとスポーティーな走りを融合させた「ホットハッチ」というジャンルを切り拓いた、いわばその元祖であり、代名詞的な存在だ。

そしてID.GTIは、そのGTIの名を冠した電気自動車である。

GTIという呼称は、単なるスポーツグレードを示す記号ではない。それは、「クルマの性能や走る楽しさは、一部の特別な人のものではなく、誰もが手にできるべきだ」という思想そのものを体現してきた存在だ。

その精神は、エンジン車の時代から電動化の時代へと移り変わった現在においても、ID.GTIという形で確かに受け継がれてきた。

今年で50周年!現場の情熱が生んだGTIという革命

フォルクスワーゲン初代Golf GTI(1976)

GTIの歴史は、1974年に登場した初代ゴルフにまで遡る。その2年後の1976年、初代GTIが誕生した。

つまりGTIは、2026年で50周年を迎えるモデルということになる。

このモデルの始まりは、自由な発想から生まれたものだった。初代ゴルフのエンジニアたちが、「自分たちが本当に乗りたいスポーティーなゴルフを作りたい」と考え、業務外の活動に近い形で試作車を作り上げたのがきっかけである。

その後、この試作車を経営陣に披露したところ、経営側でも同様に「スポーティーなゴルフがあってもよいのではないか」という構想がすでに検討されていた。

現場の情熱と経営判断が重なったことで、GTIは正式に市販モデルとして世に送り出されることになったのだ。

登場当初、GTIは前例のないコンパクトなスポーツモデルであったため、販売目標はわずか5,000台程度に設定されていた。しかし実際にはその想定を大きく上回り、累計販売台数は46万台を超える大ヒットモデルへと成長する。

この成功の背景には、当時の時代状況が大きく影響していた。フォルクスワーゲンが拠点を構えるドイツの高速道路(アウトバーン)では、追い越し車線を悠然と走れるのはスーパースポーツカーや高級セダンといった限られたクルマに限られ、走行性能による明確な“格差”が存在していた。

そこに登場したのがGTIである。コンパクトな車体でありながら、はるかに高価なクルマと肩を並べて走るその姿は大きな話題となり、評判は瞬く間に世界中へと広がっていった。

この功績を、Volkswagen AG 認定トレーナーの金子 陽一氏は「アウトバーンの追い越し車線を民主化したクルマ」と表現している。

ID. GTI CONCEPTに見るフォルクスワーゲンのブランド哲学

ID. GTI CONCEPT

今回のID. GTI CONCEPTを手がけたのは、GOLF Ⅶが日本の輸入車として初めてカー・オブ・ザ・イヤーを受賞した際、そのデザインを担当したアンドレアス・ミント氏である。ベントレーでのデザイン経験を経て、現在はフォルクスワーゲンのデザインチーフを務める人物だ。

彼のデザインが体現しているのは、フォルクスワーゲンというブランドの根幹にある考え方である。フォルクスワーゲンは「みんなの車」を掲げながらも、単に親しみやすさだけを追求してきたわけではない。そこには常に、どこかに威厳があり、タイヤが大地をしっかりと掴んで走るような安心感が備わっている。

その姿勢こそが、「True Volkswagen(これがフォルクスワーゲンである)」というブランドメッセージの核となっているのだ。

フロント下部に配された「NO STEP」は、海外展示を想定した注意表示

ちなみにフロント下部に記された「NO STEP」という表記は、海外での展示を想定した注意表示だ。

モーターショーやイベントでは来場者との距離が近く、写真撮影などの際に無意識のうちにフロントリップやアンダーパネルへ足をかけてしまうケースが少なくない。とくにコンセプトカーは、軽量化や造形を優先した構造となっており、人が踏むことは想定されていないため、こうした表示が必要となるわけだ。

本国では2026年後半の登場が見込まれているが、日本市場における発売時期や価格などについては、現時点では正式な導入発表はなされていない。今後の続報に注目したいところだ。