雪道でのノーマルタイヤ走行は法令違反となり事故の危険も倍増する

カーシェア専用駐車場の写真
都内では、どこでも借りられるくらい増えているカーシェア。

スマートフォンの操作ひとつで手軽にクルマを借りられるカーシェアリングは、都市部を中心に、生活にすっかり馴染んだ存在となった。年末年始の帰省や週末のスキー旅行など、冬のレジャーシーズンにおいてもその需要は高まる一方だ。

なかでも、カーシェアリングはマイカーを持たない層にとって、タイヤ交換や保管の手間がない非常に合理的な選択と言えるだろう。しかし、カーシェアリングには利用者が陥りやすい重大な落とし穴が存在する。

それが、「カーシェアの車両は、必ずしも冬用タイヤを装着しているわけではない」という点だ。

冬期であっても、すべての車両が自動的にスタッドレスタイヤに切り替わっているとは限らないが、大手カーシェア事業者の運用ルールを確認すると、標準装備はあくまで「ノーマルタイヤ(夏用タイヤ)」であることが一般的である。

スタッドレスタイヤの写真
カーシェアリング車両には基本スタッドレスタイヤは装着されていない。

特に降雪の少ない関東や東海、関西の都市部ステーションなどの車両は、真冬であってもノーマルタイヤのまま運用されているケースが大半を占める。

利用者が予約時に意図的に「スタッドレスタイヤ装着車」というオプションを選択しない限り、雪道を走れないクルマを借りることになるのだ。

では、もしもノーマルタイヤのまま雪道や凍結路面に進入してしまった場合、どのような事態が待ち受けているのだろうか。

JAFの実証テストデータが、その危険性を客観的に示している。圧雪路において時速40kmから急ブレーキをかけた場合、スタッドレスタイヤ装着車の制動距離が17.3mであったのに対し、ノーマルタイヤ装着車は29.9mも滑走した。

実に1.7倍もの距離を止まれずに進んでしまうことになり、交差点への進入や追突は避けられない数値である。

アイスバーンの写真
凍結路面の上をノーマルタイヤで走ったら、次に起こることは想像できるだろう。

さらに危険なのが、アイスバーンでのブレーキ性能だ。同条件でのテストにおいて、スタッドレスタイヤでも78.5mを要する路面で、ノーマルタイヤは105.4mと100m以上も止まることができなかった。

また、坂道発進のテストでは、勾配9%の雪道においてノーマルタイヤ車は空転し、わずか数メートルも進むことができずに立ち往生している。出先で雪が降り出し坂道を登れなくなれば、後続車を巻き込んだ大規模な渋滞の原因となりかねない。

さらに、こうした物理的な危険性にくわえて法的な責任も重くのしかかる。

各都道府県の公安委員会が定める「道路交通法施行細則」では、積雪・凍結道路において滑り止め措置(スタッドレスやチェーン装着)を講じることが義務化されている。

これに違反してノーマルタイヤで雪道を走行することは、「公安委員会遵守事項違反」となり、反則金の対象となる。

「出発地は晴れていたから」という言い訳は通用しない。

事業者によっては、雪道でのノーマルタイヤ走行に起因する事故に対し、保険適用の除外や高額な違約金を請求する場合もある。

予約画面の写真
カーシェアリングでは、このように詳細な機能を検索できる。

では、冬のカーシェアを安全に利用するためにはどうすればよいのだろうか。まずもっとも重要なのは、予約段階での確実なフィルタリングだ。

たとえば、タイムズカーなどの主要サービスでは、車両検索画面で「装備」の項目から「スタッドレス」を選択して絞り込む機能がある。ただし、装着車の台数は限られており、降雪予報の直後はすぐに予約が埋まるため、早めの計画が必要だ。

また、予約完了後も油断は禁物である。乗車前点検において、タイヤ側面の「STUDLESS」表記や、タイヤの溝が夏用とは異なる細かい形状であるかを目視で確認する習慣をつけるべきだ。

もし予約したクルマがノーマルタイヤであり、行き先の天候が悪化する予報であれば、勇気を持って利用を中止するか、目的地を変更する判断が求められる。

便利なサービスであるからこそ、最終的な安全管理はユーザー自身の知識と確認作業に委ねられていることを忘れてはならない。

冬のドライブを楽しい思い出にするか、悔やんでも悔やみきれない事故にするかは、出発前のタイヤ確認にかかっている。

* * *

カーシェアの車両は、標準ではノーマルタイヤであることが多い。 雪道でのノーマルタイヤ走行は制動距離が伸びるだけでなく、法令違反となる。