スタックからの脱出と生存に必要な装備

本格的な冬を迎え、各地で大雪による交通障害のニュースを目にする機会が増えている。冬用タイヤやタイヤチェーンの装着は法令順守の観点からも必須だが、それだけであらゆる状況に対応できるわけではない。
想定外の豪雪や路面状況の悪化により、クルマが雪に埋まり動けなくなる「スタック」は誰にでも起こりうるトラブルである。
もしも人里離れた雪道でスタックした場合、適切な道具を積載していなければ、移動手段を失うだけでなく生命の危険にもさらされる。

まず車載すべき最も重要な道具の一つが、雪かき用のスコップである。タイヤ周辺の除雪はもちろん、もっとも重要な役割は「マフラー周辺の除雪」にある。
JAFの検証テストによると、マフラーが雪で塞がれた状態でエンジンをかけ続けると、短時間で一酸化炭素が車内に充満することが明らかになっている。
一酸化炭素は無色無臭であるため、気づかないうちに中毒症状に陥り、死に至る危険性が極めて高い。
暖房のためにエンジンをかけるのであれば、スコップによる排気管周りの除雪は生命線を確保する作業となる。車に積んでおく場合には折りたたみ式でも十分だろう。

次に用意しておきたいのが、タイヤのグリップ力を回復させるための脱出用グッズである。もっとも原始的かつ効果的なもののひとつが「砂」である。
空転するタイヤと雪の間に砂を撒くことで摩擦力を高め、脱出のきっかけを作ることができる。
緊急時にはクルマのフロアマットをタイヤの下に噛ませる方法もあるが、回転したタイヤでマットが吹き飛ぶ危険があるため、周囲の安全確認が不可欠である。
また、自力での脱出が困難な場合に備え、牽引ロープも必ず車に積載しておきたい装備である。救援に来た他のクルマやロードサービスに引き上げてもらう際、適切な強度のロープがなければ作業を行うことができない。
乗用車用としては、衝撃を吸収しやすい伸縮性のあるロープが推奨される。
さらに、物理的な脱出道具だけでなく、車内で救助を待つための防寒装備も重要である。燃料の節約や一酸化炭素中毒防止のためにエンジンを停止しなければならない状況では、車内の温度は外気温と同等まで急速に低下する。

厚手の毛布や寝袋、使い捨てカイロ、そして車外作業用の防寒手袋と長靴は、冬のクルマのトランクに入れておくべき必需品である。
特に長靴は、深雪の中での除雪作業において、足元の冷えや濡れを防ぐために欠かせない。スニーカーや革靴で雪の中に踏み入れば、すぐに靴内部が濡れてしまい、凍傷のリスクが高まることになる。
また、予期せぬ立ち往生に備え、燃料は常に満タンに近い状態を維持して走行することも冬道の鉄則である。燃料計が半分を切ったら給油する習慣をつけることで、万が一の長時間停車時にも暖房を使用できる時間を稼ぐことができる。
冬の道路には、通常時とは異なるリスクが無数に潜んでいる。装備があるかないかだけで、トラブルに遭遇した際の状況は大きく異なることを認識しておく必要がある。
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冬のドライブでは、チェーンだけでなくスコップや防寒具の準備が生死を分ける鍵となる。特にマフラー周辺の除雪は一酸化炭素中毒を防ぐために不可欠であり、事前の理解が必要である。
最悪の事態を想定した装備を整え、リスクを正しく認識した上で安全運転を心がけたい。
