制動距離は1.7倍に増加!JAFテストが示す雪道の現実

真冬は平野部でも積雪や凍結のリスクがあり、スリップや交通事故などの危険性が高まる。

例年1月〜3月の日本列島は冬の真っ只中にあり、平野部でも積雪や凍結のリスクが高まるとされている。

雪道や凍結した路面では制動距離が伸び、スリップなどによる交通事故が大きく高まるが、とくに「すぐに止まれないこと」は生命に関わるリスクになりかねない。

実際、JAFが実施したユーザーテストのデータは、その危険性を数字として次のように示している。

本テストによれば、40km/hで圧雪路を走行し、急ブレーキをかけた際の制動距離を比較した実験の結果、スタッドレスタイヤを装着したクルマがブレーキを踏んでから停止するまでの距離は、平均で17.3mだった。

一方で、ノーマルタイヤを装着したクルマは、停止するまでに29.9mもの距離を要したのだ。その差は約1.7倍にも達し、距離にして10m以上の差がついている。

雪道についたタイヤ痕の写真
多少の雪道でも坂道だった場合、ノーマルタイヤであれば滑ってしまう。

つまり、交差点や横断歩道の手前でブレーキをかけたとしても、ノーマルタイヤでは停止線を大幅に越え、交差する道路や歩行者の列に突っ込んでしまうことになる。

さらに、状況が悪化して路面が凍結した「氷盤路」となった場合、その差は絶望的なものとなることは言うまでもない。

同条件のテストにおいて、スタッドレスタイヤの制動距離が78.5mであったのに対し、ノーマルタイヤは105.4mを記録している。

これは野球のグラウンドのホームベースから外野フェンスまでの距離に匹敵し、ブレーキをかけてもクルマは100m以上滑り続けることを意味する。

「自分は運転がうまいから大丈夫」「ノーマルタイヤでもゆっくり走れば問題ない」という過信は、物理法則の前では何の意味も持たない。

また、近年普及が進んでいる「オールシーズンタイヤ」についても正しい理解が必要である。オールシーズンタイヤは、その名の通り四季を通じて使用できるタイヤとして人気がある。

しかし、JAFのテストによれば凍結路面での性能には限界があることが判明している。

峠道の写真
この様な場所では運転にさらに集中すべきである。

圧雪路ではスタッドレスタイヤに近い性能を発揮するものの、氷盤路での制動距離はノーマルタイヤとほとんど変わらない結果が出ているのだ。また、都市部であっても橋の上やトンネルの出入り口、日陰などは路面が凍結しやすいポイントである。

そのため、オールシーズンタイヤを装着しているからといって、冬のあらゆる路面に完全に対応できるわけではないことを認識しておく必要がある。なお、こうした物理的な危険性に加え、ノーマルタイヤでの雪道走行は法令違反となる行為である。

各都道府県の公安委員会が定める規則により、積雪や凍結がある道路ですべり止めの措置(冬用タイヤの装着やチェーンの使用)を講じずに運転することは禁止されている。

これに違反した場合、反則金として普通車であれば6000円が科されることとなる。

脱着場の写真
スタッドレスタイヤにさらにチェーンをつけなければいけない区間が存在する。

また、2018年からは特定の区間で「チェーン規制」が強化されており、大雪時にはスタッドレスタイヤを装着していても、タイヤチェーンを巻いていなければ通行できないケースもある。

国土交通省は、立ち往生による大規模な交通渋滞を防ぐため、早めの冬用タイヤへの交換とチェーンの携行を強く呼びかけている。

雪道での事故は、自分自身の損害だけでなく、他人の命や社会全体の交通網に多大な影響を及ぼす可能性がある。クルマという重量物が、摩擦係数の低い氷の上を移動しているという事実を忘れてはならない。

「まだ降っていないから」「交換が面倒だから」という理由は、事故が起きた後では何の言い訳にもならないのである。

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タイヤはクルマと路面が接する唯一の部品であり、その接地面はハガキ1枚分ほどの面積しかない。そのわずかな面積で数トンの車体を支え、走らせ、そして止める役割を担っている。

冬の道を安全に走行するためには、その季節に適した専用の靴を履かせることが、ドライバーに課せられた最低限の責任であるといえるだろう。