ヤマハ発動機は、電動アシスト自転車(e-Bike)のパイオニアとして、そのフラッグシップシリーズである「YPJ」の誕生10周年を記念する新型モデル「CROSSCORE RV(クロスコア アールブイ)」が発表された。
YPJシリーズ10年の歩みと「CROSSCORE RV」誕生の背景

1993年に世界で初めて電動アシスト自転車を世に送り出したヤマハにとって、YPJシリーズは単なる移動手段を超えた「乗って楽しむツール」としての地位を築いてきた。2015年の「YPJ-R」から始まり、本格MTBの「MT Pro」やグラベルロードの「WABASH RT」など、10年間で多様なラインナップを展開している。
「今回の新モデル開発にあたり、ヤマハは既存ユーザーの「マインド」を深く分析した」とヤマハ発動機SPV事業部の佐藤正規氏は語る。その結果、ユーザーはe-Bikeに対して「新しい経験」や「移動時間そのものの楽しさ」を強く求めていることが判明したようだ。
また佐藤正規氏は、「ファンミーティングやサイクルモードでの声も大切にしてきました。 「MT Pro」や「WABASH」などのオフロード向けモデルでも街中で乗るシーンが非常に多い点や、街中での乗りやすさを求めてスタンドを後付けしているという声、そして惜しまれつつも生産終了となった「YPJ-XC」の後継モデルを期待する声を多数いただきました」
特に、以下の3つの市場ニーズが今回の「CROSSCORE RV」誕生の決定打とまったようだ。
- 「SUV的」な汎用性:本格的なオフロード性能を持ちつつ、街中でも違和感なく乗れるモデルへの期待。
- 実用性の両立:オフロード車であっても、街中での駐輪に不可欠なサイドスタンドなどの実用装備を求める声。
- 「YPJ-XC」の継承:惜しまれつつ生産終了となった名機「YPJ-XC」の軽快さと走破性を引き継ぐ後継機の待望。
これらを統合し、「365 days, 1 bike. Bring it to my life.」というコンセプトのもと、オンロードとオフロードの境界をなくす1台が完成した。
本格オフロードパーツと最新ユニットの融合

「CROSSCORE RV」の最大の特徴は、街乗りモデルの気軽さと、本格MTBのスペックが極めて高い次元で融合している点にある。
心臓部には、軽量かつコンパクトながらパワフルなドライブユニット「PWseries S2」を採用。このユニットは、単にアシスト力が強いだけでなく、小型化によって車体設計に自由度をもたらす。特にオフロード走行時に重要となる「最低地上高」の確保に貢献し、急勾配や障害物のある路面でもストレスのない走行が可能だ。
妥協のないコンポーネント
走行性能を支えるパーツ群には、ユーザーも納得の本格仕様だ。
- 12速ドライブトレイン: シマノ製の最新12速システムを採用。リアスプロケットは10-51Tという超ワイドレシオで、壁のような急坂から高速巡航まで幅広く対応。
- MAGURA(マグラ)製ブレーキ: ヤマハのハイエンドモデル「MT Pro」譲りの高い制動力を誇るドイツ・マグラ製のブレーキを搭載し、どんな天候や路面状況でも安定したコントロールが可能だ。
- ドロッパーシートポスト: 走行中に手元のレバーでサドルの高さを瞬時に調整可能。信号待ちでの足つき性向上や、下り坂での安定したフォーム形成に寄与する。
「サーフェス・アンド・ストラクチャー」
ヤマハ発動機プロダクトデザイン部の寳田直己氏は、「自転車らしいフレーム躯体と電動システムを限界まで絞り込み、無駄のないシームレスで引き締まった印象を実現しました。
アルミフレームでありながら、モノコック構造のような一体感のあるスタイリングが生まれています。」と語る。本モデルのデザインにはヤマハのモーターサイクル開発で培われたDNAが色濃く反映されています。
ツインチューブ構造の衝撃

その他の特徴として寳田氏は、「一見するとスタイリッシュな1本のダウンチューブですが、その内部は左右2本の「ツインチューブ構造」重量と剛性バランスを最適化しました。モーターサイクルフレームがエンジンや補機類を抱えるように、このツインチューブがバッテリーを挟んでいます。この隠れた構造部材こそが、CROSSCORE RVがオフロード走行に耐えうる強度を持つ所以です」。
この構造により、高い剛性と軽量化を両立。アルミフレームでありながら、カーボンモノコックのようなシームレスで引き締まった意匠を実現しており、オフロードの激しい衝撃にも耐えうる強靭な骨格となっている。
「クロベージュ」によるレトロモダンの表現
YPJシリーズのカラー展開は、横軸を「リラックス〜シリアス」、縦軸を「アウトドア〜都会」とするマトリックスで構成。e-Bikeならではのスポーティーかつ先進的なカラーリングを中心に十字方向へ拡張してきた経緯である。
近年のライフスタイル多様化を背景に、CROSSCORE RCは左下象限のファッショナブル領域へ展開拡大。さらに新登場のCROSSCORE RVは、ハイスペックe-MTBでありながらそれを感じさせない佇まいを志向。日常用途を基軸に、自然へも踏み出せる新領域の提示である。
従来の非日常を強調するスポーティー路線に加え、日常に調和するカラーラインナップを左上象限へ構築する狙いだ。
カラーリングにおいては、これまでの「スポーツギア」としての尖った印象から一転、ファッション性との親和性を重視しています。
CMFコンセプトとは
「CROSSCORE RV」CMFコンセプトは「気軽な冒険」である。
先進的な車体構成と、愛好趣味性を感じさせるカラーリングとのギャップコンビネーションによるレトロモダン表現だ。
- フレームカラー:服装を選ばないベーシックなブラック。
- グラフィック:真鍮を想起させるカラーを採用。遊び心あるRVロゴをモチーフに、トップチューブおよびシートチューブへさりげない特別感の演出。
- コンポーネントパーツ:サドル、グリップ、タイヤウォールをベージュで統一。軽快かつ柔らかな印象の付与である。有彩色部品の開発はYPJシリーズとして新たな挑戦である。
ブラックとベージュを基調とした「クロベージュ」コーディネート。フォーマルからアウトドアまで幅広いスタイルに調和する汎用性の高い提案だ。
この配色は、スーツ姿での通勤ルートにある河川敷を駆け抜けるシーンや、週末に偶然見つけた林道に飛び込むシーンなど、ユーザーの「日常の冒険」をより鮮やかに彩る。
e-Bike「CROSSCORE RV」に試乗

実際に「CROSSCORE RV」に試乗して感じたことは、街乗りにも楽、それでいてフィールドを攻めたくなる高揚感をもたらす、絶妙なポジションとアシストモードの味付けによるバランスの良さだ。試乗したコースは草地、土手の上り下り、舗装路と、日常からレジャーへの移行を味わえる路面で、それぞれの特性に合わせたギアとアシストモードの選択が楽しく何度も周回を重ねてしまったほど。
また、草地で砂利、小石が多いエリアでは、Sサイズのフレームモデルのコントロールが抜群に良く、タイヤが空転してもまったく不安なく走破できた点も特筆しておくべきだろう。

ヤマハ「CROSSCORE RV」は、10周年という節目にふさわしい、ブランドの過去と未来を繋ぐ1台となるだろう。単に道を選ばないという機能性だけでなく、乗る人のライフスタイルそのものを拡張するポテンシャルを秘めていいる。
「365日、この1台があればいい」。そう思わせる汎用性と、ヤマハらしい技術へのこだわりが詰まったこのモデルは、日本のe-Bike市場における新たなスタンダードとなる。



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