オクタン価という機械的要件と誤給油が招く致命的なトラブル

「ハイオク指定」のクルマにレギュラーガソリンを入れても、すぐに走れなくなるわけではないと思う人は多いかもしれない。しかし、両者の決定的な違いは燃料の品質ではなく、「オクタン価」と呼ばれる耐ノッキング性能にある。
ハイオクは高い圧縮比や過給圧に耐え、異常燃焼を防ぐ設計がなされているが、ここにオクタン価の低いレギュラーを投入すれば、エンジン設計によっては本来の性能が発揮できない。
たとえば、トヨタ公式のFAQ資料によれば、ハイオク指定車にレギュラーを使用すると「エンジンの最高出力が低下する」と明記されている。

現代のエンジンには「ノックセンサー」が搭載されており、レギュラーガソリンによる異常燃焼(ノッキング)を検知すると、点火時期を遅らせるリタード制御をおこなう。
この補正によってエンジン破壊こそ免れるものの、燃費は悪化し、アクセルを踏み込んだ際のレスポンスも著しく低下する。
さらに深刻なのは、軽油を燃料とするディーゼル車にガソリンを混入させてしまう「誤給油」である。JAFによるユーザーテストの結果では、軽油にガソリンが混ざることで、燃料ポンプやインジェクターが潤滑不良を起こして焼き付く様子が報告されている。
ガソリンには軽油のような潤滑性が備わっていないため、精密な燃料噴射装置が物理的に損壊し、最終的には走行不能におちいる。
さらに、輸入車などの一部の「ハイオク専用車」においては、レギュラーの使用が深刻なノッキングを引き起こし、ピストンやバルブを溶損させるリスクすら存在する。

欧州の標準的な燃料規格は日本のハイオクに近いオクタン価で設定されているため、日本国内でレギュラーを使い続けることは、設計上の差を削る行為にほかならない。
ほかにも、油種ごとにノズルの色が分けられているのは、こうした機械的損壊を未然に防ぐためである。つまり、指定燃料はユーザーの嗜好で選ぶものではなく、エンジンの熱効率や耐久性を維持するための機械的な要件として決まっている。
レギュラーガソリンの使用で浮いたコスト以上に、修理費用や性能低下による損失が大きくなる可能性は否定できない。
自分の愛車がどの燃料を指定しているのかを正しく把握し、設計者が意図したパフォーマンスを引き出すことこそが、クルマを長持ちさせる秘訣である。

指定燃料の入れ替えは、単なるパワーダウンだけでなく、エンジンの寿命を削るリスクを伴う。本来の走りを維持するためには、メーカーが指定した油種を厳守することが大前提である。
