哀しき怪物とパンクな花嫁が権力に中指を立てる

『ハムネット』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジェシー・バックリーと、言わずと知れた名優クリスチャン・ベールが共演する映画『ザ・ブライド!』。俳優として豊富なキャリアを持つマギー・ギレンホール監督が手がける、激しくも悲しいラブ・サスペンスです。
映画ファンにとっては“古典ホラーの有名人”である、孤独な怪物《フランケンシュタイン》と、彼の手により墓場からよみがえった《ブライド》。自由を奪われた二人は、腐った世界への怒りをぶちまけながら逃避行へと飛び出します。1930年代シカゴを舞台に不条理な社会に叫びをあげる二人の姿は、虐げられてきた人々の心に小さな火を灯し、やがて社会全体を揺るがすことに……。愛と破壊の限りを尽くす逃避行の果てに、二人を待ち受ける運命とは?
舞台となるのが世界恐慌の真っ只中、ギャングも暗躍していた1930年代のカオスなアメリカですから、きらびやかな反面、無法な空気が充満している本作。当然ながら、街中も住宅地もクラシックカーだらけ。そのなかでも印象的に登場するのが、フランクとブライドが乗る1938年キャデラックのシリーズ60と、あるトラブルから乗り換えることになる1936年プリムス・デラックスです。

手段を選ばない“反逆”の姿勢によって、やがて世間の熱狂を集めていくフランクとブライド。抑圧された民衆のカリスマとなった二人はまるで「ボニーとクライド」のようであり、その逃避行にはやはりクラシックカーがよく似合います。そんな彼らを追うピーター・サースガードとペネロペ・クルス演じる刑事たちが乗るのも、おそらく1936~38年あたりのオールズモビル・L36です。
ブライドの凶行を報じる新聞の紙面には、音楽好きならばニヤリとさせられるはず。「Girl Rrrriot」という大見出しの下に並ぶ、ある有名バンドと“まったく同じ”2つの小見出しなど、マギー・ギレンホール監督による「抵抗」への目配せが感じられます。
さらに興味深いのが、どの車両もわざわざ観音開きのセダンを用意し、それを印象づけるようなショットまで押さえているところ。英語では“スーサイド・ドア”と呼ばれますが、まるでフランクとブライドの行く末を示しているかのようで……と、その衝撃的な結末はぜひ本編で確認しましょう。
公式サイト:『ザ・ブライド!』