夏場に車内温度が急激に上昇する原因「温室効果」のメカニズム

車内が猛烈に熱くなる主な原因は温室効果だ。太陽光に含まれる可視光線はガラスを通過して車内に入り込み、シートやダッシュボードなどの内装材に吸収される。これらの表面は熱を赤外線として放出するが、この赤外線はガラスを通過できずに車内に閉じ込められる。外気温と比べて車内の温度が大幅に上昇するのはこれが原因だ。
特に注意すべきは、車内温度の上昇速度が非常に速いという点だ。米国海洋大気庁(NOAA)は、外気温が27〜32度(80-90°F)程度の場合、密閉された車内温度はなんと、20分で43〜48度(109-118°F)程度まで上昇するというデータを公表している。そのため、外気温が高い日には、短時間の駐車であっても適切な対策を講じる必要がある。
中でも、車内の温度が上昇する原因となる太陽光そのもの侵入を防ぐサンシェードやウィンドウフィルムは、温度上昇の抑制に効果的な対策だ。特に、紫外線や赤外線のカット機能を持つフィルムは、可視光を通しながらも熱の侵入を防げるため効果的と言える。
すぐに実践可能な即効性のある車の暑さ対策

炎天下から戻った後の車内は、まさに移動式サウナと化している。そんな状況を未然に防ぐためには、駐車時の工夫も重要だ。当然だが、可能な限り日陰や屋内駐車場を選ぶことで、太陽熱の影響を最小限に抑えられる。
やむを得ず日向に駐車する場合には、車の向きを太陽の動きに合わせてこまめに調整するのも有効な方法だ。午後の駐車では、フロントウィンドウを西向きにした駐車を避けることで、強い夕日の影響を軽減できる。
意外だが、乗車前の車に水をかけるだけでも効果がある。この方法は科学的にも理にかなっており、ペットボトルに入るようなわずかな水でも、窓ガラスやルーフにかけることで、水の気化熱を利用して車体の熱を効率的に逃がすことができるのだ。
2リットルのペットボトルを車に常備しておくだけで、近くに水道がないような場合でも実践できる手軽さがある。ただし、極端に熱くなったボディに冷水をかけると、急激な温度変化でボディにダメージを与える可能性があるため注意が必要だ。
乗車前の換気も効果的だ。ドアを開けて30秒ほど待つだけで、滞留した熱気の多くを逃がすことができる。特に対角線上のドアやウィンドウを開けると、空気の流れが生まれ、効率よく換気可能だ。
エアコンを外気導入モードで風量を最大に設定し、少しの間窓を開けた状態で走行するのも効率的な換気方法として挙げられる。熱くなった車内の空気が入れ替わってから、内気循環モードを利用すると、エアコンの効率をさらに高められる。
車内の暑さ対策は、快適性から命を守るために必須な知識に

このような車内の暑さ対策は単なる快適性の問題にとどまらない。総務省消防庁のデータによると、日本の熱中症による救急搬送者数は5月〜9月の期間で2022年に約7万人、2023年には約9万人と増加傾向にあり、社会問題としての深刻さが増している。特に密閉空間の車内は、外気温より20度以上高くなることもあり、熱中症のリスクが極めて高い環境と言える。
日本自動車連盟(JAF)の調査によると、夏場の車内温度は駐車開始からわずか30分で50度を超えることがあり、この温度は人体の許容限界をはるかに超えている。このような環境では、子どもやペット、高齢者だけでなく、健康な成人でも短時間で熱中症になるリスクがある。
温暖化が進む現代において、車内の環境管理はもはや快適性に限った話ではなく、命を守るための重要な行動なのだ。